どうも、新人です

 

 エーリンと別れ、城に入る準備をする。

 騒ぎは起こしたくないから…

 先ず、地味眼鏡を装着。これでほぼ空気の地味女子に早変わり。

 新たに貰った封印の指輪を二つ装着。これで一般人以下の魔力だからミズキに気付かれない。

 あと服装が白一色という目立つ格好なので、目立たない格好…メイド服に着替えようと思う。


 城は正門、横門、裏門があるので、裏門へ向かう。

 巡回の衛兵さんは深淵の瞳を使って、目が合ってもスルーしてくれる。

 時折思うけれど、深淵の瞳があれば城を落とすなんて簡単だなぁってね。


 背の高い城だから、見上げると天辺が太陽に重なっている。太陽の城なんていう大それた呼び名があるくらいだし、歴史も古い。キリエが居た時代から存在していた国だし…その時代の資料とかあるかな?


 城の外周…堀を眺めながら舗装された綺麗な道を歩いていく。堀は水路になっていて、魚が多く見られる…種類も多いから、何処か水源に通じているのかな。


 しばらく歩いて裏門に到着した…この城、結構広いな。秘密の通路とか沢山ありそう。


「こんにちはー」

「身分証を確認する…お疲れさん」


「どうもどうもー」


 深淵の瞳で裏門をクリア。

 悪い事をする度に深淵の力が増すから、早い所アラステア様に会わなきゃなぁ…その前にミズキで光の適性が上がるか、一度チューして試してみようかな。


 裏門を出ると、騎士団詰所や納品受け入れ所、駐車場、検品所、倉庫が並んでいた。ちょっと広すぎるな。地図欲しい…おっ、メイドっぽい私服の女子を発見。付いて行こう。



 …少し歩くと、そこら辺の女子率が上がってきた。

 メイドっぽい女子は倉庫のような建物に入って行った。

 そこからメイド服の女性陣が現れている…寮は城の敷地外なんだな。


 よし、私も入ってみよう。予備の服とかある筈だし…

 中に入ると…ぐほっ! 色々な匂いが混ざってエキゾチックな匂いになっている…

 見初められたら勝ち組だから当然か……とりあえず隅を移動して倉庫を探す。……おっ、それっぽい扉を発見。扉に手を掛けたら、誰かが来た。

「ちょっとあなた」

「はい?」


「制服忘れたの?」

「はい、寝坊して全部忘れました!」


「ふふっ、面白い子ね。新人さん?」

「はい! レティと申します!」


 ピシッと敬礼すると、話し掛けて来た女子は笑っていた。あっ、さっき付いて行った女子だ。水色の髪を束ねて、お姉さんお姉さんした雰囲気。

 折角だからと倉庫を案内してくれた。


「あの…先輩のお名前はなんですか?」

「ブリッタよ。よろしくね、レティちゃん」


 ブリッタさんはパチリとウインクして予備の制服の場所で手招き。

 …可愛い…私はこういうお姉さんに弱いのかもしれない。


「ブリッタさんは、何処の所属なんですか?」

「私は上層の勤務よ。凄いでしょ」


「へぇー、凄いですねぇ。まじで」

「ふふ、ありがと」


 見た所、序列はフーツー王国とそんなに変わらないか。

 下働きや雑用をする下っ端の低層。

 その上に給仕や部屋の管理等をする下層。

 次はお客様の世話等をする中層。

 そして、王族の世話等をこなす一番花形の上層。


 上層はメイドのエリート。

 ブリッタさんはメイドの憧れであり、ここまで来ると婚期を逃すという諸刃の剣をお持ちである。


 ブリッタさんに茶色いメイド服を渡された…はて? ブリッタさんは黒いメイド服…あっ、新人は茶色なのか。早速着よう…スポッ。


「二年頑張ればこの色を着られるわ。頑張ってね」

「はい! 頑張りまんもす!」


 頑張る気は無いけれど、可愛いお姉さんに言われたらこう答えるしか無いな。

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