二章…帝国強者編

銀髪眼帯美少女…いや…眼帯銀髪美少女……まぁ、どっちでも良いか。

 

 あー……

 あー……


 頭痛い。


 両耳の至近距離で打楽器を打ち鳴らすような…ガンガンとした痛み。


 右目も痛いし開きたくない。

 目にトゲが生えて周りをプスプス刺しているような……痛み。

 開きはすると思うけれど、視力がガクンと落ちている。


 とりあえず包帯で右目の部分をグルグルと巻いて、咄嗟に目を開いても大丈夫なようにしておこう。


 フラムちゃんの弾力ある乳枕でも痛みが引かない……ミーレイちゃんのふわふわ乳枕でも痛みが引かない。チロルちゃん……チロルちゃんは細いからさ…乳枕も腕枕も膝枕も骨が当たって痛いんだ。気持ちだけ受け取るからね。


 リアちゃん呼ぶ?

 いや、部屋に呼んだら最後。部屋に呼ぶという事は、また来ても良いという意思表示に捉えられる。

 毎日部屋に転移してきて拉致されるね。


 という事でやって来ました。


 パンケーキのお店パンパン。


 ん? 開いていない……あっ、今日は帝国美少女グランプリの二日目か!

 じゃあ合鍵で裏口から入ろう。

 合鍵は渡されたから持っている。

 私は貰える物は貰うから、合鍵もその一つ。


 チロルちゃんが付き添いで来てくれたから、一緒に中へ入る。

 フラムちゃんとミーレイちゃんも来ると言ったけれど、女子四人で人の波に突っ込むのは危険。だから小柄なチロルちゃんとやって来た。


 ……中に誰かが居る様子は無い。


 リアちゃんの事だから、通信が出来る魔導具があると思うけれど……

 なんだろう……テーブルの上に黒い物体が置いてある。

 使い方が書いてある……受話器を持って一番を押す?

 受話器……どれ?

 この上に乗っている…黒い鉄アレイみたいな奴かな?


 受話器を持って、本体にある一番のボタンを押してみる。


『はーい』

「リアちゃん?」

『アスきゅん、受話器を耳に当てて』


 耳に……『よく聞こえる?』

「あっ、はい。よく聞こえます」


『体調は大丈夫?』

「いや…最悪ですね。右目が痛いので、痛みを和らげるものがあれば欲しいです。お代は払いますので」


『ちょっと待ってて』


 ……

 ふわりと後ろから抱き締められる。

 すーはーすーはーしないでね。


「おはよう。アスきゅん」

「……おはようございます。あの、頭皮の匂いは嗅がないで下さい」


「……アスきゅんの頭皮の匂いはお金じゃ買えないのよ?」


 真剣な声色。

 怒らないでよ。


 ここまでリアちゃんを狂わせる程に良い匂いなの?

 ……チロルちゃん、嗅いでみて。

 右側面からリアちゃん。左側面からチロルちゃんが頭皮の匂いを嗅いでいる。

 ……リアちゃんはいつも通り。チロルちゃんは…息が荒くなってきた……いや、なんで二人とも同時に耳たぶをはむってするのかな?


 あのさ…こんな事をしている間も右目がズキズキ痛いんだよ。

 私達はドキドキしているって声を合わせなくて良いから。

 まぁ言い出した私が悪いんだけれどね!



「アスきゅん、これ着けてみて」

「これは、眼帯ですね。魔導具ですか?」


 銀色の眼帯。輪になっていて一部分が広くなっている布。いや…銀色て。他の色は無いんですか?

 白と黒……じゃあとりあえず白。


 着けてみよう。

 ……おっ! 痛みが軽くなった! ありがとうございます!

 右半分の視界が悪いけれど、魔眼のお陰で魔力感知が精密。

 だから誰かにぶつかる事は無さそう。

 でも物にはぶつかるかも。


「お代は…」

「んー……前に着けていた腕輪、使っていなかったら頂戴?」


 これは僥倖。

 ちょうど今日棄てようと思ったから嬉しい。

 とりあえず中身を出そう。

 下着と着替えと……ん? 銀色の髪の毛?

 あー…王都を出る時に髪を切って収納に入れたままだったか。


 ……ちょっとリアちゃん、私の髪の毛をサッと取らないで。

 チロルちゃん、悔しそうな顔をして私のパンツを取らないで。


「アスきゅん、これで『前髪うぃっぐ』を作ってあげる」

「前髪うぃっぐ?」


「この髪の毛に眼帯と同じ効果を付けるの。男子と女子で同じ眼帯だったら同一人物ってバレるでしょ?」


 おー! 優しい! 確かに眼帯って目立つよね。男と女…どっちを眼帯にしようかな……女子が眼帯、男子が前髪? はい、リアちゃんに従いましょう。


 ……ん? 『前髪うぃっぐ』があれば、別に眼帯いらなくない?

 ……いや、ごめんなさい泣かないで。

 ちゃんと眼帯着けるから。


 白い眼帯だから、病弱で儚い印象を与える。


 これで男子にモテモテね! って言われても男子にモテる必要性を感じない。


 あの皇子から貰った収納腕輪を渡す。

 今更ながら、裏に文字が入っているのを見付けた。

『リーセントより愛を込めて』

 初対面で愛を込めて……ギャグか?


「これ、何に使うんですか?」

「楽しむ為よ」


 また悪い事を考えているのか……

 まぁ私はいらないからお好きにどうぞ。


 とりあえずリアちゃんに深淵の瞳で見た事を説明。チロルちゃんが居るから主語を濁して話していく。

 アレスティア王女は魔族に殺されたと伝わっているから、普通に話しても問題は無いけれどね。


 リアちゃんは考えながら、的確に質問をしていった。

 席の配置、それぞれの席順。タイミングやそれぞれの様子。私の両目が何色に光っていたか……私が答えると満足げな様子だった。


「彼女が狂ったのは、アスきゅんのせいじゃないよ。だからアスきゅんは完全に被害者」

「えっ…そうなんですか。確かに違和感はあったんですが……」


「アスきゅんの左目も覚醒したら教えてあげるね」


 それは左目も覚醒する事が決定付けられたような……

 リアちゃんは私の知らない真実に辿り着いたという事? だとしたらすげぇな。



「明日の夕方六時に、ここでアースの二人と話せるよ。あっちも話をしたいみたい」

「おっ、了解です。じゃあまた明日」


「あっ、アスきゅんは五時には来てね」

「はい、じゃあ明日の五時に」


 うん、予想は出来るよ。

 着替えて前髪執事になれって事ね。

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