いつも足を引っ張られている仕返しだー

 

 幼女…いや、大人幼女…いや、アテアちゃんは顔が見えなくても、仕草が美人なお姉さんだ。

 いやー、見たいなぁ。

 思い出したって言っていたから、終わったら色々言いくるめて大人になってもらうか。


『アラステア、君はあの魔法の反動で力を使えない筈だ』

「くくっ、武神装アヴァロンの力を使えば反動なぞ無意味じゃ。難しいから発動まで時間が掛かるがの」


『……羨ましい…それ幾らした?』

「秘密じゃ、神武器師に聞けい。アレスティア、武器貸してくれの」


「えっ、もう一つ神武器持っているじゃないですか」

「あれ燃費悪いんじゃよ」


 まぁ、流石に性格は変わらないか。

 神武器…折れないソードにするか? でも…あっ、良いのがあったよ。


「はい、どうぞ」

「……これなんぞ?」


「マグロです」

「いや、マグロは解るがの……恥ずかしいから嫌じゃ」


 えー、使ってよー。

 アテアちゃんが使わなかったら誰が使うのさ。

 私も恥ずかしいんだからさぁ。


 おっ、受け取ってブンブン振っている。

 えっ、それ三百キロ以上あるよ…


「……使いやすいのが悔しいの」

「アテアちゃんって怪力ですね。あっ、雑談している間にあっちは準備万端ですよ」


「……やっぱり恥ずかしいから、わっちの武器を使うかえ」


 えー、使ってくれないの?

 返されちゃった…ちぇっ。

 アテアちゃんが白い棒…柄のような物を取り出した。

 ギュンッと棒が伸びる。

 槍?


「じゃあ、やるかの…神槌・星砕き」


 棒の先っぽが肥大。

 うおー…真っ白いハンマーになった!

 あれハンマーだったのか…見た目が重戦士だよ…全然女神っぽくないよ。あれじゃ脳筋女神だよ。


 ここはまずいか…ちょっと観戦しよう。

 ヘルちゃんは…あっ、蒼禍と一緒にすっごい遠くに居る。

 私も行きたいけれど、魔力が少ないから行くまでに巻き込まれて死ぬな。

 仕方ないから少し離れるくらいにしよう。


『速攻で片付ける! 神炎雷光!』


 ハズラドーナの頭上に白い球体が出現。

 球体から白い雷が発生してアテアちゃんへと向かう。


「ふんっ、弱いの」

 ハンマーを振ると雷が弾け飛んだ。

 すげー。

 力で吹っ飛ばした。


『くっ、記録と違う…いくら武神装でもこんなに強くない筈だ…』

「確かに、以前のわっちとは違うの」


『原因は…あの子か』

「解るかえ。シャイニングロード」


 アテアちゃんから光の道が出来上がった。

 …あっ、それ私の技っ!

 アテアちゃんが光の道に触れると、姿が消え…

『ぐはっ!』

 ハズラドーナが吹っ飛んだ。


 あー! 光速剣パクったー!

 ぶーぶー!

 ハズラドーナがポンポン飛んでいく。


「…これ、動かなくて良いから楽じゃの。光の槍」


 空中にいるハズラドーナにアテアちゃんが手を向けると、シャイニングロードから無数の槍が出現。

 次々と射出されて衝突していく。

 めっちゃ眩しい。アレンジしやがって。

 これで決まるか?


『あぁ、くそ、魔神装・光の巨神』


 なんだ?

 ハズラドーナの魔力が増大した。

 えっ、どんどん大きくなっていく。

 十、二十、三十、四十、五十メートルくらい…

 でかっ。

 姿が変わった。

 鎧は無くなり、顔も身体も朧気な白い巨人の姿。


「これは、身体を光に変質させたか」


『負けたく、ないからね。これで光属性は効かない』

「確かにわっちの攻撃は光。じゃが、愚策やの」


『そうかもね』


 光属性無効だったらアテアちゃんの攻撃は効かない。

 光特化だから他の属性は弱い筈だし、どうするんだ?


 ハンマーを当てるとスカッと空振り。

 光属性は無効か。


『起源の奔流』

 うおっ!

