帝都に居る以上、遭遇率はゼロじゃないよね。
「……」
ポーズを決めたまま硬直する王女を、ミズキは持って帰った。
勝負をすると言ったら繋がりが出来るから、ね。
ずっと拒絶の意を含ませていたのは気付かなかったのかな。
王女は帝国美少女グランプリの優勝者。自分の得意なフィールドでの勝負を挑むという事は、私に対する苦手意識の表れ……幸先は良いか。
王族が平民に勝負を挑む事は、自分を掛ける程の覚悟を持っているという事を含む…平民がそれを速攻に断る事は、お前なんかいらねえよという事。
一般的には断れないけれど、私は断る。
非公式の場だから。
そもそも帝国美少女グランプリには出られないし。
という事で、機会があればまた来年会いましょう。
……敢えて触れていなかったけれど、ムルムー……カウンターの下から写真の魔導具片手に私を撮るのをやめて。下からの写真って恥ずかしいからさ。
撮るのは良いよ。若い自分を記録に残すって良い事だから。
「それでさ。その大量の写真はどうするの?」
「パンパンの皆が頑張っているから配る」
「店員さん達…なら良いか。じゃあ店員さん達の写真欲しいから、みんなのアルバム作ってね」
「「美少女アルバム……」」
おっ、ムルムーとリアちゃんがシンクロした。
これは良いアルバムが出来そうだ。
いっその事、写真集でも売ったら店員さん達が一人立ちする時の準備金にもなるし。
私の写真集は駄目だよ。
非売品だからね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
三、四日目も終わり、楽しいお泊まり会は終了した。また来年やろうねーと喜ぶフラムちゃん、ミーレイちゃん、チロルちゃん。
チロルちゃんも二人と仲良くしているから安心した。
是非美少女アルバムに参加して欲しい。
次の日は学校だけれど、まだ調子が悪いからお休み。
来週から通常通りの日常になるから、今週はゆっくりしよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
みんなは学校…私は一人。
お花屋さんを手伝おうとしたけれど、店長に安静にしないと駄目って言われた。
かといって部屋に引きこもるのは嫌なので、大通りでお買い物をしよう。
今日はお買い物なので女子モード。
鏡の前で自分の姿を確認。
白いブラウスにグリーンのロングスカート。
ちゃんと白い眼帯はしているよ。
うーん……大通りに出てみたは良いけれど……注目されるなぁ。
やっぱり眼帯をすると何か病気なのかとか、ケガをしたのかとか気になるよね。
だから顔見知り程度でも話し掛けやすい環境が出来上がる。
休暇中の騎士さんとか、学校で見掛けただけの人とか私に話し掛けようとするけれど、私の魔力感知をなめてもらっては困るよ。
意識的に近付こうとする人が居たらスーッと逃げる。
通行人を壁にしながら、お店に入ったりしながら。
……話し掛けられても問題は無いけれど、話し掛けられたら負けみたいな自分ルールが発動しているからね。
逃げ切るよ。
とりあえず活発に動けない鬱憤を買い物で消費しよう。
先ずは服屋さん……
……うわ、凄い見られる。
なんだ? この眼帯は注目を集める呪いが掛かっているのか?
気にしないようにしよう。
最近ワンピースばかり買ってしまう。着る時、脱ぐ時楽だから。スポッて。
うーん…一人だから服を肩に当ててくれる人が居ない。
あっ、パンパンの店員さん誘えば良かったのか…盲点だった。
それなら誰か時間が合うはず。うん。とりあえずお昼…ご飯どうしよっかなー。
服は今度にして次のお店を吟味していると、何やら人集りが見えた。
女子率が多い……年代は初等部から20歳くらいまで様々。
珍しいものでもあるのかな?
遠目からボーッと見ていると、人の隙間からチラッと人が見えた。……なるほど、顔は見えなかったけれど有名人か。
少しだけ近付いてみようとしたら、女子の一人が有名人の名前を叫んだ。
「キャー! リーセントさまぁぁ!」
リーセント? 何処かで聞いた事あるな。
……あっ。
私が思い出して拳をポムッとした時、人垣の隙間から中心に居た人と目が合った。
……こっち見てんな。
女子達も視線を辿り、私の方を向いてくる。
とりあえず後ろを振り返ってみるけれど、後ろの人達も私を見ている。
全方位から視線の攻撃…やめて! 見ないで!
よし、逃げるか。
早歩きでこの場所を立ち去る。
「待ってくれ!」
私は逃げ出した。
しかし、まわりこまれてしまった。
自分ルールが破られてしまったので、とりあえず無表情でこの男を見据えると、少し戸惑った表情をみせた。
「あっ、いや、いきなり呼び止めてすまない」
「……何か、ご用ですか?」
よっ、久しぶり。
元婚約者さん。
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