その気になったら大変だよ

 

 ……結局、ヘルちゃんと一通りの後、ベッドで旅の話をしていた。シャワーを浴びた後は、パジャマに着替えて後は寝るだけの状態。


「ふーん、そのエーリンとアースに行くのね」

「うん。ミズキの元に送り届けたいの。その後はまだ解らないけれど…」


「……私も行くわ」


 いやいや、ヘルちゃん忙しいでしょ。その前に皇女だし。


「ヘルちゃん、皇女だから行く先々で大変だよ?」

「アスティは普通のアレスティアで旅をしているんでしょ? だから私も普通のヘルトルーデとして旅をしたいの」

「普通の…」


 …それを言われちゃ、私は何も言えんな。気持ちが解り過ぎる。私的には大歓迎だけれど、社会的には凄いザワザワするよ。

「実は…もう頼んであるの」

「何を?」


「私達もアスティと一緒に行けるように、ね」


 ……勝者はリアちゃんにわがままを一つ言えるらしい。

 リアちゃんに言ったら大体の願いを叶えてくれそうだな。私もわがまま言おうかな…いや、いつもわがまま言っているか……ん? 達?


「じゃあ、明日から一緒に行けるの?」

「えぇ…でも学校とか、みんなの面倒も見たいから、毎日は難しいの」


「そうだよね、毎日は難しいよね…じゃあ週末メインかな?」

「そうなるわね。でも安心して。みんなに頼んだから、毎日誰かは居るわ」


 なんと! 予定が空いているお友達が来てくれるのか…素晴らしい。理想の旅だ。皆の事を考えているヘルちゃんは優しいね。流石は聖女様。神聖の魔眼は前よりも成長している。


 賑やかになれば、エーリンも喜ぶだろうな。

 来てくれそうなのは…フラムちゃん、チロルちゃん、クーちゃん、シエラ、ベラも来るかな? ミーレイちゃんは家が厳しいから難しいかもなぁ。後…リアちゃんは、名前を呼べば何処に居てもやって来そうだから良いか。後は…レーナちゃんとか…まぁ、暇だったらみんな来るだろうな。



「そういえば、皇位継承の件は第二皇子に付いたの?」

「いや、今考え直しているの。少し考えたら兄様に付くと面倒かなって」


「面倒?」

「私が兄様寄りになると、アスティも兄様寄りになるの。アスティの正体がバレた時に結婚させられるかも…」


 あぁ…なるへそ。

 ヘルちゃんの目標は公式に私と結婚だからね。


「目標を優先するなら第一皇女だよね。皇位継承の手伝いをする条件に、同姓婚の法律を提示するとかなら飛び付くと思うよ」

「そうね…それが一番近道か。私のバックに大魔導士と剣聖、パンパン、後…アースの王女も引き込めたら最高ね」


「ふふっ、ヘルちゃんの支援者を増やす旅にもなりそうだねー。エーリンもお姫様だし…クーちゃんとフーさんもエルメシアで有名人…」


 いやもう充分じゃね?

 どんな権力と戦うのさ。

 その気になれば国を作れるぞ。


「国か…」

 心を読まないで。

 その気になったら大変だよ。

 忙しいじゃ済まないよ。国の体制を作るだけで一生を使っちゃうよ。


「ヘルちゃんと色々な所に行きたいなぁ…国なんて作ったらあんな事やこんな事も出来ないよ」

「むぅ…あんな事こんな事したい…国作らない」


 可愛いのう。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 朝になり、ヘルちゃんと転移ゲートをくぐる。

 どうやら専用のアクセサリーを着ければくぐれるらしい。


 宿の部屋…エーリンは、私のベッドで寝ていた。


「エーリン、朝だよー」

「…にゅ? アレスティアー…遅いですよー……誰?」


「初めまして、私はヘルトルーデ。アレスティアの婚約者よ」

「初めましてー。エーリンですー。可愛い婚約者さんですねー」


「エーリン…あなた良い子ね」


 ヘルちゃんとエーリンは仲良くなれそうだね。

 あっ…握手しちゃった。ヘルちゃんの手からボキボキ聞こえるけれど、表情を変えずにエーリンに微笑んでいる…凄えな。

 …エーリン…嬉しそうにニギニギすんな。もう粉砕骨折になってんぞ。


「エーリン、役所に行って席があるか聞いて来よう」

「はいー。お供しますー」


 折角だからヘルちゃんも婚活イベントを観覧しよう。駄目なら私が皇女の護衛的な何かになれば良いし。


 外に出よう。私は白兜、エーリンは地味眼鏡、ヘルちゃんも地味眼鏡。

 ヘルちゃんが私の兜を羨ましそうに見ている。あげないよ。白鎧を調整したら白騎士になるんだから。雪華も白い剣だから、純白の騎士……純白…私の心みたいだね。


 ……ヘルちゃん、その目はなんだい?

 私の心が穢れているみたいに見ないで。というか神聖の魔眼の能力で私の心を読んでいるでしょ。駄目だよ。プライベートな領域だから。


 ……ヘルちゃん、好き。

「…ばか」

 可愛いのう。


「アレスティアー、目で会話されると寂しいですー」

「贅沢言わないの。お友達が増えたじゃん」


「えへへ、それは嬉しいですよー」


 役所に到着。席があるか聞いてみると、百万の席が空いていた。人気無いのかな? 一つ買って三席を合同にしてもらった。

 よし、もう始まるらしいから早速行ってみよう。


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