先祖の記憶・核星の天使2

 

『メガエナジー…ガトリング』


 高速で飛来する黒銀のエネルギー。

 キリエの腕を吹き飛ばし、脚を吹き飛ばしても瞬時に再生していく。

 身体が壊れ再生する度に魔力が減っていく…

 この魔法は凄いな…服まで再生するのか…


「進化しても…あなたには届かない…それでも…私は戦う」


 月蝕により、黒く染まった月を眺めながら、一人言のように呟いた。

 夜空のような黒い月に、両腕で縮めるような動きをすると、どんどん凝縮していく。

 淡く光っていた月は、凝縮により宝石のような輝きに変化していった。…黒い真珠みたい。


 その間も、黒銀のエネルギーはキリエを貫いている。ルゼルはまるで遊ぶように攻撃を繰り出して…本気ではない…何が目的だ?

 それでも…キリエは全力を出すしか無い。


 キリエが魔力を解放。

 白、黒、銀色の魔力が真上に噴き出して、黒い月に到達すると…

 黒い月に銀色の魔法文字が刻まれていく。

 …なるほど、黒い月を土台にして魔法陣を刻むのか…


『それが、お前の全てか…』


 やがて、黒い月に魔法陣が刻まれ立体魔法陣へと昇華。

 ゆっくりと回転しながら、点滅を始めた。


「闇夜を照らす月よ…深淵の扉を潜り…全てを壊す永遠なる闇を…我は願おう…破壊を…そして歌おう…破滅の歌を……神位魔法・破滅の月歌」


 破壊を、そして破滅を願った黒い月が…ゆっくりと墜ちる。

 触れる空気すらも壊し、音の無い墜落。空間がギシギシと軋み、大地に大きな亀裂が入った。

 ルゼルは、そこで初めて笑った。

 何かを喋っている…聞こえないけれど、私の読唇術を舐めて貰っちゃ困るよ。


『…ふふっ。ロンド、キリエに継がせる。これは決定だ』

『おやおや、他の者が納得しませんよぉ?』


 ひょこっと空間から顔を出したロンドが、月を見上げて笑う。


『納得しない者は、我が消す』

『おー、怖い怖い。まぁ、条件はありますが、ここの神とは話が付きました。では、わたくしは帰りますね』


 ロンドは空間に顔を引っ込め、消えていった。

 月は墜ちる寸前。

 ルゼルは、拳を握りしめ…

『ギガエナジー・フォースブラスト』

 振り上げた。


 ……ははっ、何なんだよ。

 この強さ。


「…くふふ…届かなかったなぁ…」


 笑ってしまう程に、呆気なく破滅の月歌は粉々に砕かれた。

 そして、ルゼルはキリエに向かって歩き出す。


『言い忘れていたが、我は裏世界で二番目に強い』

「そっか。殺すなら殺して」


『ふふっ急くでない。キリエよ、運命を…信じるか?』

「…もちろん。私が生きているのは、運命の出会いを果たしたからだよ」


『そうか。我も、信じているのだよ』

「…えっ」


 えっ…ルゼルがキリエの頭を撫でた。なんだ…この…慈愛の表情は…

 そして、キリエの意識が無くなった……死、いや眠っているのか。


 でも、なんで私の意識はあるんだ? キリエが寝たら、私は見られないのに……

 ルゼルはキリエを見ている。

 えっ…違う…

 見ているのは…私だ…


『さて、アスティ。ちょっと我と話をしようか』


 えー!

 なんで解るんだよ!

 あれか? 見えてんのか? 私は丸見えなのか?


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