相変わらず私は紙装甲だな…

 

 あの黒点鬼って奴の力が解らないと迂闊には攻められないか。

 星空を形成し、いつでも射てるように準備完了!


『この魔法は…まさか…黒点鬼、長期戦は不利だ!』


 星体観測を知っている? 邪神キリエを知っているという事か…聞いてみたいけれど、長話をする余裕は無いかな。


 うぉっ!

 黒点鬼が走って来た!

 卑怯ブレイドを横凪ぎに振るうと黒点鬼が大ジャンプ!


「空は私の領域! 白の流星群!」


 空中に居る黒点鬼に集中攻撃!

 流星をクロスガードで防御したけれど、空中だからそのまま地面に衝突。

 更に追撃!

 地面にめり込ませて立つ暇なんて与えない!


『くっ、魔縛の呪言!』

 おっ? 流星がピタリとその場で止まった。

 でも大量の星を止められなかったのか直ぐに動き出す。

 いけー。


 あっ、黒いレーザーが上に射出。

 星を粉砕していく…勿体ないから撃ち方やめー。


 黒いレーザーがある以上、星乗りは危険か。

 黒点鬼が私が作ったクレーターから出てきて、ググッと脚を曲げて沈み込む。


「あっ、やばっ! エナジー…――がはっ!」

 黒点鬼が走ったと思った瞬間…私の腹にゴツい拳が突き刺さっていた。

 こりゃ不味い!

 死ぬ死ぬ!


「ごふっ…強化ソルレーザー!」

 私ごと光の柱で貫く!

 怯んだ隙に拳を外して退避! グレーターヒール!


 危ねぇ…次の攻撃は頭を狙っていたぞ。

 黒点鬼はタフだなぁ…超級のソルレーザーでもダメージが薄い…


「エナジースピード。危なかったー」

『惜しかったですね…本当に。仕方ない…黒点鬼、来い!』


 なんだ?

 黒点鬼がジュマの元へ戻った。

 …やっぱり星乗りで空中に移動しよう。

 大技だと自爆するし…


『呪解・完…』

『グォォオオオオ!』


 おー…頭が生えた。

 鬼…というより鬼のお面を被った頭。

 ちょっとこれは強い奴だなぁ…


「でも、やれない事は無い! 半月!」


 光と闇の星々を集結。

 白と黒の月を形成し、魔力を込めていく。

 魔力量はまだまだ余裕…ジュマを巻き込む大きさでいこう。

 エナジーマジックでもっと大きく、もっと強く…


『やはりあれは…壊せ!』

『…ウルサイ……ワカッテイル』


 黒点鬼の四本の腕が頭の前に集まり、黒い力を溜めている。

 ジュマは精神を集中するように黒い短剣を掲げて動かない。

 にしても凄いエネルギーだな…黒い球体からバチバチと黒い雷が走り、今にも爆発しそう。

 それでも、負けてやらない!


「真っ向勝負! 断罪の月!」

 白と黒の混ざり合わない大質量の月を、黒点鬼とジュマ諸とも潰す勢いでブッ放す!


『シュテン…タイホウ…』

 黒点鬼も溜めていたエネルギーを解き放つ。

 全てのレーザーが合わさり巨大な黒い光の柱へと変貌。


 断罪の月と黒いエネルギーが衝突した。

 これは…互角か。

 月の落ちる速度が止まった。


「やりますね! エナジーマジック!」

 星属性の強化!

 よしっ、押している!


『黒点鬼! 力を解放しろ!』

『ウルサイナ……フウイン…カイジョ』

 …なんだ? 黒点鬼のお面が割れて…

 黒光りしたツルツルの顔が出てきた。

 顔に大きな縦の切れ目が出来て、クパッと顔一杯の目玉が現れた…きょわい。


『……ノロワレタセカイ』

 目玉から黒い光が照射され、辺りを照らした。

 この光……力が抜けていく…まさか!

