ひゃっほーい

 

 宝箱オープン!

 ……またごちゃごちゃしてんな。誰が入れたか解らないけれど、もっとこう…綺麗に並べてくれないかね。

 わぁー! っていうさ、感動的なものが無いんだよ。

 急に来客が来た時に押入れにぶっ込んだみたいな入れ方しやがって。


 まぁ良いや。ゆっくり視よう。


 裁縫セット…種類が多い。これは普通に嬉しい。

 ンスクの霊薬…失った声を治す薬。

 綺麗な剣…刀身が透明な剣。魔力によって色が変わるから、魔法剣用の剣かな。

 歩兵の勲章…装備の重さ軽減か。

 呪いの藁人形…嫌いな奴を呪える。失敗したら自分に返って来るからいらないや。

 白いドレス…サイズ調整機能付きの魔導服。

 黒い釣竿とルアーセット…割りと大きな魚が釣れる。

 よく解らない絵画…よく解らない。

 魔法書…封印魔法…人には使えないタイプかな。

 お金は…二百万ゴルドくらい。


 ん? 上げ底かと思ったら大きな物が……おっ! 魔導ピアノ! やったー! 楽譜もある…これ欲しかったんだよ。普通に買うと一億ゴルドは軽く飛ぶし。


「アレスティアはこれ弾けるんですか?」

「うん、これは才能あるって言われた事があるんだ! ちょっと弾いてみるね」


 エーリンに宝箱から出してもらって、蓋を開けてみると、白と黒のコントラストが綺麗な新品鍵盤。ひゃっほーい。

 動力は私の魔力。伸びや強弱やら補助機能も充実している……私が城で使っていたボロピアノの百倍凄い。


 とりあえずこれの欠点は脚が無い…机を出して、その上に……重てぇ……エーリンに乗せて貰って、何を弾こうかな。


 よし…今の気分で…喜びの曲。

 アップテンポで始まり、軽快なリズムにメロディを乗せる。

 エーリンは楽しそうに笑って聞いている…今だけは楽しい気分でいてくれたら良いな。


 おっ? エーリンが懐から横笛を出した。横に持って私の音色に合わしてくれる。綺麗な音色…やるねぇ。


 ……それから夢中になって色々な曲を演奏した。

 少し休憩しようと言った時には、何時間経ったか解らない……お互い体力だけは有り余っていたから……

 どうしよう……パンパンにどれくらい帰っていないか解らない。


「アレスティアー、どうしたんですー?」

「…どれくらい家に帰っていないか解らないから…帰るのが怖くて…」


「四日くらい大丈夫じゃないですー?」

「四日? 四日も経っているの?」


「多分そのくらい経っていますよー」

「まじかよ…」


 どうすっかなぁ……帝都大丈夫かな? 壊滅していないかな?

 ちょっと行ってきて良い?

「いやー」

 駄々こねんな。

 じゃあ宿に着いたらね。

 直ぐに戻るから…縛られなければね。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 それから、帰還石を使って迷宮の入口に到着。

 到着? なんか小部屋に来たけれど……おっ、ボタンを発見。ポチッとな。

「「ん?」」

 ポイッ…と、迷宮の入口…じゃないな。何処かに弾き出された。

 ……外に出られた。出られたけれど…もう少し優しくして欲しいものだ。十メートルくらいふっ飛んだぞ。


「…不親切な迷宮ですねー。ここは、何処です?」

「んー…ちょっと上がって見てみようか。星乗り」


 星に乗ってヒューっと上昇。

 あれは…迷宮。だとしたら、一キロくらい離れた場所に飛ばされたのか…迷惑な。まぁ出られたから良しとして、王都に帰ろう。



 十分くらいで王都に到着。

 おー……商業用の並びが凄い。宿足りるのか?

