落ち着くまで頑張らないと

 

 ソルブレイド(仮)が突き刺さって、激しい光が駆け巡った。

 そして光が晴れると私とアテアちゃん以外誰も居なくなった。ヘルちゃん済まぬ…後で恨み言は聞こう。


≪勝者、序列二十位アラス≫


「勝ちましたねー」

「そうじゃな、大義であった」


「お礼は大人モードのアテアお姉さまにいい子いい子してもらうのを希望します」

「まぁ、思い出したから良いぞえ。回復したらの」


 やったー。

 ご褒美ご褒美!

 アテアちゃんがポンッと変身解除。

 幼女に戻った。

 抱っこして勝利を分かち合おう。


「で、どうなるんです?」

「少し待ったら元居た場所に帰還じゃな。時間は数秒くらいしか経っておらんから安心しての」


「シンプルですね。勝った報酬とかはあります?」

「あぁ、神格と目録…後はハズラに何かお願いが出来るぞえ」


「へぇー、何をお願いするんです?」

「勝ったらいつも世界の技術やら魔法じゃよ。何か欲しいものはあるかえ?」


「うーん…特に無いです」

「じゃあ適当に言っておくでの」


 よろしくー。

 私は私で深魔貴族の貯金やルゼルから何か貰えるから、こっちで何か欲しいものは無いな。

 魔法も自分で開発すれば良いし…黒い翼が成長すれば魔装の代わりになりそうだから…

 あっ、転移しそう。


 フッと視界が変わると、幼女の部屋に到着していた。

 ベッドにはヘルちゃんがムスッとしながら座っている。


「…おかえりなさい」

「ただいま。ごめんね巻き込んで」


「身体が光に呑み込まれて…怖かった…」

「よしよし、慰めるね」


「勝った?」

「うん、勝ったよ」


 ヘルちゃんをギューしながら幼女を見ると、お腹を抑えて切ない顔をしている。あっ、ご飯食べさせるんだったね。


「アレスティアー…もう動けないのじゃ」

「燃費悪いですね。ちょっと注文します」


 テーブルのご飯と書かれたボタンをポチっと押すと、テーブルに設置された魔法陣から牛丼と豚丼と焼鳥丼が出現…全部肉かよ…ほんとこれどうなっているんだろう。

 ヘルちゃんにチューしてから、幼女を抱っこして焼肉丼を食べさせる。


「はい、アテアちゃんあーん」


 幼女はダランと力を抜いてもっきゅもっきゅご飯を食べている…幸せそうだな。


「しばらく序列戦は無いの?」

「そうだねー。だから私は裏世界で修行がメインかなー」


「じゃあ幼女の世話は私がやるわ」

「よろしくー。後は、アース城の迷宮を攻略するから一週間くらい休みが取れたら教えてね」


「ええ、解ったわ。あっ、そうそう…第一皇女がもう一度会いたいって言っていたわ」


 ふーん。

 会いたいと言われても、私は帝都から居ない設定だからね。一応天使の私の方が立場が上だから、わざわざ私が城に行く選択肢は無い。


「目的は?」

「この前の謝罪の名目だけれど、何をするかは解らないわよ。別に無視で良いし」


「あれ? ヘルちゃんって魔眼の力で心を読めるんじゃなかったの?」

「アスティ限定に決まっているじゃない。他の人の心なんて興味無いわ」


「じゃあ仕方ないね。恐らくヘルちゃんの剣技大会での発言が元だけれど…気が向いたらね」


 恐らく第一皇女はビビってんな。

 私がアレスティア王女だと解ったんだろう。


「お兄様達も直ぐに帝都へ向かうかもね」

「帝都に来ても私には会えないよ。もう放っておいて欲しいんだよね」


 下手を打つと私が悪い事を考えた場合、民衆の支持は低下する。

 それにヘルちゃんが聖女だと広まるのも時間の問題…

 その前にアレスティア王女が天使になったと広まるか…


「放っておけないわよ。こんなに可愛い天使様なんだもの」

「ヘルちゃんも可愛い聖女様だねー」


「わっちも可愛いぞえ」

「はい、子供の身体は卑怯ですよね」

「多少性格が悪くても子供なら許されるわよね」


「……泣くぞ」


 あの皇子達の箝口令は口約束だから。

 まぁ、広まるだろう…

 別に第一皇女が皇帝になっても私の生活に支障は無いからどっちでも良いんだけれど…


「まぁ、私も婚約宣言出来たから姉が皇帝とかどっちでも良いんだけれど…」

「民衆を味方に付ければ法律なんて変えられるもんね。ヘルちゃんの目標が達成される目前って訳か」


「まぁ、今の皇帝が退位したらね。その後は暇になるわ」


 私も落ち着いたら暇になるからなぁ。

 修行に明け暮れるのも良いんだけれど、楽しい日常生活を沢山過ごしたい。

 って事でクーちゃんと約束していたから、ちょっと行ってきます。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 クーちゃんは私の部屋のフーさんベッドでゴロゴロしていた。


「クーちゃん、お待たせ」

「レティ、早かったです」


「結構長かったけれど、こっちの経過時間は数秒らしいよ」

「勝ったです?」


「うん、勝ったよ。頑張ったから褒めてー」

「レティ良い子良い子です」


 撫で撫でしてもらった。

 ……クーちゃんの唇に油が付いてテカテカしている…さてはゴロゴロしながら肉食べていたな。


 舐め取ってやろう。

 ぺろり。

 高級お肉の味だ。


「……レティ」

 ……あっ、押し倒されちゃった。


 ……

 ……

 ……


 えーっと、この後はヘルちゃんに添い寝して…ライラと添い寝して…リアちゃんの相手をして…うーむ、私の身体が一つだから足りないなぁ。

 傀儡人形を使うと怒られるし…

 横着な事をすると罠に掛かるし…


 とりあえずクローゼットの中で覗いているフーさんからどう逃げるかだな。

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