駄女神様、私の邪魔をしないで下さいね

 

 帰って私の部屋に到着。

 ゴロゴロしていたアテアちゃんを捕まえて、邪霊樹を見せた。


「お主…よく邪霊樹を持ち帰れたの。そんな小さくして…悪い子じゃの」

「若い樹だったので、裏世界と繋がる前に小さく出来ましたよ。この樹って何の意味があるんですか?」


「世界の歪みを魔物に変えてくれる魔導植物じゃよ。これが無いと裏世界から邪気が漏れて大変なんじゃ」


 へぇー。世界にとって大事な物だという思わぬ事実。

 伐採されたらまた違う場所にアテアちゃんが植えに行く…バラスが言っていた事は半分本当という訳か…ややこしい。ちゃんと伝えておきなよ…どうせ説明が面倒だから適当に教えたんだろう…


「じゃあこれはお借りしますね」

「じゃあの意味は解らぬが、別に良いぞえ。でも安全とは言い切れぬから、使う時はわっちの部屋で使うのじゃ」


 私の部屋の向かいがアテアちゃんの部屋…ちゃっかり部屋を貰っている。因みに今度家をこの付近に持ってくるらしい…移動式なのか。


 ちょっと待て…私が邪霊樹を使っている間、アテアちゃんが部屋に結界を張って安全を図る…だと。


「アテアちゃんが働くなんて…何が目的なんですか?」

「アレスティアの為なら頑張るぞい。というかアレスティアが居ないとわっちは何も出来ぬのじゃ」


「出来ぬじゃなくて、したくない…ですよね」

「そうとも言うの。わっちだけだと働かされるのじゃ。嫌なのじゃ。アレスティアが寝ている間、わっちもゴロゴロすれば効率良いじゃろ?」


 つまり、私が三日寝たらアテアちゃんは三日間ゴロゴロする…ご飯だけ食べて。

 そうなると、私は小まめに起きなければいけないのか…お風呂に入れたり、日の当たる場所に連れて行ったり、歩かせたり……ペットかよ。

 私の長生き計画を邪魔する女神……ちょっとこれは考えなければならない。


 今も抱っこしながら頭を撫でている…脱力して目すら開いていない……可愛い。


「アテアちゃんから可愛いを取ったら、ただの堕落したナニかですよね」

「…褒めるでない。照れるのぉ」


「そのプラス思考も流石ですね。という訳で挨拶してきます」


 私の部屋の向かい…『アラステア』と書かれた部屋に入る。この名前に誰も突っ込まないのが凄いというか、パンパンの中ではリアちゃんが頂点という暗黙のルールがあるから。

 部屋は普通……ベッドに置かれたリモコンに、まじっくはんど。机にご飯の転送魔導具。壁には映像魔導具。洗濯魔導具にシャワー室…もうここから出なくて良い仕様。

 ……リアちゃん…甘やかし過ぎだよ…


 枕元に邪霊樹を置いて、横になる。

 アテアちゃんは秒で寝た。


 …おやすみなさーい。



 * * * * * *



 アース城では…


「お父様! 白雲とミズキの因縁を教えて下さい!」

「…悪いが、教える事は出来ない」


「どうしてですか! 私にも知る権利はあります!」

 早速王女が国王に詰め寄っていた。

 王女は好奇心と使命感を持って聞かなければならないと思っているが、国王は白雲がアレスティアだと解っているので因縁なんて教える訳にはいかない。

 国の汚点を見せる事にもなるし、何より…王女が国を嫌う可能性もある。

「駄目だ」

 王女が懇願しても、頑なに教えて貰えなかった。


「…そう、ですか…」

 下唇を噛み俯く姿に、国王は国の後ろ暗い部分を見せて来なかった事を少し後悔したが、今更かと頭を振った。


 そして、その様子を見た宰相がため息混じりに進言した。


「王よ、王女殿下は知る権利はあると思います。帝国との縁談は見送りましょう……白雲殿らとの友好を結ぶ方が、遥かに利益があります」

「ゴーエン…はぁ…分かった。…ヘンリエッテよ」


「…はい」

「愚かな父の…戯言を聞いてくれ」



 * * * * * *



 えーっと…夢の中というか、現実味のある感覚…無事来れたのかな。

 ここは何処だろう…お城の庭園かな? 綺麗なお花畑が目の前にあって、紅茶を飲んでいる光景。


「ん? この感覚…アスティか?」

 はい、ルゼルさんこんにちは。


「ふふっ、元気そうだな。それで? 返事を聞かせてくれるのだろう?」

 それなのですが…ご相談がありまして…


「相談? 言ってみろ」

 あの…私、光か闇のどちらかに安定させないと、数年で死ぬらしいんですよ。でもどちらかに安定させると、片方の属性が打ち止めになります…強さに限界が来る気がして…本当は両方欲しいのですが、どうしたら良いのかなって…


「なるほど…光と闇を何で繋いでいる?」

 星属性です。でも星属性の強化は間に合わないと言われました。


「…強化は出来る」

 本当ですか?


「あぁ、我を誰だと思っている。とりあえず…喋りずらいから、身体を作るか…アスティ、自分の身体を思い出してくれ」

 はーい。

 身体、身体、おっぱいの大きい身体。


「人形作成…っと。出来た。今意識を入れるから待っててくれ。入魂連動」

 ……

 ……入ったー。

「あー、あー、凄い…これが本当に人形なんですか?」


 まんま私だよ。凄い…鏡を貸して貰って見たら、完全に私…完全再現アレスティアちゃん人形…いやー凄い。


「五感も全て完璧な筈だ。私が作ったんだからな」

「本当に凄いですね。何処かの駄女神様とは大違いです。えっ、じゃあエッチとかも出来るんですか?」


「出来る…のか? 試した事は無いな……」


 あっ、まずい……この視線はフーさんと同じだ。

 だ、駄目だよ。人形でも駄目だよ。駄目なんだからね!

 まだ返事をしていないのに、私にご褒美をあげちゃ駄目だよ!

 即断即決でルゼルの弟子になってしまうじゃないか!


 ……

 ……

 ……

 ……まぁ、こうして…裏世界での修業が始まる訳ですよ。


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