 私達は空いている入口だから良かったけれど…あっ、変装しないとまたナンパされる。

 今回は、私は白いフルフェイスの兜を着用。

 エーリンは地味眼鏡を装着。

 これで完璧。


「私達、怪しいですねー」

「そうだね。白兜なのに鎧を着ていない奴と、地味なのに目立つ紅白服の奴」


「お前ら、ちょっと待て。怪しいな」

「やっぱり止められましたねー」

「すみません、ナンパが嫌で顔を隠しているんですが、これで良いですか?」


「あっ、なるほど。通って良いぞ」


 顔を見せたら納得してくれた。

 まぁ深淵の瞳を使ったんだけれどね。

 すまんね。


「にしても、こんなに混んでいるものなんですかねー?」

「年に一度だから、お祭りみたいなものじゃない?」


「なんかみんなピンクのネームプレートを着けていますねー」

「自己紹介を省くんじゃない? 名前なんて忘れるし」


「あっ、婚活イベント参加者はピンクのスカーフとネームプレートが支給されるみたいです。看板に書いてありますよー」

「ほんとだー、場所は城の前にある区画…一キロ四方の特設会場で立食パーリーかぁ。あっ、観覧席あるって!」


「観覧席は一万から百万ゴルドの席…高いですねー」

「折角だから、百万ゴルドの席を取ろうか。役所に行けば申し込める。行こっか」


 百万ゴルドの席は、ゆったりとした場所で座りながらご飯を食べられる。観える景色はドロドロの女の戦いという悪趣味全開の席。良いね。


 早速役所へ行き、観覧席希望の所へ。

 十万ゴルドまでの席は完売。

 百万と五十万の席は空きがある。良かった。


 二百万ゴルドを払って、特別観覧席を二つゲット。

 説明を聞いたら、なんとメイドさんが付くらしい。二つ買ったから二人のメイドさんをゲットだ。可愛いかったらチップを弾もう。


「じゃあ宿に戻ろうか」

 宿に到着。

 ナンパされないって素晴らしい。

 次にする事は…パンパンか。


「行かないでー」

「帰って来なかったら寝ていてね」

 エーリンの呼び止めを振り切って、転移ゲートを開く。

 中を確認……誰も居ない。


 ソーッと入って、罠が無いか視る。…ベッドに罠有り。拘束系統か……ふっ、その手には乗らんよ。

 誰も居ないので、部屋から出る。

 ……誰も居ない。

 そろりそろりと歩いて、ヘルちゃんの部屋を開ける。

 ……居ない。

 みんな一階かな? 夕方だし、忙しいか。


 一階に到着。…あれ? お店やっていないぞ。

 店内に行くと、店員さん達が勉強会中だった。ヘルちゃんが教壇に立って、年下の子に教えている。先生似合っているなー。


 邪魔しちゃ悪いな。そろりそろりと二階に戻る。

 奥の部屋…リアちゃんは…居ない。

 仕方無い。ヘルちゃんの部屋でゴロゴロするか。


 ソーッとヘルちゃんの部屋に入り、ベッドに入る。

 あっ、抱き枕だー。

 ギュッ。


 …ん?

 あれ?

 動けない。


 ――目標捕獲。目標捕獲。勝利は誰の手に! 繰り返します。目標捕獲。目標捕獲…


 しまったぁぁぁああ!

 罠かぁぁああ!


 ドタドタと階段を走る音。

 そして次々と部屋の扉が開く音…

「あぁ! 私の部屋じゃない!」「私も! 誰の部屋!?」


 えっ……まさか全員の部屋に罠が……

 ガチャリ。

 私が居る部屋の扉がゆっくりと開き、ツインテールの片割れが出現。そして、部屋を覗き込むヘルちゃんと目が合った。

 ……やっほー…解放してくだしゃい……


 にんまりと笑うヘルちゃんが、サッと部屋に入って鍵を掛ける。あぁ…嬉しそう。とても嬉しそうだね。


「ふふっ、私の勝ち」


 助けてー。

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