白銀世界。

 

 攻撃に転じてくれたらほんの少し心に隙が出来る。

 深淵の瞳で視れるけれど、速いから身体が追い付かないな…


 どうするかなぁ…とりあえず今の内に…

「ハイヒール」


 ……よし、回復成功。

 魔力はまだある。

 白銀獅子の回復手段は無さそうか…氷で傷を塞ぐくらいかな。


『この炎……邪の者か?』

「私はとある女神様の子孫です」


『邪神…か』


 邪神…あの孤独な少女が邪神になるなんて…想像出来ないけれど、きっとそうなんだろう。

 この深淵の瞳が証拠だと思う。

 …だとしたら、御先祖様は裏の世界に居るのかな…


 …って考えている場合じゃない。

 アビスフレイムはソルレーザー程攻撃力は無いけれど、一番効果的か…


「アビスフレイム」

 ――ボッボッボッ!

 黒炎の塊を十個召喚。

 軌道を操作しながら撃ち出す。


『大氷壁』

 ――バキンッ!

 相変わらずの展開速度…


 でも黒炎弾一発で破壊。

 残り九個を操作。

 前後左右斜めの八方向。

 そして真上から!


 前方三つは弾かれ…


 ――ゴォオォオォ!

 残りは直撃。


「よっしゃ! ダークソード!」


 黒炎に包まれている今がチャンス!

 闇特化で追撃!


「シャドウクロス!」


 ――ザシュッ!

 下から突き上げる鋭い影。

 十字に鋭利な影が広がる


 剣を頭上に掲げ…更に深淵の闇を纏わせる。


 そして…一気に解き放つ。


「――深淵剣技・黒三日月!」


 私のオリジナル!

 斬擊が黒い三日月の軌跡を描き黒炎に包まれた白銀獅子に衝突。


 ――ドォオォオォオ!


 漆黒の柱が上がる。

 黒炎を巻き込み粘着質なエネルギーが溢れた。


「はぁ…はぁ…まだ連擊はキツいなぁ…」


 Sランクくらいなら一撃で仕留められる技…手応えはあった。


 今の内にAランクの魔石から魔力を吸収して回復。

 まだまだ魔石はあるから長期戦も大丈夫。


 魔力を溜めよう。


『―――』


 …なんだ? 何か聞こえる…


 それに…白銀獅子から魔力が…溢れて…


『舞い落ちる雪が…やがて吹雪となりて…全てを閉ざす…生ある者が死に絶える絶氷…』


「……ぅ…わ……大詠唱…」


 ――ブォンッ!

 黒い柱の下から…大きな青い魔法陣……この規模は…



『我は歩く…この死に絶えた地を…我は立つ…この凍り付いた地を…孤独と引き換えに! 環境魔法・白銀世界!』


 視界が白銀に染まる。


 急激な温度変化。


 草原の草が凍り付き…踏むと粉々に砕け散る。


 周囲一帯が凍り付いた…



「…違う」


 SSランクじゃない……


 環境を変える程の魔法を行使する存在は…


 更に上……


 そうか…最後に倒された時から、何十年も経っている。


 そりゃ魔物も…成長するか…この強さに納得。


「災害級でしたか……」


 こりゃ…圧倒的不利だ。

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