 凄い力…飛ばされるっ。

 アテアちゃんも飛ばされている。

 シャイニングロードも掻き消されてこれ近付けない。


「はぁ、流石じゃの。アレスティアー」


 ……ん? アテアちゃんが素早く動いてこっちに来た。

 全身鎧でハンマーを担いでいるから普通に怖い。


「どうしました?」

「これに裏属性を付与してくれの」


「あっ、そういう事ですね。アビスセイヴァー」


 星砕きが真っ黒く染まる。

 これで私の魔力が完全に無くなるまでは深淵のハンマーって事か。


「ほいっ」

 ハンマーを振り回すと力の奔流が割れていく。

 相変わらず力任せ…

 ブンブン振り回しながらハズラドーナの元へ到達した。


『それは予測済みだよ。禁術・浄化なる世界』

 神聖な空気が周囲に展開された。

 ハンマーが当たる寸前でアビスセイヴァーが消える。

 またスカッと空振り…

 これは環境魔法か。

 ここまで来ている…

 ライト…おっ、いつもより光が強い。

 面白いなー。よしよし。


「裏魔法・反転」

 とりあえず回復しよっと。

 はぁ…気持ち良い。


「ふむぅ、これじゃ攻撃が当たらんの」

『ふふっ、魔力が切れた方の負けだね』


「アレスティアが回復したら勝機はあるぞえ」

『そうかもね。でもこの環境じゃ致命傷を与えられない』


「それはどうかの」


 なんかもう一度戦う流れだな。

 お顔を見せてくれたらやる気になるのになぁ…

 よし、浄化の力が強力だから回復が早い。

 これなら戦える。

 行くかー!


「アテアちゃん、ちょっと呪われて下さい」

「良いぞえ」


「守って下さいね」

「もちろんじゃ」


 やるか…緊張する。

 緊張感は無いけれど緊張する。

 呪いの力を最大限に…うわっ、これ辛い。

 気を抜くと精神に大ダメージだ…


『これは…禁術・神罰の雷!』

「させると思うかの!」


 真っ白い雷が落ちてきたけれど、アテアちゃんがハンマーで弾く。頼もしい。

 あと半分…

 くっ、全身鎧だから少しくらいチラリズムが欲しい…やる気がっ…


「アテアちゃん! やる気が全く出ません!」

「出せい!」


「アテアちゃんのお肌が見えないから辛いです!」

「今幼女に戻ったら守れんぞえ!」


「太ももだけでも!」

「仕方ないの!」


 やったぜ!

 アテアちゃんの太もも部分がカシャコンと開き、綺麗な太ももがお目見え!

 ニーハイだぁ!

 あぁ、スリスリしたぁい…


「元気出てきましたぁ!」


 もうすぐ完成!


『ほんと楽しそうだね、神罰の地震!』

「アレスティア飛ぶのじゃ!」


「えっ、無理っ!」


 あばばばばばば!

 揺れる揺れる!

 縦揺れ横揺れ気持ち悪い!

 膝カックンされまくり!

 助けてー!


 きゃー!

 旧式便所に座っている体勢だから恥ずかしい!

 飛んでいたアテアちゃんが私に手を伸ばす。

 助けてー。


「ほれっ、捕まるのじゃ!」

「はぁー女神さまーさわさわーすべすべー」


「阿呆っ太ももを触るでない!」


 いつも足を引っ張られる私の気持ちを理解しやがれ!

 仕返しだー!

 さわさわー。


「あっ、完成しました。裏環境魔法・呪われた世界!」


 目からどす黒いビームが放たれ、天井に衝突。

 天井からボタボタと呪いが降り注ぐ。

 アテアちゃんには可哀想だからアビスセイヴァーを付与したお気に入りの傘を差し出した。

 これで呪いは防御出来る…呪いは。


『なんだ、力が…』


「これ…なんじゃ?」

「能力低下に弱点強制付与ですよ。今回は光属性を低下させたので、これに触れるとアテアちゃんでも光属性が弱点になります」


「それ、悪用したら簡単に神を殺せるの」

「ですね。因みにもう私達の勝ちです。ソルレーザー」


 もうライトは周囲に展開済み。

 因みに能力低下は私に影響しない。

 って事でソルレーザーで六芒星の魔法陣を描く。


『ははっ、凄いね』


 褒めろ褒めろ。

 私が命懸けで編み出した極大魔法だ。


「おー、凄いのうー」


 天井からすり抜けるように出てきた巨大な剣の切っ先。

 おーらいおーらい。

 すとっぷー。


 よしっ、ここまで来れば止められまい!


「終わりですよ! ソルブレイド(仮)!」

「(仮)ってダサいの」


 はっはっはー!

 例のごとく全体攻撃だから当然ヘルちゃんと蒼禍も攻撃範囲内!


『はぁ…こりゃ完全に負けだね』


 ぬははははー! 全員道連れだー!


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