 うわ……やっぱり…強化魔法が掻き消された…

 やばっ…押し負ける…


 月が徐々に上昇…

 くっ…ヒビが出来始めた…

 ちょっと…これは…相性が悪いかも…


『ぐぅ…黒点鬼…早くしろ! 消費が激しい!』

『……』


 ジュマは辛そう…それだけ黒点鬼を操るのは難しいのか…

 ヒビが多くなってきた…

 月の勢いは完全に殺されて上昇を続けている…

 エナジーマジックが無いとこんなに弱いのか…悔しいな…


 遂に黒いエネルギーが月を貫通した。

 月が砕け散り、パラパラと破片が飛び散っている。

 黒いレーザーは半分程の太さだけれどまだ存在していて…

 まじか! 私に標準を合わせてきた!


「リフレクト・ミラーフォース!」

 正面で受けちゃ駄目だ!

 斜めに向けて…ぐぅ! きつっ…


「おりゃ! はぁ、はぁ…」

 なんとか後方に弾いた…

 魔力はあるけれど、集中し過ぎて体力が無くなってきたぞ。

 黒点鬼も疲れが見える?

 …追撃せずに私を見ている…大きな瞳で見詰められると、なんか不安になるな。


『はぁ…はぁ…黒点鬼…とどめだ!』

『……モウ…ダマレ…』


 あん? 黒点鬼がジュマの方に顔を向けると、ジュマが苦しそうに首を抑えている…ん? 仲間割れか?

 よしっ、今の内に魔力を溜めよう。


『がっ…はっ…何故…反抗出来る…』

『ズット…キカイヲウカガッテイタ…』

 黒点鬼がジャンプしてジュマの後ろに立った…何を…


『わたしを…殺したら…お前も死ぬぞ』

『ワカッテイル…モトヨリシンダカラダ…』


 四本の腕が上を向き、握り拳を作って…

『ぐぁぁ!』

 振り下ろした…あっ、ジュマが潰れちゃった…

 ジュマの魔力が沈黙し、黒点鬼の力が上がっていく…


 あっ、これ勝てるか不安になってきた…


『……呪縛が解けたか』

 流暢に喋り出したな…呪縛?


「……良いんですか? 殺しちゃって…」

『あぁ…元々儂は表世界で殺され、ジュマの一族に改造された存在だ…奴が死ねば儂も死ぬがな。まだ時間はある…』


「……何故、今殺したんですか?」


 今じゃなくても良かったと思うけれど…ここが死に場所になってしまう。

 私に見届けろと言うのか…


『お主が、破滅の子だからな…死ぬには丁度良い』

「破滅の子って…なんですか?」


『この覇道を進めば…その内行き着く』

「覇道…」


 このまま勝ち進めば…何かが解る?

 いや、それよりも…


『ジュマは死に、お主の勝ちは確定している。だが…少しだけ、老いぼれの相手をしては貰えぬか?』

「…ははっ、もちろん…喜んでお受けします」


『そうか、破滅の子よ…儂を超えてみろ』

「なんだろう…凄く、格好良いですね。黒点鬼さん」


『くくっ、儂の名前は朱禍しゅか。天異界同盟、序列六位…ハズラ所属…元だがな』

「朱禍さん…貴方に出会えた事を、とても嬉しく思います。天異界同盟、序列二十位アテア所属…アレスティアです」


 命が尽きようとする朱禍は…堂々と私を見据え、大きな目を歪ませて笑う。

 くそっ、格好良いな。


『感謝しよう…アレスティア。朱点強化術』

「もっと違う形で、出会いたかったです。卑怯ブレイド」


 逃げればいずれ朱禍は死に…私は深魔貴族になれる。

 まぁ、今更逃げるなんて選択肢は無いけれどね。


 正直エナジー系が使えない時点で勝てる可能性は低いけれど、また笑って貰えるように、全力で応えなきゃ!


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