感動の再会って大事だからね
星乗りで様子を見ながら街へと向かう。
「ねぇアスティ、災害級が街に来た時って騎士団はどう対応するの?」
「先に到着した騎士が注意を引いて、その隙に安全確保。ある程度の安全を確保したら大規模戦闘。最善は討伐、難しいなら追い払うか撤退」
「バラスさんが街に来た場合は?」
「撤退を推奨だね。でもバラスは無駄な殺生をしないから、降伏すれば大丈夫…ってあの街の人は知らないか」
やみくもに突撃はよろしくない。という訳で街の様子を確認。
街の中心から外側に向かって逃げ惑う人々。
バラスは剣を持つ男に対峙している。
男の背後には、四角い箱…いや檻かな。
檻の中には……ん? 鎖で繋がれた女の子が三人?
「ねぇ…バラスさんの娘って、もしかしてあれ?」
「バラスの反応を見る限り、そうだね。あっ、あの檻…対魔物用で、後あの鎖…力を奪う魔導具? 魔法でも雁字搦めだ」
うーん…バラス視点から言うと、娘が囚われているから助けて当然。
人間視点から言うと、魔物を捕獲した。つまり女の子は戦利品。
私視点から言うと…あっ、戦闘開始しちゃったな。
「アスティ…止めないの?」
「いきなりお父さんの見せ場を奪うとか、可哀想じゃない? 娘のピンチに駆け付けるお父さん…娘達の評価は爆上がりだよ!」
「確かに…感動の再会って大事ね」
「という訳で、勝負が着きそうになったら聖女と天使が現れるっていうアレで!」
「まぁ…うん…物語の読みすぎよ…それに聖女と天使って言ったら駄目。謎の美少女よ」
「ノリノリだねぇー。でも謎の美少女ってちょっとダサいかも」
いや睨まないで…
「……」
ヘルちゃん……好き。
「くっ…こんなところで不意討ちなんて……ばか」
可愛いのう!
* * * * * *
時は少し戻り、バラスが襲撃する前。
この街では、白獅子を捕獲したというニュースで持ち切りだった。
「おぉ…これがランクSの白獅子」
「こいつらが成長すればランクSSの白銀獅子になるんだ。捕まえるの苦労したぜ」
「流石は闘技大会優勝者だ!」
「あぁ、俺は最強なんだ」
大人達に囲まれ、街の広場で自慢気な表情を浮かべる少年が大きな檻をポンポンと叩く。
檻の中には三匹の魔物…黒い鎖で繋がれた白い毛並みの美しい獅子の姿があった。
『グルル…ニン…ゲン』
『ユル…サナイ』
『…オナカ…スイタ』
白獅子、ランクS。
成長すればランクSSの白銀獅子になると云われる美しい魔物。素材は余す所無く使え、剥製としても人気が高い。権力者が欲しがるのはもちろん、白獅子を討伐出来れば高い名声を得られる憧れの魔物だ。
それを捕獲したというのは、この少年の強さが伺える。
「ヒロト、結局誰に売るのよ」
「出来るだけ高く売っておきたいよなぁ…帝都に行けば買ってくれるよな? でも生きてんだし言葉も喋る…勿体無いよなぁ…テイムがあれば良いんだが、持ってる奴にまだ会ってないし…」
「もう、ヒロトっていつも無計画よね」
「ふふっ、無計画でもこなしてしまう…そこが良いのよねー」
「なんだよ、恥ずかしいだろ?」
周りを囲む少女達が、ヒロトと呼んだ黒髪の少年と嬉しそうに会話を始めて、和気あいあいとした雰囲気になった時…
「あら? この子達どうしたのかしら?」
白獅子の様子が変わる。
今まで人間に憎しみを込めて唸っていたが、唸りを止め山の方を見ていた。
『グル?』
『キタ…?』
『…オトサン?』
白獅子達の雰囲気が柔らかいものに変わる。
それを疑問に思ったヒロトが、白獅子の見ている方向を見た。
「なんだ? 山に何かあんのか? おい、教えろ」
檻に向かって話し掛けるが、白獅子はヒロトの言葉を無視。
そして、山が変化。
白く染まっていった。
「えっ? 凍った? 雪?」
「あ…何…この魔力……」
一同が驚く中、白獅子にも変化が訪れる。
ポンポンッと白獅子を光が包み、姿が変わった。
「お父さんだ!」
「ぱぱー!」
「おとさん!」
「「「……は?」」」
檻の中には、三人の少女の姿。
白い髪に青い瞳。毛皮のような服を着て、頭にはピョコンとケモ耳が立っていた。
白獅子が人化するなど聞いた事が無かった人々は、茫然をその様子を眺め…
『ガアァァァァア!』
山からやって来た脅威に、再び驚く事となる。
「う…わ…ヒロト…まずいわ…」
「あぁ…震えが止まらねぇ…」
人間達の前に降り立った、白銀に光る獅子。
「うわぁぁあ! 逃げろー!」
圧倒的な魔力の前に、人々は逃げ惑った。
『娘達を解放してもらおう。人間共よ』
「へへっ…断ると言ったら?」
『愚問だな』
「ヒロト! 逃げよう! 白銀獅子だよ!」
「お前達は逃げろ。俺は、こいつと戦う!」
「何言って…もう!」
「私達は足手まといだよ! ヒロトなら絶対大丈夫だから離れるよ!」
少女達も退避し、バラスとヒロト…そして檻に入った少女達が広場に残された。
『別れの挨拶は済んだか』
「へへっ…俺が勝つに決まってる。それじゃあ俺の力を見せてやるぜ!」
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