アホなんですか?

 

 経済界の英雄かぁ…ミーレイちゃんの家、アズリード家はどういう立ち位置でリアちゃんと接しているのだろう。

 ミーレイちゃんは将来お店の一つくらいは継ぎたいと言っていたから、リアちゃんと顔見知りなのは良い事なのかな。


 そんな事を思いつつ、魔物学の講義を受けている。


 結局リアちゃんは戻って来なかったから、仕方無く新作パンケーキを食べて帰ったけれど……


 ベラは毎週水の日に基礎から学ぼうという事に落ち着いた。

 呼吸法、立ち方、身体の使い方から順番に。



「えー…最近…魔法生物が合体し、ランクCからS相当に成る事案が発生した。ランクCの魔物と関わる事は無いとは思うが、もし魔法生物だった場合は心に留めておいて欲しい」


 青トカゲさんの事だね。

 ちょくちょく倒しているから、私の貯金が潤ってきた。

 フーツー王国に、お金を返さなければいけないからね。

 別に返す義務は無いのだけれど、王女に使ったお金が無駄になった訳だから。不義理は駄目かなって。


 ムルムーに頼んだら、結構な金額になりそうだから計算してみるとの事。目算で黒金貨三十枚…半分以上が人件費らしい。

 ムルムーが給料貰いすぎなんだよ。月給で白金貨二枚とか平民一家族が一年暮らせるぞ。


 一応ムルムーには、一日一時間くらい会っている。

 ムルムーの良い所は、付かず離れずの距離感が絶妙な所。

 流石は元王女専属侍女。私の生活を察して上手く行動している。


「現在調査中だが、全ての属性の魔法生物が合体するなら…魔物のランクが変わったり、教科書が変わるから覚えておいて欲しい。現状は今まで通りだから」


 そういえばテストの結果ってどうなったんだろう。

 あっ、職員室に行けば良いか。


「アレス、そういえば剣技大会で活躍した奴の中にアレスが居たって噂になっていたけど本当?」

「同じ名前の人は多いからね」


「でもフラムと一緒に座っていたって聞いたぞ」

「あぁ…気のせいじゃない?」

「まぁアレスに限って無いか」


 ティーダ君、久しぶりだね。いや毎週会っているから久しぶりという訳ではないけれど、私の認識外に居たから…ね。

 まだフラムちゃんが好きなの? 違う…ほうほう。

 今のトレンドは天使ちゃんとな。

 天使ちゃんと言えば、私。目の前にいるぞー。


 でも最近天使ちゃんを見掛けないらしい。そりゃフラムちゃんが皇城へ指南役に行き、ミーレイちゃんは午後の講義や委員会があるという結果…ボッチの天使ちゃんは姿を現さずに帰るからね。


「学園祭の美少女グランプリ予選に出て欲しかったなぁ……」

「なにそれ? 誰が出るのさ」


「思い出になるからって六十人くらい出るよ。天使ちゃんが出たらダントツなのに…」


 へぇー。可愛い女の子を眺める大会ねぇ……予選だから学校規模だもんね……新鮮味に欠けるというか……本戦なら観に行きたい。

 構成は剣技大会の美少女版だね。良いね良いね。良い事聞いた。

 帝国美少女グランプリ……響きが最高だね。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 学校帰りは、いつものパンケーキタイム。

 バックヤードでムルムーと雑談しながら、パンケーキを食べるという日課をこなす。

 店員さん達も私とムルムーは姉妹という認識だから、こういう時はそっとしておいてくれる。

 ムルムー少し太った? いや違うな…出会った時は痩せていたから元に戻りつつある訳か。


 食べ過ぎないでね。賄い料理ってどんなものを食べているの?

 ……えっ……ロンロンの料理……嘘だろ……私にもくれよ。

 ……ムルムーが帰って来ない理由が解った……美味しい晩御飯を食べてお風呂に入ったら、後は寝るだけ……くそっ……羨ましい!


「リアちゃん、私も晩御飯はロンロン料理が良いです」

「アスきゅんが食後のデザートになっちゃうよ……私の」


 背後に忍び寄っていたリアちゃんが、私の頭皮の匂いを嗅ぎながら話し掛けて来た。髪の毛ならまだ解る…でも頭皮はやめて。


「昨日の件はどうなったんですか?」

「完全勝利」


 だろうね。

 詳細を……うわ。


 あれから出て行って直ぐ…で皇城の謁見の間へ直接行くというブッ飛んだ事を行い……

 呆然とする皇女さんを尻目に、顔が引きつっている皇帝に事のあらましを説明。

 帝国とは縁を切ると宣言し、ゆっくり歩いて謁見の間から出ていくというドS。


 そして追い縋る皇帝から戦利品をぶん取るという鬼畜。


 その結果……



「アスきゅん、好きにして良いよ」

「……アホなんですか?」


 戦利品……第二皇女。


「……よろしく頼むわ」


 いらねえよ。名前も知らねえし。

 ……何? ツンデレ枠?

 もしかして…わざと狙ったな。

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