みんな仲良いね。
金髪ツインテール、つり目でキツイ性格のように見えて少し震えている様子が印象的な女の子。
パンパンの可愛い制服を着て、腕を組んで精一杯強がっているのが解る……よく見るとめっちゃ可愛いな。
とりあえず、自己紹介かな。
「私、アスティ。宜しくね……えーっと」
「……ヘルトルーデ・ニートー・グライトよ」
「ヘルちゃん」
「……好きに呼びなさい」
嫌そうだなぁ……
口がへの字で目を合わせてくれない。
……リアちゃんどうしたの?
着替えて来い? 仕方無いなぁ……
……
……着替えてきました執事服。髪を後ろに纏めて眼鏡の男モードオン。
ヘルちゃんが私を見て、への字の口が開く。
何か言おうとしたけれど、落ち込むように俯いてしまった。
……そっか、今の自分を見られたく無いと思ったのかな。
ロンロンで見た時は、私を見てハート目だったからなぁ……私に魅入られてしまったのか……リアちゃん、チョロインって言っちゃ駄目ですよ。
ヘルちゃんの手を取って、目を合わせる。
「ヘルちゃん、リアちゃんがごめんね。お家に帰して貰えるように私も言うから」
ヘルちゃんが俯いたまま首を振ると、ツインテールが私の鼻先を掠る。良い匂い…高級な匂いだね。髪油は何を使っているのかな。気になる。
「私は、帰れない。ここに見捨てられたら修道院へ行く事になるから……」
話が急に重いな。
ウルウルして、心細いんだね。修道院送りは嫌だよね。
私もいつ修道院送りにされるか気が気じゃなかったから、気持ちが解るよ。
しおらしくなっちゃって……よしよし。抱き締めて頭を撫でると、声を殺して泣いている。
あの時の態度は、ヘルちゃんが全部悪いとは思わない。
ヘルちゃんの周りの大人が悪いんだ。城という閉鎖的な空間で凝り固まった思想を教えられたらわがままにもなるし、平民を見下す事もある。
良い機会だから、色々な思想に触れて欲しいな。
……とりあえず私がアスティだという事を伝えないと、色々と手遅れになるな。いや普通に気付くだろ。
現にもう、ヘルちゃんは私の匂いを嗅いでいる。
すーはーすーはー聞こえるんだよ。耳元だから。
どうしてみんな私の匂いを嗅ぎたがる……最近花油を作っているからか。
「ところで、ヘルちゃんはパンパンで働くの?」
「う、うん。一から学ぼうと思って」
「応援しているよ。学校は?」
「学校は…今まで通り…貴族学校に通わせて貰えるけれど…はぁはぁ」
ヘルちゃんの息が荒くなってきた。
離れよう。……離して。
駄目よ。心細いのは解るのだけれど離してくれないと私も匂いを嗅いでいる状況だから……あれ、良いのか。
リアちゃんが写真の魔導具を持ってニヤニヤしている。趣味全開ですね。
ヘルちゃんが顔を赤くして瞳を潤ませ私にしがみついている状況。とりあえず肩から上を離して、ヘルちゃんと至近距離で見詰め合う。
おい、目を閉じてアゴを上げるな。
チューはしないぞ。
それよりも店員さん達がワクワクしながら私達を見ている。
仕事しなさい。ロンロンの店員さんを見習って。
レーナちゃん、ハンカチを噛んでキーッてしないで。それする人初めて見た。
いや、なんだよこの状況。
完全にチューする雰囲気じゃないか。
女子率百パーセントのこの場所では、下手な演劇よりも刺激的か。
私としては大歓迎なんだけれど、相手は第二皇女だよ?
色々な問題に発展するよ。と思ったけれど……女の子同士だからしないか。
私が男だったら皇女に手を出したとされて色々な責任が付いてくる。
でも私は女の子だから諸々にカウントされないという謎。そこら辺の法が整備されていない事をリアちゃんも解っている。策士か…違うなただの愉快犯だ。
という事でチューしました。と言っても軽くだけれど。
店員さん達の黄色い歓声が響き渡り、ハイタッチをしている。仲良いな…いや仕事しろよ。レーナちゃん……結局鼻血出して喜んでいるんじゃん……
「あれ? ヘルちゃん?」
「ふふっ、気絶しちゃったわねー」
ドキドキのオーバーフローという奴だね。
リアちゃんはこれが見たかったのね。ムルムー、ごちそうさまでしたって言わないで。
満足した様子のリアちゃんがヘルちゃんを抱えて二階へ上がっていった。
結局私がアスティだって言えていない。
まぁ…次に会った時に言おう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます