パンツも良いけれど、スパッツの食い込みも夢があって良いと思っているよっ

 

「アレスティア、私も行くわ!」

「いや、ヘンリエッテは待っていて」


「嫌よっ、みんなの助けになりたいんだもん!」


 いや、何日掛かるか解らないから駄目だよ。王女を抱えてキモい魔物から逃げるだなんてミズキが可哀想だ。

 よってミズキの連れて行ってやれという視線は無視だね。


「ただいまと言える人がここに居てくれたら、頑張れる気がするんだ」

「アレスティア…」


「それに、ヘンリエッテは美少女グランプリに出る準備もあるじゃないか」

「うん…でも、ミズキが居ないと行けない…」


「それまでには帰るし、遅れても私が帝都に連れていくから安心して」

「…一緒に来てくれるの?」


「それはヘンリエッテ次第だね。来て欲しいのなら、良い子で待っていられるかい?」

「はいっ!」


 よしよし、王女の頭を撫でると嬉しそうにはにかんで…ペットみたいだな。よーしよし良い子だ良い子だー。


「おー凄い…頑固な姫を言いくるめた」

「凄いですね、流石は天使アレスティア様」


 こらミズキとブリッタさん、拍手するでない。

 よーしよーし。


「じゃあミズキさん行きましょうか」

「うん、準備は終わってるの?」


「ええ、後はゲートを回収して…っと」


 さぁ行くかー。

 王女は見送るというので、みんなで迷宮の前まで来た。

 相変わらずカビ臭いなぁ。


「待っているから…気を付けてね」

「あぁ行ってくるよ…ヘンリエッテ、おまじないをくれないか?」


「えっ、おまじない…えと…それって…」


 もじもじして動かないので、これは時間が掛かりそう……仕方ない。

 王女のアゴをクイッと上げて軽く唇を奪ってやった。


「ぁぅ…」


 ばいばーい。

 反応がウブい王女に手を振って迷宮への道を進んだ。


「…レティ、ほんとにチューするとは思わなかったよ」

「あぁ…最近気付いたんですよねぇ」


「…何を?」

「性格が合わないのなら、調教すれば良いって」


「あぁ…まぁ…そうだけどさ…良いの?」

「もちろん良いですよ。ヘンリエッテは可愛いじゃないですか。性格は合わないですが」


「いつも喧嘩してるもんね。愚問だけどさ…どうやって調教するの?」

「くくっ、解っている癖に…それにヘンリエッテには頑張って欲しいんですよ」


 これから美少女グランプリ連覇を達成してくれたら、王女はこの大陸で一番の美少女…諸外国から大量の婚約申込みに疲弊する国王と宰相が目に浮かぶよ。もっと疲弊しやがれ!


「…何を企んでいるのさ」

「次期皇帝さんへの嫌がらせですね」


「あぁ…レティを敵に回したんだっけ」

「完全に敵という訳では無いですがね」


 王女が大陸一の美少女になってくれたら、王女と結婚出来る国…もしくは家の支持率が跳ね上がる。でもこの前…第二皇子はヘンリエッテとアース国王の目の前でアレスティア王女を求めてしまった。だからとても失礼な事をした帝国にヘンリエッテと婚約出来る者は居ない。


 そして私…アレスティア元王女はヘルトルーデ皇女をお嫁に貰う。

 つまり帝国は天使聖女ヘルちゃん大陸一の美少女ヘンリエッテという民衆の支持率爆上がり美少女達を逃すのだ!


 逃した美少女達は女神幼女の元へ行き、幼女の信仰が爆上がりしたら幼女の力が増す。その結果幼女の光の加護がパワーアップして私も強くなる!

 完璧な計画だっ!

 ぬっはっはー!


「悪い顔してるねー」

「私は表と裏の顔を持っていますからね。っと着きました」


 前回来た時と同じ噴水の間に到着した。

 ここからはミズキの案内で早く進めるルートを辿る。

 ミズキが先頭で私が後ろ。


「最初は真ん中のルートだね」

「前回と同じですね」


「うん、最初のボスを倒すまでは一緒。後は奥へ行ける滑り道があるんだ」

「滑り道? お尻で滑るあれですか?」


「うん、あれ。革の敷物を敷かないと摩擦で尻が焼けるんだよね」


 へぇー。ミズキのプリっとした尻を眺めると…今日もTバックか。


「迷宮の時はTバックなんですか?」

「うん、どうせ食い込むから最初から食い込ませてるの」


「勇者らしい発言ですね。因みに私は三分丈のスパッツです」

「えっ…スパッツあるの!?」


「ありますよ。私のお友達が作ってくれました」


 ミーレイブランドのスポーツ用パンツ。伸びる素材で裏地もしっかりしているから重宝している。

 ミズキが欲しそうにしているからミーレイちゃんに頼んでおこう。


 おっ、ミズキが光の矢を放ってブドウみたいな目玉の魔物を仕留めた。きしょい。

 私も手伝うか。


「ライト」


 ライトを先に飛ばして、魔物を見付けたらソルレーザーを使おう。おっ、曲がったら居る。ソルレーザー。


「…それ便利だね」

「複製して良いですよ。ライトを基点に魔法を放つだけですから」


「普通はライトを基点に魔法は放てないよ。複製」


 よし、これでミズキもライトを飛ばして遠隔の魔法を撃てるから攻略が楽だ。


 ――カサカサカサカサカサ…


「虫感満載の音がしますね」

「ひぃっ、ゴキの音がするぅっ!」


 あっ、見る前にミズキがソルレーザーで薙ぎ払ってしまった。

 虫はなぁ、うねうねしていなければ大丈夫かなぁ…


「ゴキってギガムカデゴキ虫の事ですか?」

「おぞましい名前だね。どんな奴?」


「黒光りした身体に脚が百本で大きさが十メートルを超えます。鳴き声はケタケタケタケタ…」

「…絶対見たくないね」


「よく見ると可愛いですよ。虫以外は何が嫌いですか?」

「キモいのはほぼ駄目だね」


「じゃあこの迷宮は大変ですねっとソルレーザー」

『ぎゃぁぁあああ!』


 下半身がドロドロのおっさんを吹き飛ばして、以前来たボス部屋に到着した。

 扉を開けると何も居ない…以前倒したからかな?


「倒したらしばらく出ないよ。大体一ヶ月くらいかな」

「じゃあ楽ですね。どんどん行きましょう」


 部屋の奥にある鉄扉を通って通路を進むと噴水部屋に出た。

 また左右と正面に扉がある。

 次は左の扉を進んだ。


「……行き止まりですね。おっ、なんか視える」

「ここの壁にあるスイッチを押したら、床が斜めになって滑り道になるんだ」


「へぇー、じゃあ滑る時はミズキさんが私を後ろから抱き締めて下さい」

「離れないと危ないよ」


「多少のケガよりもミズキさんに抱き締められながらアトラクションを楽しみたいんですよ」

「いや、これ罠だし…まぁお互い回復魔法があるから良いか」


 よしよし、そうと決まれば革の敷物を用意して…ポチっとな。


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