受けて立ちますよ。

 

 ……御先祖様の記憶、また観たいな。


 このヤバめな木の下で眠れば、また観られそうだけれど……先ずは目的を達してからだ。


 なんか変な時間に目が覚めたから、パッチリ。

 どうしよっかな。

 夜中と言っても私の視界は遠くまで見られる。

 深淵の瞳の影響かな。


 うん。もう、行動してしまおう。

 草原に着く頃には朝になっているだろうし。


 簡易テントを仕舞い、ヤバめな木の向こう側へ歩き出す。

 疎らな草の荒れた場所を進んでいくと、何かクネクネしている物体を発見。

 ……大きなミミズが縦に突き刺さっているような物体…なんだこれ?

 深淵の瞳で視てみると、地下に魔物が潜んでいて触れた者をパクリと食べる奴。なるほど、これは疑似餌か。

 ……危ない、触るところだった。


 …でも気になるな。

 遠くから何か当ててみるか。



 離れた位置から、人並みのウォーターボールを放つ。

 パシュ……

 当たった。

 けれど何も起こらない。


 ……次はファイヤーボールを当ててみる。

 ポフッ……

 当たった。

 ……何も起こらないな。


 私のショボイ魔法は反応する価値も無いという事か……

 そうか……


「――ソルレーザー!」


 ――キィィイイ

『ギョォェェエエ!』


 ボフッ……何か出た。

 ギザギザしていて、ウネウネしている芋虫に似た魔物。

 ギチギチとキモイ顎を鳴らして、のたうち回っている。

 紫色の汁が出ている……きしょい。


「……ソルレーザー」

 ――バシュン。

 軟らかそうな場所を狙ってソルレーザーを撃つと、動かなくなった。

 ……怖かった。見た目が。


 近付いてツンツンしてみる。

 筋肉がピクピクしているけれど、死んでいるみたい。

 ……腹をかっさばいて魔石を取り出すのが嫌なので、アビスフレイムで魔石以外を燃やす。


 ……やばっ。

 おいにーばいやーだ。間違えた、マジで臭い。


 ……燃え尽きた後には茶色の魔石。

 大きさはSランクだ。やった。

 吸収すると壁を超える感覚と、もう一つ。


「おっ? ストーンバレット!」

 コロン。

 小石が足元に転がった。

 やった! 小石が出た!


 よしよし、着実に私は成長している。


 魔石を回収して、先に進む。

 今の騒ぎで何か魔物が寄って来そうだけれど……来ないな。

 それぞれの縄張りがあるんだろうな。

 だとしたら戦闘が起きても他の魔物が来る心配が減る…と思う。



 しばらく歩いていると、草の割合が増えて来た。

 何処にでもある雑草の中に、黒い花を発見。

 ブラックフォールという夜に咲く花だ。

 珍しい品種ではないので、一つ摘んで眺めながら先へ進む。


 珍しい品種があったら夢中になって不意討ちという事は避けよう。


 次はピンクの木が三体ウネウネ歩いている。

 あれはランクAのボムトレント。

 名前の通り爆発する。

 枝を対象に絡みつけて自爆するというご迷惑な魔物。

 対処は遠くから燃やすだけ。


「アビスフレイム」


 ボンッ! ボンッ! ボンッ!

 爆発して四散した。

 ボムトレントにくっついていたスカイピーマンも一緒に爆発。

 なんか嬉しい。


 魔物に統一性が無い……流石は辺境。


 倒しながら進んでいると、やがて草が生い茂る草原に辿り着いた。膝上くらいの草が多く、整備された草原じゃないから歩きにくい。


 戦闘になったら周りを焼いて場所を作った方が良いかなこりゃ。

 転んだら不味いから。


『――グォォオオオ!』


 遠くから魔物の雄叫び。

 私に気付いたな。


 ここまで来いというような、風格を感じるような雄叫び。


 ……なるほど、私が挑戦者って訳か。


 この草原に足を踏み入れる資格があるか。


 足を踏み入れる覚悟があるか。


 あるのなら、力を示せ…か。



 少しだけ歩いた先……やっぱり待っていた。



「受けて立ちますよ……」


 朝日に照らされて、キラキラと輝く白銀のたてがみ。


 力強く大地に立つ四本の足は、歴戦の重みを持つ。


 私を見据える青い瞳は、それはそれは楽しそうに歪む…


 SSランク。白銀獅子。



「さぁ…勝負をしましょう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る