出来るだけ外して行こう…
昨日は色々あった。
美人姉妹とお友達になれた。
私はご機嫌。
例えクラスで冷たい視線を沢山浴びようとも、私はご機嫌だ。
先週シエラが校門前でやらかしたせいで、私は剣聖の孫をもてあそんだクソ野郎という噂が流れている。
男子には舌打ちされ、女子には女の敵と言われているけれど、ご機嫌なのだ。
それでも相変わらずレーナちゃんが側に居るから、事態は余計悪化している。離れろやい!
噂程度なら、王女時代にある事ない事噂が流れた事もあるし…慣れているからなぁ。
虐めに発展したら私は容赦無く戦うけれど、別に勝手に言っているだけだし。
レーナちゃんも鋼メンタルだから、私の嘘の噂が流れても気にしない。むしろ私が嫌われた方が一人占め出来ると思っているはずだから、嘘の噂を訂正しようとしない。
本当の姿を知っている人が側にいると心強いね。
でもね。
近いんだよ。
一ミリ動いたら触れる距離を保たないで。そんな職人技を求めてはいない。
「レーナちゃん、この地味状態で人に好かれる方法ってある?」
「無いですねー。結局人は顔なんですから」
「まぁ、そうだよね。でもなんかこのクラスで眼鏡を外すのは負けた気がするし…講義が終わったら外してみよう」
「ふふっ、その時はご一緒しますよー」
心強いね。
学校で眼鏡を外す時って緊張するから。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
魔物学の講義はいつも通り。
噂を広めているのは大概男子。根本の感情ってなんだろうなぁ…嫉妬かな。
「なぁ、アレス。あの噂って本当?」
「あぁ…もてあそんだって噂か。ちょっと前にゴタゴタしてね、彼女が謝罪しに来ただけだよ。会ったのはあの日が二回目だし」
「ふーん。聞いてみるもんだな。噂が一人歩きして大変だけど、大丈夫か?」
「大丈夫だよ。こういうのは慣れているから」
ティーダ君、心配してくれてありがとう。
何かあったら助けてあげるよ。
講義が終わってレーナちゃんがやって来た。
ワクワクしちゃって。
「なぁ…アレスって、誰と付き合っているんだ?」
「ん? 誰とも付き合っていないよ」
「えっ、そうなの…かぁ!?」
眼鏡を外して、ティーダ君を見ると口をパクパクさせて驚いている。もちろん男モードだから天使ちゃんでは無いけれど。
ふっ、格好良いだろ。
「じゃあね。ティーダ君また明日」
「あ…あぁ…」
手を振ってさよならする。
私を見ていた人は硬直していたな。でも魔物学って男子が多いから、見ていたのは男子だけ。つまり私のプラスになる事は広めない筈だから、アレスは銀髪イケメンというのはあまり広まらない。…と踏んでいる。
レーナちゃん、鼻血出さないでね。
「んー…やっぱり顔ですよねー」
「第一印象でほとんど決まるからね。ほらっ、私に地味クソ野郎って言ったあの女子の目もハートだよ」
「ふふっ、悪い女ですね。みんなの心を奪ってしまって…あっ、お友達の所には行きますか?」
「そうだね」
とりあえず四組のフラムちゃんの所へ。
レーナちゃんはニコニコしながら私の後ろから付いていく。
おぉ…人が避けていく。
地味アレスの時はみんな避けないのに、眼鏡を外すだけで変わるなんて……なんだかなぁ。
おっ、フラムちゃん発見。
相変わらずお友達に囲まれちゃって。
「フラムちゃーん」
「ん? アレスく…ん!」
おいでおいで。
フラムちゃんがお友達をスルスル抜けて私に抱き付く……ちょっ、抱き付いたら駄目だよ。
「フラムちゃん、クラス以外では出来るだけ外そうと思ってさ」
「やった。でも…みんながアレス君を好きになったらイヤ」
「ふふっ、手の平を返す人とはお友達にならないから安心して」
「むぅ…」
よしよし。
頭を撫でると嬉しそうに笑って…可愛いのう。
ざわざわしてきたな。
「また明日ね」
「うん!」
ばいばーい。
次は一組の方へ行こう。
振り返ると、フラムちゃんの姿が無い。無いというか女子達に囲まれて見えないだけか。
一組の方へ。ミーレイちゃんは居るかなー。おっ、お友達のナナリーちゃんと一緒だ。
「ミーレイちゃーん」
「あっ! レス君!」
お邪魔したかな?
ナナリーちゃんに人差し指でバンッてやると、胸を抑えて悶絶している。ノリ良いな。
ミーレイちゃんは抱き付きはしないけれど、手を繋いで放さない。ざわざわしちゃうよ。
「ミーレイちゃん、今度アクアシティの案内をして欲しいんだ」
「良いよ! いつにする?」
「うーん、今週は予定あるから…来週か再来週末かな」
「空けておくね!」
……ミーレイちゃん?
唇を突き出してもチューはしないよ。
男子達が悔しそうに歯を食い縛っている…悪いね。
繋いだ手を少し引いて、ポフッとミーレイちゃんを軽く抱き締めておく。
また明日ねー。
よし、学校を出よう。
「モテモテですねー。妬いちゃいますよ」
「レーナちゃんもモテるじゃん」
「アレスさんには敵いませんよ。好きの度合いが段違いですし……私は抱き締めてくれないんです?」
レーナちゃんを廊下の壁に追いやり、壁ドンと呼ばれる儀式を行う。
「レーナ、早く一緒に帰ろうぜ」
「むほっ、幸せ」
鼻血鼻血…ヒール。治った。
学校を出て、校門に行くと……見覚えのある人影。
「あの、アレス様……来ちゃった」
「……シエラちゃん、目立つから歩こうか」
注目の的だね。
剣聖の孫が会いに来たのが、地味野郎じゃない事に首を傾げる人も居るくらい。噂が浸透しているなぁ。
「今日は眼鏡していないの?」
「出来るだけ外していこうかなって。格好良い?」
「…格好良い」
ふふっ、今日は赤いお花を髪に挿してあげよう。
オレンジの髪と赤いお花…うん、良い感じ。
華やかになったな。
「シエラちゃん可愛いよ」
「くっそぉぉお! 転校してぇぇえ!」
ブリッジしながら叫ぶでない。縞パン見えてんぞ。
まぁ良いや、買い物行くぞ買い物!
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