中身も外見も一緒だよ。

 

 朝、ヘルちゃんとパンパンへ。

 私と一緒に居るならヘルちゃんは自由に行動出来る筈だけれど、一応リアちゃんに言っておかないと。


 私はいつもの通り白ワンピースに白眼帯スタイル。

 ヘルちゃんは黒ワンピースにツインテール。

 銀髪白女と、金髪黒女。

 対称的な見た目だけれど、仲良しこよし。


 手を繋いで歩いていると、道往く人々が注目してくる。

 自称可愛い私と、帝国美少女代表のヘルちゃんだから注目を集めるのは仕方無い。

 話し掛けようとする同世代の男子達はヘルちゃんの睨み付けで退散していく。やっぱり熟練した睨み付けは違うね。


 大通りに出て、今日はどんな予定にするか話し合っているとパンパン近くで人集りがあった。


「ヘルちゃん、あれって第二皇子?」

「えぇ…多分お兄様ね」


 人集りの中心には、平民風の服を着た第二皇子。

 あくまで平民風。寄せてはいるけれど、生地や仕立てが全く違う。ヘルちゃんでさえパンパンの店員さん達に合わせた平民の服なのに、第二皇子の服が嫌味に見えるのは私だけかな。


 とりあえず無視して裏口に向かうと、私達を抜け目なく見つけて寄ってきた。


「ルーデ! っと…レティ…」

「……」

「これはお兄様。どうしたんです?」


「ルーデの様子を見に来てな…ところで、どうして店の外から来たんだ?」

「…レティちゃんの家にお泊まりしたのですよ」


「――なっ!」


 驚く事か?

 女子同士でお泊まりくらいするだろ。

 本当か? って私に聞かれても、妹の言葉を信じろとしか言えないね。まぁ私は遠くを見ながらヘルちゃんを少しずつ裏口へ引っ張って忙しいから返事をするどころじゃあないのさ。


「私達、超仲良しなので邪魔しないで下さいね」

「邪魔…って…家には…アレスは居たのか?」


「いえ、レティちゃんと私の二人きりですよ。楽しい夜だったわね。レティちゃん?」

「うん。ヘルちゃん、また一緒に寝ようねー」


「「ねー!」」

「……」


 流石に未婚の皇族が男が居る家に泊まったなんて言えないからね。グレーゾーンではあるけれど……

 皇子よ…悔しそうな顔をするな。ヘルちゃんが城に戻る事があれば一緒に寝れば良いでしょ。君が来ると話が止まるんだよ。あっち行け、しっし。


「レティ、今度食事に行かないか? この前の非礼を詫びたい」

「嫌です。ヘルちゃぁん…この人こわぁい…」

「――お兄様…邪魔をしないでと言ったばかりなのですが」


 ヘルちゃんの陰に隠れてきゅるーんとしてみると…ヘルちゃんが私を愛おしそうに見詰め、キッ! と皇子を睨み付ける。

 ふっ、どうよ皇子。私のヘルシールドは!


 この絶体防御を乗り越えられたならば! デートの一つでもしてやろうではないか! はっはっは!


 それは置いておいて…ヘルちゃん、めった怒っている…目がヤバい、ヤバいよ。それは怒りじゃなくて殺意だよ。ほらっ、皇子が引いているし。


「えっ、いや…」

「邪魔をするというのなら……お兄様は…敵」


「ルーデ、違うんだ! レティが…似ていたから…」

「ふーん…似ていた?」


「俺の愛した人に!」

「…お兄様」


 それ、駄目な発言だよね。

 昔好きだった奴に似ていたから声掛けたんだーってヤツでしょ。女子に掛ける言葉じゃないよ。見ず知らずの女と比較されて嬉しい人なんて居る?


「ヘルちゃん、見て見てーこのサブイボ」

「わぁー、鳥肌凄いわね」


「しかし、俺は幻想を見ていたようだ…顔が少し似ているだけで中身は全く違う…」

「ふーん…因みにその人って誰さ?」


「…アレスティア王女だ」

「……」


 中身も外身も一緒だよ。

 私に助けられて、私を美化してしまったのか…可哀想とは思わないけれど、何も知らずに中身は違うって言われてもなぁ……

 まぁまぁヘルちゃん、その殺意を抑えようか。一応家族なんだからさ。


「中身は違うって言うけれど、王女の性格や趣味や考え方を知っているのは専属侍女と執事長ともう一人だけだよ。王女の事を何も知らないでしょ」

「俺は知っている! 凛とした孤高の華のような美しさ! 民の幸せを願う慈悲の心を! 解ったような事を!」


 ちょっと誰の話をしているのか解らなくなってきた。

 それ私の嫌々書いた作文読んだだけでしょ。


 あんまり大きい声出すと野次馬来るからやめてよ。

 熱くなられると引いちゃうんだよね…


「何も解っていないのはお兄様の方! アレスティア王女は引きこもりの名に相応しい堕落した性格の持ち主! なのに剣を志すというお転婆振りが可愛い王女様なのよ!」


 ヘルちゃん…それ、褒めて無いよね。

 熱くなるとボロが出るから行こうか。


「…ルーデ…何を言っている?」

「ヘルちゃん、もう行こう? 人が集まってきたよ」

「あっ、ごめんなさい。つい熱くなって…」


 サーッと裏口へ逃げ込む。

 駄目だよヘルちゃん。余計な情報を与えると調べようとするんだから。



「……ルーデは…何を知っているんだ…」



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「あっ、リアちゃん。女子同士で子供が出来る方法ってありますか?」

「あるよ」


 えっ、あるの?


「教えて欲しいです」

「良いよ。大地の王が『生命の宝珠』を持っているから、貰えば良いよ」


「…それってただで貰えるんですか?」

「ふふっ、力を示したら貰えるよ」


 倒せって事ね。

 なるほど…大地の王を倒せば夢が叶って子供も出来る。


 もっと強くならなきゃ。



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