色々中途半端だから、挨拶くらい言わないとな

 

「はじめましてー、エーリンですー」

「ちっ…チロルです」


「敬語じゃなくて良いですよー。私は癖なのでー。にしても可愛い人ですねー、食べちゃいたくなりますー」

「たっ、食べちゃ駄目ですぅ…」


 エーリン、おっぱいカーストの上位者は余裕があって良いですのう……巨乳相手に敬語になるのは仕方無いんだよ。

 チロルちゃんがビクビクしている…エーリンが笑った時に牙を見てビビったな。

 ほらっ、チロルちゃんおいで。

 チロルちゃんを後ろから抱き締めてエーリンを見ると、羨ましそうに私を見ていた。


「エーリン、チロルちゃんは痛いの駄目だから触っちゃいけないよ」

「えー! アレスティアだけズルいですー!」


「……アレスティア?」


 チロルちゃんが停止した。

 そういえば、私の本名を知っているのは…ヘルちゃん、クーちゃん、リアちゃん、エーリン、シエラ、ムルムー…後は…店長やリック、フーさん?

 何かを察したチロルちゃんがゆっくりと私に振り向く。


「私の本名はアレスティアっていうんだ」

「……えっ…じゃあ…でも…えっ…えっ…アスティちゃんって…フーツー王国出身だよ…ね?」


「うん。そうだよ」

「でも…アレスティアって名前…一人しか…」


「そう、一人しか居ない。私がその一人だよ」

「ぁ…ぅ…アレスティア…王女」


 私に対しての引っ掛かりが解けた様子で、恐る恐る答えを導き出した。せいかーい。元だけれどねー。

 おっ! チロルちゃんが私から逃げようとした! 

 はっはっはー! 私がガッチリホールドしているから逃げられんよ!


「私の事、嫌いになった?」

「その…質問は…ズルいよ…」


「ふふふ、逃がさないよ」

 いただきまーす。いや、今いただいては駄目だ。チューだけにしておこう。

 ……エーリンが羨ましそうに凝視している。

 チロルちゃんはあげないよ。私のだからね!

 後で血吸わせてやるから我慢しなさい。



「ところで…その不自然な胸はなんですかー?」

「は? 自然だろ、ナチュラルだろ、本物だろ、馬鹿にしてんのか? 喧嘩売ってんのか?」


「いや、そんなに怒らなくても…」

「やっ、やっぱりこれ不自然なんだよぉ…」


 不自然なんて言うからだよ。二サイズ上げただけじゃん。

 チロルちゃんの魔導ブラジャーを揉んでみる……改良の余地有りか。リアちゃんに頼んだら危険だな…ミーレイちゃんの家は下着屋さんもやっている…一億ゴルドで改良を頼むか。


 チロルちゃんにアレスティア王女の説明をザックリして、宿を出る。そしてそのまま町を出て、皆で星に乗って出発進行!



「……アスティちゃん、何しているの?」

「鎧の調整。要らない所を切って、私でも着れるようにしているの。白騎士になれば私だって解らないでしょ?」


「有名人だもんね。でもみんなアスティちゃんの顔を知らないよ」

「アレスティア王女はね。アスティやレティの顔は割りと有名だから、同一人物だと思われないように…っと」


 脚の部分は出来た。小さいレーザーブレイドで焼き切れば綺麗に切れる。後はヤスリで整えたら私用の鎧…まぁお飾りだけれど。


「器用だねぇ。そういえば王女は病弱って聞いていたけど…」

「お茶会やパーティーになると、お腹が痛くなる特殊能力があったの。元気一杯だったよー。剣ならお兄様にも勝てたし」


「それは…凄いね。アスティちゃんらしいというか…」

「まぁ社会的にはアレスティア王女は死んでいる訳だし、私は自由の身なのだ。あっ、そうだ。これあげる」


 迷宮で倒した植物人間が持っていた杖を渡す。黄色い玉だから、土属性が強化出来そうなんだよね。


「……これ、魔法武器だよね。受け取れないよ…」

「迷宮で見付けたんだけど、要らないからあげるよ。時間あったら一緒に迷宮行こうね」


 お友達が沢山居れば、迷宮でも寂しくない。女子旅を満喫しないと。

 おっ、前方にオークの群れ。

 チロルちゃんに魔法を使ってもらおう。


「チロルちゃん、ロックフォールをあそこに使ってみて」

「あそこに? あっ、オーク。誰か追われているよ!」


「そうだねー、じゃあよろしくー」

「…アスティちゃんって他人にドライだよね。よし…ロックフォール!」


 黄色い杖を掲げて、魔法を唱えると大きな岩が出現。

 ……五個も出たな。前は二個だったのに。二倍以上適性が上がるのか。なるほど、これが魔法武器ね。


 先頭のオークに向けて岩を落とし、その後は順番に岩を落とした。うん、オークはお煎餅になったな。


「じゃあ行こうかー」

「えっ!? まだ残っているよ! 助けないと!」


「あぁ、大丈夫。ゆびーむ」


 バシュン…残りのオークとはバイバイして、先へと進む。

 …エーリンどうしたの? 杖貸して?


「次は私がやりますよー」

「暇だったんだね。使ったらチロルちゃんに返してね」


「わかっていますよー。あっ、また群れですねー。こんなに魔物って居るんですかー?」

「もっと進めば解るでしょ。よろしくー」


 少し進むと、次はオーガの群れ。群れるなんて珍しい…なんだ? 全部似た個体…迷宮産みたいだな。


 エーリンは得意気な顔をしながら魔力を練っている。

 地形壊すなよ。

「ほいー。ロックプレスー」


 おー…大きな平たい岩が現れて、一気にオーガを潰した。あれじゃあ逃げられないな。大きなハンバーガーだね。岩がパンで肉がオーガ……うん、想像はやめておこう。

 エーリンが杖を眺めて首を傾げている…意味無かったのかな?


「適性上がらなかった?」

「はいー。少しだけでしたねー。私には合わないみたいですー。返しますねー」


「普段杖を使わないからでしょ。チロルちゃんは魔法学校に通っているから使い慣れているんだよ」

「なるほどー。アレスティアは学校行っているんですー?」


「いや、退学した。帝国の姫に喧嘩売ったからね。そういえばチロルちゃん、魔法大会には出ないの?」

「いや、出ない出ない。私は学校で下の中くらいだから、出場資格も無いし」


 はて? 能力的には上の中に食い込めるけれど……聞いてみると、大人しく過ごしたいから手加減しているとの事。家庭教師も秘密にしているらしい。

 嫉妬が怖いんだね。

 ただでさえアレス君と仲が良いのに才能まであったら…怖い怖い。


 …私も一度学校へ挨拶くらい行きたいな。

 ティーダ君にサンキューくらい言わないと。あとクラスのみんなは…別に良いか。いや一応この姿でバイバイしておいた方が良いな。


 噂の天使は私だったのだー! ってね。




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