もうすぐ美少女を眺める大会。

 

 次の日。

 チロルちゃんと一緒にアズリード家へ向かう。

 チロルちゃん…緊張しているけれど、あなたも大農場経営者の孫だからね。


 私の周りはみんなお嬢様だなぁ……

 フラムちゃんだけ普通の家だと思ったけれど、貴族や皇族の剣術指南役として一番出世しているし。

 将来が安泰なのはフラムちゃんかな。

 チロルちゃんも魔法の才能が開花したから、働き口は沢山ある。

 ミーレイちゃんはまだ漠然とした目標しか無い状況。

 まぁ…私がみんなの将来を管理する訳では無いから、見届けるくらいしか出来ないけれどね。


 アズリード家に到着。

 ベテランお手伝いさんに用件を告げると、ミーレイちゃんがお出迎え。休日のラフな格好も似合うね……


「いらっしゃい。初めまして、私はミーレイ」

「あっ、チロルです。よろしく」

「畏まらなくて良いのよ? 同い年だし」

「う、うん。分かりまし…分かったよ」


 解るよ。解るよその気持ち。同い年といえどね…谷間があると無いじゃ違うんだよ。おっぱいカーストの一番下に居る私達にとってね、ミーレイちゃんみたいな上位の存在には敬語を使ってしまうんだよ。


「「……」」

「ア、アスティちゃん? チロルちゃん?」


 どんよりとした雰囲気の私とチロルちゃんを連れて、アーリィちゃんのお部屋へ。

 アーリィちゃんもその内私達を追い抜かして行くんだろうな…という逸れた思考を持ちながら、抱き付いて来たアーリィちゃんの頭を撫でる。


「アスティおねーさま! もう来てくれないかと思った! 嬉しい!」

「時間が合えば来るからね」


 今日はミーレイママのトゥーナさんはお仕事。

 謝りたい旨を伝えられたけれど、別に謝る事では無いよ。

 腹の探り合いに負けて逃げたのは私だから。


「いくよー。――ウォーター!」


 昨日の内に、チロルちゃんには家庭教師の概要を話してある。

 なんとかチロルちゃんは、水の蝶を作る事を出来たから格好は付くと思う。魔力が切れたら私が魔力を口移ししたから、長い時間練習出来たし。

 ……魔力の口移しは、私から譲渡するなら出来る。それについて、とある仮説があるのだけれど……それはまた今度。



「わぁー! チロルお姉ちゃんも凄ーい!」

「へへっ、頑張ったんだよ」


 水の蝶がアーリィちゃんの部屋を旋回。

 流石に羽ばたきはしないけれど、ふよふよしているからそれっぽく見える。


 よしよし、練習通り。

 ん? ミーレイちゃんも習いたい?


「私も、水属性だから……良いかな?」

「うん!」


 アズリード家は、水を売って生活していた商人が先祖らしい。だから水属性の適性がある人が多い。

 水に縁のある家系…因みに水の都アクアシティの市長は、親戚らしいよ。

 なんならミーレイちゃんも壁越える?

 時間が合えばいつでも良いよ。


 アーリィちゃんはチロルちゃんを気に入った様子で、ニコニコ会話している。


「良かった。アーリィが嬉しそう」

「チロルちゃんも楽しそうで良かった。そういえば給金っていくらなの?」

「確か…一回に銀貨五枚は出すって」


 マジかよ……銀貨五枚って……私の日給の2.5倍じゃん。

 お金持ちだなぁ…

 良かったねチロルちゃん。


 きっと噂が回って他の商人仲間の家庭教師もするんだろうな。

 私には解るよ。

 忙しくなるね…私の事も構ってね。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 それから、帝国美少女グランプリの開催が近くなるまでそれぞれ過ごす。

 相変わらずヘルちゃんは私の訓練を見る事はあれど、参加しようとはしなかった。


 因みに学園祭は行っていない。

 仕事だったから。


 この帝国美少女グランプリ、近隣の国からも参加者が居る。

 貴族率が多いのは、色々な力関係もあると推測している。

 だから、王族の参加もある訳で……アース王国、第一王女も参加する。

 あの帝国第二皇子の婚約者だね。


 本当に…黒騎士を使ってアレスティア王女を殺した国であるのなら、のうのうと美少女グランプリに出るアース王国王女はどんな気持ちなんだろうねぇ。


 関わりたくは無いけれど…殺された被害者としては、このまま泣き寝入りをするのもどうかと思うし……まぁ、様子を見よう。


 チャンスがあれば、ね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る