今までで一番神っぽい

 

「作戦は?」

「本気出すじゃ」


「無いんですね」

「ボッチが作戦なんて考えられるかの?」


「悲しくなるんでやめましょう。勝率だけ教えて下さい」

「さっきのアレスティアくらいなら五割じゃな」


「あっ、割りとイケそうですね」


 一先ず朱天の剣で戦おう。

 深淵攻撃で隙を作れば良さそうだし…

 基本の攻めは幼女に任せるか。


『それじゃあ、準備させてね。魔装・元素の神鎧』


 あれは…赤、青、黄、緑のエネルギーがハズラドーナを包み込み、赤い兜に、黄色の胴、青い籠手、緑の足具を纏った姿に変身した。白いローブはマントに変わっている…内包する力は段違いだ。


 でも……色、統一した方が…いや、これはハズラではお洒落なのかもしれない。世界によってセンスは様々だし…


「……なんじゃ…あのダサい鎧…」

「アテアちゃん、それは言わない方が良いですよ」


「なぜじゃ?」

「世界によってセンスは様々ですから…」


「まぁ……それもそうじゃな」


 幼女は首を傾げながらも納得した様子。


 後ろを振り向くと…

 ヘルちゃんが眉間にシワを寄せて撮影中…

「なによあれ、ダサッ」

 言っちゃ駄目だよ。


 隣の蒼禍は無表情でハズラドーナを見詰めている…

「えっ、前よりダサい…」

 バージョンアップしたのね。

 いや、でも強いよ。


「じゃあ…わっちもやるかの」


 幼女が白い玉を取り出した。

 あれは前に見せて貰った神武器…

 白い玉が光り、幼女を白い光が包む。


「武神装・アヴァロンじゃ!」

 光が収まり、得意気な声色が鎧の中で反響している。

 真っ白い全身鎧だから表情が全くわからない。

 それに幼女の力が跳ね上がった…凄い。

 ハズラドーナよりも強いんじゃないか?

 ただ…サイズが幼女だからお遊戯会みたいで可愛い過ぎる。


「アテアちゃん、可愛いですね。武神装って武装の上ですか?」

「そうじゃな! 格好良くなれるんじゃ!」


『はぁ…武装なら出回っているのに武神装は何処を探しても無いんだよな…羨ましいよ』

「ぬはははは! わっちの神徳の成せる技じゃよ!」


 幼女が自慢しながら両手を上に向け、魔力を解放。

 真上に巨大な白い光の魔法陣が展開された。

 …何する気?


「…ちょっと、私を巻き込まないで下さいよ」

「アレスティアは光を吸収出来るじゃろ?」


「えっ、それだと無差別攻撃じゃないですか。ヘルちゃんを守りに行きます」

「大丈夫じゃよ」


 魔法陣から光の柱が無数に飛び出し、背後に次々と突き刺さる。

 ヘルちゃん達と分断された…丸眼鏡さんはハズラドーナの後ろだから巻き込まれて死ぬだろうな。

 …幼女の表情が解らないから先の展開が読みにくい…でもやりそうな事は解る。

 ハズラドーナはまだ余裕な表情…先手は譲るってか。


「はぁ…リフレクト・ミラーフォース」

 大きな鏡で防御した瞬間…幼女の魔法が完成した。


「ぬはははは! 神級魔法・天上天下唯我独尊!」

 うわ…神級って…

 幼女の身体が少し浮き、背中に光の翼と光の環が出てきた。

 神々しい…今までで一番神っぽい。

 これは…強化魔法の一種か?


「それ何の効果ですか?」

「一定時間わっちが可愛いくなって無敵じゃ。それに消費魔力無しで儀式型魔法が連発出来るんじゃよ。そーれ」


 全身鎧だから可愛いくなったと言われても解らないよ。

 でも雰囲気が自惚れ系になったのは解る…副作用か?


 おぉ…上空に隙間無く白い魔法陣が敷き詰められた。

 あれは…一つ一つが砲台。

 全方位攻撃をする気か…

 うん…これ出番ねぇな。


『くくっ、流石だねぇ。戦闘力だけなら序列二位に匹敵すると云われるのは本当みたいだ』

「降参するなら今の内じゃよ!」


 ハズラドーナはこの規模を見ても動じない。

 魔法陣を展開した…赤、青、黄、緑、白。

 魔法陣が重なり、一つの魔法陣に変化した。

 何をする気だ?


『ふっ、まさか。その無敵モードの効果が切れたらへっぽこになるのは解っているんだ。それまで、待てば良い。神元魔法・神鉄の極み』

 鎧の色がメタリックな灰色に変化した。

 あれで防御するのか?


「そんなやわな装甲貫いてやるのじゃ! 神級魔法・傲慢なる聖戦!」

 上空の魔法陣が白く輝き、隙間無く光の柱が落ちる。

 視界が白一色。

 深淵の瞳で凝らして見ると、ハズラドーナは耐えている…丸眼鏡さんはポシュンと消滅した…さよならー。


 私の鏡魔法はギシギシ軋んで…耐えきれるのか?

 …なんか床が溶けてきたぞ。

 えっ、これ大丈夫?


「追撃! 千苦の光!」

 今度は針のような光が豪雨のように落ちてくる。

 あっ、割れる。

「リフレクト・ミラーフォース。エナジーマジック」


「もういっちょ! プリチー…あれ?」

 ポンッと幼女の翼が消えた。

 えっ、どうしたの?

 プリチー何? 気になるじゃん!


「大丈夫ですか?」

「……お腹空いたの」


「燃費わるっ!」


 まじかよ…ポテッと横になってしまった。

 あっ、今日連戦しているからか。

 いや、それでも頑張れよ。

「アレスティアー…生クリーム…」

 私が居るから甘えてんな…多分一人だったらちゃんとしている。


「…兜取って下さいよ」

 口元がカシャコンっと開いた。

 とりあえず生クリームチューブを突っ込もう。

 よし、チューチューし始めた。


 …私は何をやっているんだと思ってしまうけれど、幼女と一緒に居る以上想定外に対処しないと。


 あっ、光の攻撃が終わってしまったな。

 光が晴れるとハズラドーナは灰色の鎧をボロボロにしながらも耐えていた。


『はぁ、はぁ、ちょっと…聞いていたよりも強いじゃないか。あと十秒長かったら死んでいたよ…超回復』

「……それは残念でした。では、駄女神様が起きるまでお相手願います」


『いやぁ、正直君と戦う方が怖いかな。裏魔法は苦手でね』

「それは光栄ですね。深淵の瞳…大解放」


 黒い霞が翼になった。

 なんか、前よりも大きくなっている?


『それは…裏世界のお姫様みたいだね』

「……ふふっ、確かにそうかもしれませんね」


 ルゼルが裏世界の女王だとしたら、私は姫か…

 なんか昔からそうだったみたいにしっくり来る。


 それなら、黒い霞を王冠の形にして頭に乗せてみよう。

 よし、イケているな。

 ここは幼女に習って自慢しよう!


『……やはり、人間とは遠い存在みたいだね。君は何者なんだい?』

「私は人間ですよ。ただ、他の方とは肩書きが違いましてね」


『へぇ…教えてくれるのかい?』

「良いですよ、私は…序列九十八位、深魔貴族アレスティアと申します」


『人の身で深魔貴族……ここ千年で一番驚いたよ』


 深魔貴族というパワーワードを言ってしまえばこれ以上探られる事も無いはず…キリエの魔法は鏡くらいにしておかないと。

 私の情報が出回ると楽しみが減るからね。


「…呪解・完」


 さて、自慢したところで私の力が何処まで通用するか…


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