肉食系美少女エルフ…素敵な響きだな。

 

 次の日。

 やっぱり私が銀髪男子というのは噂になっていない。因みに地味眼鏡モードの時は、くすんだ灰色の髪。地味だね。


 レーナちゃんが質問責めにされている…以前からレーナちゃんに銀髪男子の事をみんな聞いていたけれど、一緒に居る場面を見たらもっと質問したくなるよね。


「なぁアレス、ここではそれ取らないのか?」

「取らないよ。今更じゃない?」


「いや、まぁ、取っても取らなくてもアレスには変わり無いもんなぁ」

「……ティーダ君、ありがとう。嬉しいよ」


 そういう事を言ってくれる人なら、仲良くなれそう。でも男子と仲良くすると、私のお友達がプンプンするから適度な距離を保たないと。


 特にヘルちゃんは普通に怒る。

 例え男モードで男子と話しても直ぐ妬いちゃう。不機嫌全開になるから凄く可愛い。そこはお姫様だなーって思っちゃうけれど。


 学校での様子は、レーナちゃんがヘルちゃんに報告している。

 だから今ティーダ君と話した事は伝えられ、今日は不機嫌が確定するのだ。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 廊下で眼鏡を取り、国語の教室へ。

 そしていつもの通り、後ろの席に行くと女子達が一斉に後ろの席へ向かって来た。


「あっ、あの近く良いですか!」

「私も!」「私も!」


 ……あ、うん、国語は不味かったか。今女子達が私の周りに座っているから、フラムちゃんとミーレイちゃんが座れない。

 どうしようかな……男性達の嫉妬が凄いから、とりあえず席を立って教室を出てみる。

 フラムちゃんがやって来て、廊下に立つ私に首を傾げた。


「アレス君、教室入らないの?」

「いや、ちょっと女子達の圧力が凄くて…」


「最近また魅力が上がったもんね」

「ありがとう。フラムちゃんも魅力が増しているよ」


「えへへ、嬉しいな」


 イチャイチャしている場合じゃないね。

 あっ、ミーレイちゃん。


「入らないの?」

「女子達の圧力がね…」


「そりゃ、格好良いし本能的に吸い寄せられる魅力があるから仕方ないわね」

「吸い寄せられてみる?」


「られるぅ」


 いやだから、イチャイチャしている場合じゃないんだよ。

 仕方ないので死角で地味眼鏡を掛けてから教室へ入ってみると、女子達は戻りいつもの通りに戻っていた。

 良かった。後ろに三人で座ると、女子達は地味眼鏡に興味無い様子で見向きもしない。


 やっぱりこの眼鏡は凄いな。色々魔法が付与されている…

 まぁ感付く人は居るだろうけれど、まだ聞かれていないから良いや。


「別にもう眼鏡外しても良いんじゃないの?」

「外しても良いんだけれど、学校生活に支障が出る事が今解ったからねぇ……」


 試してみるもんだ。

 色々解ったよ。

 今は中等部の一年。

 三年になったら全解放しようかな。


 私は進学しないから、思い出作りに。



 卒業したら、学校分の予定が浮く。

 私の事だから、ダンジョンアタックでもするんだろうな。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 学校帰り。

 私は着替えて特事班の詰所に来ていた。


 今クーちゃんが帝国のお勉強中という事で、気になって気になって来ちゃった。


「あらレティちゃん。気になって来ちゃったの?」

「はい、仲良くなりたいので来ました。これから一緒にご飯を食べて、一緒にお勉強をして、一緒にお家で晩御飯を食べるんです」


「ん? うん…助かるわ。ありがとう」


 正直に欲望を晒しておかないと、気持ちのすれ違いは嫌だから。

 クーちゃんは、私の机の隣…解ってらっしゃる。

 山積みになった資料がクーちゃん机にあって、深く帽子を被り、眉間にシワを寄せた地味な眼鏡少年が資料を読んでいた。

 フーさんの妹って解ったら色々大変だから、地味スタイルなんだね。


「クーちゃん、お昼ご飯一緒に食べよ?」

「…了解です」


 地味少年スタイル…ちょっと眼鏡を取ってみると、美少年風の美少女。私の眼鏡を掛けてみると、美少年になったな……良いね。

 また地味少年スタイルに戻ってもらい、手を繋いで出ようとするとミリアさんに呼び止められた。


「レティちゃん…男子と手を繋いでいるように見えちゃうよ」

「別に良いんじゃないです?」


「知らないわよぉー」


 手を繋がないと嫌。

 だから大丈夫。

 お友達なら手を繋ぐくらいするでしょ。



 とりあえず中央区の飲食店街へ向かおう。

 すれ違う人がチラチラ見ているけれど気にしない。クーちゃんのスベスベな手を堪能する方が大切だ。


「クーちゃん、何食べたい?」

「…肉です」


「じゃあロンロンに行こっか。終わったら暇?」

「はい、お姉ちゃんは来週まで居ないです」


「じゃあさ、今日は私の家に泊まりに来ない? クーちゃんと一緒に居たいから明日は空けてあるんだ!」

「……お姉ちゃんに怒られるです」


「あっ、お泊まりは駄目なんだね」

「いや…そうではなくて……多分、大丈夫…です」


「ほんとに! やったぁ!」


 嬉しくてクーちゃんについつい抱き付いてしまう。良い匂いだなー。

「えっ…レティ…」

 おっ第二皇子さん奇遇だね。

 今私はクーちゃんに抱き付くので忙しいんだ。羨ましいだろー。ってクーちゃんは今地味少年だから解らないか。

 またな。


「クーちゃん、晩御飯は何食べたい?」

「…肉です」


「じゃあ高級お肉買いに行こっか」

「…高級」


 クーちゃんお肉好きだね。

 肉食系美少女エルフ……素敵な響きだ。

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