私の出生秘話
今、アテアちゃんを左腕で腕枕しながら右腕で抱き締め、右脚でも抱き締めて拘束中。
「……今日は、良い天気じゃの。歩きたくなってきたのじゃ」
「雨の中歩きたいんですか?」
「おっ、お腹が空いてきたのじゃ」
「机にお皿が十枚ありますよ。食べたばかりですよね?」
嘘が下手くそ過ぎて可愛いけれど、ここで甘やかしたら言ってくれない。心を鬼にして、パジャマの中に手を入れてお尻をさわさわすると、観念したのか逃げ出す事をやめた。
「ふぐぅ…ぬぅ…実はの…その内解る事なんじゃが…アレスティアが産まれた時にわっちが立ち合ったじゃろ? その時に名付けたのじゃ!」
「……どうして立ち合ったんですか?」
名付けの件はわかった。その場に居た一番偉い者が名付けをするから…
でも女神が出産に立ち合ったなら、私も知っていないとおかしい。むしろ国民全員が知っていて当然…でもムルムーでさえ知らない。
「えっ、それも知らぬのかえ?」
「知りませんよ。親とまともに会話した回数なんて片手で数えられますし」
「親? あぁ…うん…ちょっと…聞いて良いかの?」
「えぇ、私の質問にも答えて下さいね」
女神が立ち合う場合、天使候補や聖女など世界に関わる役目を担う場合が多いけれど…私の場合、殺されるまで普通に過ごしたし…アテアちゃんに会うまで自分で決めた道を進んできた。
「親ってあの国の王と王妃で良いかの?」
「はい、私これでもフーツー王国の王女だったんですよ」
「それは聞いた事あるの。産まれた時の事は?」
「知りません。その場に誰が居たんですか?」
「ベッドで偉そうに横になっていた女と、メイドらしき者が五人だけじゃな」
「…なるほど」
アテアちゃんが来た事は、王妃だけが知っている事か。
恐らくというか、確実にメイド達は殺されているだろうし…
じゃあ何故王妃は女神が名付けた子供を愛さなかったのか……
答えは簡単というか、一つ心当たりがある。
「私は、何から産まれたんですか? 別に親を愛していないのでハッキリ言って構いません」
「うーむ…妊娠しなくても子供が出来る手段があっての」
「生命の宝珠…ですか?」
「知っておるのか」
「はい、リアちゃんから大地の王が持っていると聞いていたので」
「そうじゃな。でも迷宮にもあるからの。百年に一度は人の手に渡る」
百年に一度。それなら国が持っていてもおかしくない…か。
なんだろう…府に落ちたというか、長年の疑問が解決したような、凄いスッキリしている。
「そうですか。どうして私が愛されなかったのか、解りました」
「…気に病むでないぞ。わっちがおる」
「ありがとうございます。あの…生命の宝珠はどうやって使うんですか?」
「…二人の血が必要なのじゃ。二人なら男と男でも、女と女でも宝珠の効果は発揮しよる」
「効果が発揮されたら、どのくらいで産まれますか?」
「一ヶ月安置しておけば誕生するのじゃ」
そうか…人から産まれる訳ではなくて、安置しておけば勝手に誕生する。ほうほう。じゃあ、私は王妃から産まれた訳じゃあ無い…
私の遺体捜索隊が本格的だった理由も解る…私の遺体は不都合が多いから。
それに、誰の血で産まれたのか気になる所だけれど、その場に居た者の中には居ないらしい。つまり王妃と血が繋がっていないのだ!
誰の血か…王の血は使われていそうだけれど、これは王妃に聞くしかない。
遭遇出来たらゼロタイムで視よう。
「ふふっ、くふふっ、そうですか。楽しみが増えましたねぇ」
「…何を企んでおるのじゃ?」
「私が嫌われていた理由…それは、折角生命の宝珠を使ったのに、私が出来損ないだったからだと思います。魔法の素質が無く…突出した力も無い。悪足掻きをするように剣を持った出来損ない……それが今や天使ですよ! 凄くないですか?」
「普通、落ち込む場面じゃないかの…」
「落ち込む? 逆ですね。楽しみで楽しみで…あぁ…早く会いたいですねぇ…」
「まぁ…わっちはアレスティアが元気ならそれで良いがの。…面白そうだから手伝おうかえ?」
「はい! 是非!」
駄女神アラステアと駄天使アレスティアが手を組んでしまうのか…いやー、調子に乗ったら国が潰れるかもなぁ…
でも先ずは妹に接触しようかな……いや…私は死んで、妹とは血の繋がりが無い。
もう妹では無い…コーデリア姫に接触しよう、だね。
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