それが勝ち組の笑顔なんだね。

 

 あれから少し経ち、初等部を卒業。

 現在隣の中等部の校舎に移っている。


「これから中等部に入る訳だが、初等部の後輩達の見本になるような行動を心掛けてくれ」


 一応体育館で進級の式はあった。

 校長の挨拶等々あったけれど、どこの挨拶も長いんだなぁという印象だけだった。


 今日は学活のみ。一年の生徒全員が集まっているから、連絡事項等で終わる。

 私の組…一年二組も全員集合。曜日が被らない人は初めて見るから少し新鮮。



 休み時間になると、それぞれの友達グループで集まったり新しい友達に声を掛けたりしている。


「あの…パンパンの人ですよね!」

「はぃー。よろしくお願いします!」

「可愛いー!」「よろしくー!」


 私の隣に座っていたレーナちゃんに話し掛ける女子達。

 そう、レーナちゃんは同じクラス。

 だから私の隣に座っていたんだけれど、クラスの皆はレーナちゃんに話し掛けようとそわそわしていたみたい。


 もちろん私に話し掛ける人は居ない。

 中等部に入ってもしかしたら友達増えるかもしれないパワーは、レーナちゃんに全て吸いとられたようだ……


 みんな直ぐに仲良くなって……

 レーナちゃん楽しそうに笑っている……それが勝ち組の笑顔なんだね……


 まぁ解っていたさ。こんな地味な奴に話し掛けようとする人なんて居ないって……

「あんた邪魔」ドンッ。

 ボーッとしていたら太めの女子に押し退けられ…私は離れた席に追いやられた。


 それを見ていた男子が笑っている。


 レーナちゃんはクラスの人気者。

 私はクラスの笑い者。

 まぁ予想出来た事だし、そんなもんか。


 レーナちゃんはパンパンでヒィーヒィー言わすとして…

 今日は一人で帰ろう。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「アスティ、学校はどうだったの?」

「いつも通りだよ。ヘルちゃんは?」

「私もいつも通りよ」


 学校が終わって、ヘルちゃんとラジャーナへ。


 ヘルちゃんは今年の剣技大会の為に修行中。

 無元流を一から教えて、何度も何度も魔物を倒して壁を超えている。


 私のいつも通りとヘルちゃんのいつも通りは全く違う。

 私はボッチの学校生活。

 ヘルちゃんは貴族女子に囲まれてキャッキャウフフの学校生活。


「ヘルちゃん、世の中って…結局顔なのかな?」

「えぇ…世の中というか、私達の年代は八割顔よ」


「そっかぁ……じゃあヘルちゃんは私の顔が好みなの?」

「超好み」


 ヘルちゃんは恥ずかしがりやだから、二人きりならデレてくれるけれど、誰かが居るとツンツンしてしまう。


「ヘルちゃん、前からデスグランドオーガ、後ろからギガースだけれどどっちが良い?」

「じゃあデスグランドオーガは戴くわ」


 ランクAの一対一なら勝てるようになったのは凄いと思う。私とイチャイチャする事で潜在能力が底上げされた。

 後ろのギガースはソルレーザーでバシュンと倒して、ヘルちゃんの闘いを眺める。


 五メートルの巨体に立ち向かう小さい身体は、物語の英雄みたいに見えるなぁ。

 ツインテールをフリフリ揺らしながら素早い動き。

 掴み掛かる手に一閃。指を落とし、手首の血管を縦に斬り裂いている。

 もう逃げながら待てば勝てるけれど、無元流らしいエグい技で追い討ち。少しずつ四肢を斬り裂いている。


 ヘルちゃんは無元流の中でもエグい技に合っている。

 因みにフラムちゃんは一撃技が合っている。

 力のフラム…技のヘル…みたいな感じ。


 強い魔法が撃てれば、ヘルちゃんもSランクに挑戦出来るかもしれない。ヘルちゃんの適性は難しい雷魔法。まだ総魔力が少ないから、強い魔法も撃てない。

 でも魔物を倒して倒しまくればその内ソルレーザー級の雷魔法も撃てる筈。


「無元流・十連斬!」


 十六連斬には及ばないものの、充分殺傷能力に優れた十連撃。

 手数で押してデスグランドオーガを斬り刻んだ。お見事。


「ふぅ…こんなものね。痛っ…やっぱりオーガは硬いわ」


 ヘルちゃんはまだ無元流の動きに身体が付いていかない。少し無理矢理技を決めているから、手首の負担が凄い。

 戦闘後はいつもヒールを掛けている。


「ヒール。じゃあ次行こっか」

「えぇ、早く雷奥義を会得したいわ」


 無元流には、それぞれの属性奥義がある。

 基準値に達したらリアちゃんが教えてくれる。

 やっぱり可愛い女子には優しいな。


 今は甘えよう。


 とりあえず、早く白銀獅子の所へ行きたいけれど、時間が無い。

 行くのに一日掛かるからなぁ…出来るだけリアちゃんを頼りたくないし。


 ちょっと仕事休むか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る