これで帰れる

 

 さて、一眠りしたので準備を整え出発。

 奥の扉を開けると、また似たような迷宮。帰りたいな…迷路型じゃなくて、自然型迷宮の方が楽しめそう。

 これを生業にしている人は凄いね。同じ景色だもん。


「この壁を壊して真っ直ぐ進めば、直ぐに階段なのになぁ…」

「破壊神様の加護があれば出来るらしいですよー。本当かどうか知りませんがー」


「へぇー、そうなんだ。でも破壊神じゃないもんなぁ…」


 あっ、口が滑りんこ。エーリンが凝視してくるな。

 少し前を歩いて視線から外れよう。

 邪神の末裔とか、にわかに信じられないもんね。

 それと、リアちゃんにキリエのその後を聞かないと。


「アレスティアは、どうして女神に会うんです?」

「会ってみたいから、だね。私の名前は、アラステア様の名前を元に名付けられたし」


「ん? それって高貴な身分じゃないと出来ませんよねー」

「あっ、それもそうだね」


 忘れていたよ。

 女神の名前を元に出来るのは、基本的に王族や皇族。

 フーツー王国にアスティという名前が多いのは、私の名に寄せる事で間接的に女神の名前を元に出来るから。


 うん。まぁつまり…近隣諸国にアレスティアという名前は……アレスティア・フーツー・ミリスタン第一王女以外にほとんど居ない。

 居るとしたら、ここから遠く離れた国や、他大陸。後は…アラステア様を信仰していない国の人。


「ほー…アレスティアはお姫様だったりしてー」

「昔はねー。今は違うんだ」


「どうして? あっ、一度死んだって…」

「そう、社会的に私はもうこの世に居ない存在なの。だから今は普通のアレスティアだよ」


「へぇーじゃあ私はお姫様の骨をバキバキにした犯罪者ですねー」


 笑顔で言うな。

 自覚あんなら加減しろ。

 元姫は秘密だかんな。言うなよ。振りじゃねえからな。


「エーリンもお姫様みたいな感じするよ」

「えっ、本当ですかぁ? えへへ」


 赤鬼族だから、鬼姫…赤鬼姫…紅姫…


紅姫べにひめ?」

「うぉっ……お見事……」


 えっ、当たったの?

 じゃあ本当にお姫様?

 族長の娘とかかな。

 にしても紅姫とか格好良いな。私も剣姫とか呼ばれたかった。

 なんて呼ばれていたっけなぁ…

 引きこもり姫…お転婆姫…根暗姫…狂わせ姫…腹痛姫…冷徹姫…

 まぁ、まぁまぁ結構色々な呼び方があったもんだ。統一感無しだね。



 また同じだけ歩いて、歩いて、やっと大きな扉に辿り着いた。

 黄色い扉だから色付き扉。


「またここから狙い撃ちですかー?」

「それで良いじゃん」


 扉を開けて中を覗き込む。

 …おー広い…魔物は…三十くらいの変な顔した重戦士を従えた…緑色の顔をした植物人間?

 重戦士は白、青、黄の鎧を着て、斧やら槍を持っている…属性があるのかな?

 植物人間は、赤い法衣を着て、金の王冠を被り、黄色い玉の付いた杖を持っている。


 うーむ…とりあえずソルレーザーで良いか。

 新しい魔法技を試そう。


「ライト」


 ライトを魔物の周囲に囲むように展開。

 魔物が反応したな。動く前に仕留めよう。


「くらえー、ソルレーザー・コネクト」


 魔力を込めたユビームをライトに向けて連射。

 ライトとライトの間をソルレーザーで繋げば、停滞するソルレーザーが出来上がった。

「レーザーブレイド」

 後はそのライトを縦横無尽に動かすだけ。

 つまり、無数の巨大なレーザーブレイドが部屋の中を無慈悲に駆け巡る。


「アレスティア…凶悪ですねぇ…」

「もう少しで、これで無元流を使えるよ」


「うへぇ…アレスティアとは戦いたくないですねぇー」


 努力したからねー。

 室内ではレーザーブレイド、外では星体観測。少しでも死角を無くさないと。


 レーザーブレイドが動く度に、青、黄色の重戦士が鎧ごと切断されていく。

 おっ、白鎧は顔が消し飛んだけれど、鎧の損傷が少ない。あれ欲しい。

 植物人間は結界を張って防御しているけれど、長くはもたないだろうな。


 重戦士は全員倒した。後は植物人間だけ。

 ライトを操作し、レーザーブレイドの総攻撃。

 これに耐えたら大したもんだけれど…

『オォォォオオォォ!』

 バキッと結界が割れ、簡単に植物人間を焼き斬った。


 よし、良い感じ。

 扉から中に入って、損傷の少ない白鎧を三つ収納。

 植物人間の所に行くと、黄色い玉の杖と王冠が落ちていたので回収。法衣はズタボロだったから放置。


「帰還石ってこれ?」

「はいー。これに魔力を通せば入口辺りにいけまーす。その前に奥の扉に行きましょー」


 中心の床に、光を失ったような灰色の玉が嵌まっていた。

 これは後で使うとして、奥の扉へ。

 扉を開けると、黄色い宝箱のある部屋を発見。少し宝箱の装飾が豪華になっているのな気のせいかな?


「これで帰れる目処が立ったね」

「はいー。婚活イベントに間に合いそうですねー」


「あっ、忘れていたよ。少し眺めたらアース王国に行こう」

「最後まで見ないんです?」


「うん。実は迷宮に行けたから満足している」

「あっ、私もですー。また一緒に迷宮へ行きましょうねー」


 じゃあ宝箱を開けようか。

 今度は私が開けるねー。

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