仲良くなりたいな。
「ねぇフラムちゃん、第二皇女ってどんな子?」
「んー? 負けず嫌い…かなぁ。努力を他の人に見せたく無いのか、私が個別で教える事が多いよ」
土の日、国語の講義でフラムちゃんにヘルちゃんの事を聞いてみる。
剣術の指南役として皇城へ連行されるフラムちゃんだけれど、みんな優しいから結構楽しいみたい。フラムちゃんって女子には優しいからね…人徳の成せる技だよ。
そういえばヘルちゃんのタイムスケジュールが気になる……学校に行ってパンパンに行って剣術…多忙だな。
仲良くなりたいんだよな……王女と皇女…似たような家庭環境だと思うし。
愛の無い押さえ付けられた家庭環境で、監視されながら偽りの自分を表に出して生活……第二皇女だから流石にそこまでは行かないと思うけれど。
あっ、私が剣術を教えれば良いのか。ベラは水の日だけだし。
……剣技大会で第二皇女のヘルちゃんが優勝すれば、剣を志す女性が増える。間違いなく増える。
そうなれば、剣を志していたアレスティア王女が少しでも肯定される……と良いな。
肯定されたからと言ってどうという事は無いけれど、時代の先を行ってやったと見返した気分になれる自己満足…だね。
ボーッとこれからの事を考えていると、クイッと服を引っ張られる。ミーレイちゃん、どうしたの?
「あのね、アーリィが…魔法を覚えたいって言っているの。あの魔法を見て感動したみたいなんだけれど…アスティちゃんに教えてもらいたいみたい…」
「魔法かぁ…私と適性が同じじゃないと、教えるのは難しいよ」
「そうだよね……アーリィは水属性だから。それに大人には教わりたく無いみたいなの」
学校だからアレスって呼んでね。光と水じゃ勝手が違うからなぁ…水属性ねぇ……最近水属性の才能を開花させた可愛い子が居たな。
「家庭教師に良さそうな可愛い子が居るよ。頼んでみようか?」
「……可愛い子? うん…じゃあ…連れてきて貰える? ちゃんと給金は出すし」
家庭教師って奴だね。
アズリード家に家庭教師として行くって結構凄い事なんじゃないかって思うけれど、とりあえず頼んでみよう。
……なんだろう、これでチロルちゃんまで忙しくなったら…また私の元にボッチの妖精が舞い降りるな。
なんだ? 私と関わるとみんな忙しくなるのか? いや全員じゃないか……でも私をボッチにしようという何かが働いている気がする。
考え過ぎか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ヘルちゃんに会う為、パンパンにやって来た。
相変わらず私はカウンターに立ち、目の前にはツインテールに眼鏡を掛けた地味な女の子が座っている。
ヘルちゃん、地味だね。
たまに貴族女子も来るから配慮したみたい。ヘルちゃんの騒動は一応秘密だから。
「ヘルちゃん、今のタイムスケジュールを教えて欲しいな」
「……」
考えてはいるけれど、プイッとしている。
仕方無い。
カウンターに両肘を付き、両手を上に向けて顔を乗せる。そして少し顔を傾けておねだりのポーズ。
「ヘルちゃん、教えて?」
「……」
ヘルちゃん……みるみる顔が赤くなっていく。地味可愛いな。
ブツブツ喋らないでよ…聞こえないじゃん。
隣行くね。チューしに行く訳じゃないからね。
ヘルちゃんの隣に座り、話を聞いていく。
要約すると……
基本的な生活はここで過ごし、集団生活をする事で協調性や思いやりを学ぶ。
学校は午前中まで。午後からパンパンで働く形。
夕方は各自の時間。晩御飯は皆で食べて、それから自由時間。
ここの寮…凄い所はシャワールームが各部屋にある事。
虐待等で身体を見せられない子も居るからだけれど、それを実行に移せるリアちゃんが凄い。まぁ、傷はリアちゃんが治しているだろうけれど…心の傷はね。
って事で夕方はヘルちゃんに教えようかな。皇城まで行ってフラム先生の指導を受ける余力は無いと思うし。
「ヘルちゃん、一番になってみたいと思わない?」
「……一番に?」
「そう。剣技大会で一番になる為に私が教える。来年は中等部でしょ? だから三連覇をするの」
「そんなの…無理よ。一つ上に剣聖の孫が居るし…」
「無理じゃない。やってみようよ。お城にだって戻るチャンスがあるし」
「……」
駄目かな? 少しだけ私のエゴを付け足している訳だから、無理強いは出来ないんだけれどね。
パンパンの裏手に教室くらいのスペースがあるから、そこで練習しよ。
「……」
……乗り気じゃないか。
私が訓練していればその内興味を持つかな。
よし、夕方はパンパンの裏広場で訓練しよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
パンパンの裏広場。
塀に囲まれているから外からは見えない場所。
ここはリアちゃん曰く、『ばーべきゅー』をする場所らしい。
気になるからやる時に呼んでとは言ってある。
でも大概事後報告で、私はまだ『ばーべきゅー』に参加出来ていない。
痕跡や匂いからして、ご飯系統。晩御飯の時にやっていると推測している。
思考が逸れたな……
木剣を持ち、空気に溶け込むようにリラックス。
「無元流・静界」
最近静界の範囲が大きくなった。
前は30メートルくらい。今は50メートルくらい。
だから裏広場の外も静界の範囲。密閉された建物内部は難しいけれど、窓が開いていたら動きが解る。
今も近くの建物で若い夫婦がアレな事をしているのだって解る。
窓閉めろや。感覚が敏感だから声も聞こえるんだよ…何時だと思ってんだ。
……二階の窓から誰かが覗いている。
気付かない振り。
リアちゃんらしき人が裏広場にやって来て、何処かからベンチを出して座っている。空間収納の魔法って羨ましいなぁ……
舌をチロチロ出してこちらを凝視している。気になるからやめてよ。
ん? なんか口パクで喋っているな……ア…ス…きゅ…ん…ラ…ブ……ありがとうございます。暇なら稽古つけてよ。
……お…し…り…を…み…る…の…で…い…そ…が…し…い……暇でしょ、その前に思考を読まないで下さい。
……見に来る子は居るけれど、ヘルちゃんは来なかったな。
あっ、今日は家にチロルちゃんが来る日だ。
また明日来よう。
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