グレてもどうせ、ぐうたらするだけでしょ
そろそろ帰らないとなぁ…
ルゼルと手を繋いで部屋を出ると、目の前の中庭に広がる庭園。ルゼルが紅茶を飲んでいた場所だ。
「お花好きなんですか?」
「あぁ、我には無い色を出すからな。可愛い存在だ」
「私もお花が好きなんです。一緒ですね!」
「ふふっ、今度秘密の花畑に案内しよう」
やったー。裏世界と聞いて、白と黒だけの寂しい世界かと思ったけれど…そんな事は無い。
緑が溢れ、物も充実している。
「ところで、ルゼルさんって裏世界ではどんなお仕事をしているんですか?」
「仕事は…主に戦闘関係」
戦闘関係…依頼でマジヤバになった世界を助けたり、マジヤバな存在を討伐するらしい…ルゼルはめちゃんこ強いから、多方面から依頼とかありそう。
「仕事以外は何をされているんですか?」
「旅行に行ったり、勉強をしたり、趣味をしているかな」
「へぇー…旅行はお一人で?」
「…悪いか?」
旅行は様々な次元世界へ行くらしい。
「いえ、旅行に行くなら付いて行こうと思いまして」
「一段落したらな」
「やった。勉強はどんな勉強を?」
「愛について勉強している」
「愛……ってどんな勉強です?」
「恋愛映画を観て、恋愛ドラマを観て、恋愛漫画を読んで恋愛小説を読む」
それめっちゃ女子。
昔…自分を犠牲にしてまで愛する者を守ろうとした人間を見て、興味を持ったという…
自分を犠牲に…アレスティア王女の捏造演劇みたいだな。あっ、まだ第二期観てないや。
「私も愛の勉強に参加しますね。あの、ちょっと戻っても良いですか? ペット…間違えた、駄女神アテアちゃんにルゼルさんの元で頑張ると伝えたくて」
「あぁ、良いぞ」
「はい、いってきます!」
「……いってらっしゃい」
ルゼルが頭に手を置いて、私をアテアちゃん世界に送る。恥ずかしそうに…行ってらっしゃいなんて言われたら、寂しくて泣きたくなる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
……意識が落ちて、浮上した感覚。もっとスムーズに往き来出来ないもんかね。
目を開けると、アテアちゃんが私の脇で寝ている…寝た時から動いていない。という事はそんなに時間が経っていないのかな。
辺りを見渡し、時計を発見……ん? 二日も経っている。
ルゼルと過ごした時間は…数時間くらいだと思ったけれど…時間の流れが違うのか。
「アテアちゃん、起きて下さい」
「すやすや」
「いや、すやすやって起きているでしょ。起きて下さい」
「ふむぅ…むぅ? アレスティア…お主、強くなったの」
「本当ですか! やったぁ! 私、裏世界で修行を始めたんですよ!」
「そうかえ…じゃあ…わっちは捨てられるんじゃな…ぐすん…」
脇の下で頭をグリグリされるとくすぐったいよ。しかも嘘泣きだし…
「いや…一応面倒は見ますよ」
「でもわっちの加護はいらんのじゃろ! グレてやるのじゃ!」
「星属性を強化すれば良いって言いましたよね? 加護を貰っても良いくらいまで星属性を強化しますので、その後に欲しいです」
「……本当に欲しいのかえ? でもでも他にお色気な光の女神が出てきたらそっちに鞍替えするんじゃろ!」
「しませんって。アテアちゃんの事、好きですから」
「そっ、そんな事言ってもこの先解らぬじゃろ!」
もしかして…妬いていらっしゃる?
腋の下に居たアテアちゃんを顔の方に持ってくると、ぷくーっと頬を膨らませてプンプンしていた。
「大丈夫ですよ」
「嘘じゃ嘘じゃ!」
もう…可愛いな。
「…私、自分の名前…好きなんです」
「……むぅ」
「アテアちゃんが居たからアレスティアという名前になれたんですよ。だから、アテアちゃんを見捨てるわけ無いじゃないですか」
「ふぐぅ…アレスティアー」
よしよし。
中々起きない私を心配したのかな。
うるうるして…泣きそうになっている…
「アテアちゃん、寂しかったんですか?」
「ふぬぅ…アレスティアが幸せそうに寝ておったから…の。それに……」
「…それに?」
「あの…名前、好きだと言ってくれての…嬉しいのじゃ」
「ふふっ、名前が似ているから姉妹みたいですよね」
「わっちが考えたから、気に入ってくれたのかずっと不安での…」
「…えっ?」
ん? んー? アテアちゃんが考えた? 私の名前を?
「アレスティア…礼を言うのじゃ」
「はい…どういたしまして。あの、私の名前をアテアちゃんが考えたって…初めて知ったのですが…」
「ん? そうなのかえ? ……まぁ、そんな事もあっただけじゃ」
「……教えて下さい」
「「……」」
露骨に目を逸らされると、ね。
ポツポツと窓から聞こえる雨音が、私の気持ちを表しているようで…
珍しく立ち上がろうとするアテアちゃんをホールド…逃がす気は無いよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます