挨拶回り。

 次の日、学校は休んでムルムーの引っ越しや買い物に行く。


「ムルムー、おはよー」

「ひ…アスティちゃん…ここ、下がパンケーキ屋さんだから、お腹空いちゃう…」

「じゃあ…朝ごはん食べて行こっか」


 朝からパンケーキ。贅沢な朝。…ここに住みたいんですけど…



 お花屋に到着。


「アスティちゃん、ここが二人の愛の巣だね」

「いや、店長居るし……あっ、てんちょー!姉のムルムーです!」

「あらん!可愛いお姉さんねぇ!」

「はじめまして、ムルムーです。妹がお世話になっております。これから私もお世話になりますので、よろしくお願いいたします」


 綺麗に一礼。

 流石は元王女専属侍女。店長相手に怯まない。

 直ぐに世間話に移行して、会話に華を咲かせている。

 …なんかもう店長なら元王女って言っても良い気がするな。ムルムーの所作を見て何かを感じた様子だし。


「お姉ちゃん、荷物運んでおくねー」

「ありがとうー」


 ムルムーの引っ越しは直ぐに終わった。

 荷物を収納に入れて出すだけだからね。

 私の部屋の隣がムルムーの部屋。

 寝る時は一緒だから…もう寂しく無い。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 その後は、ムルムーを連れて必要な物を雑貨店で購入。

 帝都の案内も一緒にした。

 ムルムーは化粧をすると、私に似てる。リアちゃんが教えてくれた整形メイクって奴らしい。私もリアちゃんに教えて貰おう。


 ムルムー美人だから、みんな振り向いてくる。化粧をしているから大人っぽいし…おっぱい大きい…色気あるね。因みにムルムーはまだ15歳。来年高等部の予定だったけど…行かないの?勉強したくないから嫌?そう…


 とりあえず中央区へ行き、特事班の詰所へ。


「こんにちは、ミリアさん」

「あらアスティちゃん。ん?お姉さんかな?」

「はじめましてムルムーと申します。妹がいつもお世話になっております」

「いえいえこちらこそ、お世話になりっぱなしで…いやぁ…美人姉妹ねぇ…お姉さんモテるでしょ?」

「ええ、モテモテで困ってしまいまして…妹の所に逃げて来ました」

「ふふっ、大変ねぇ。良かったら力になるわよ?」

「その時はよろしくお願いいたします」


 凄い。みんな本当の姉妹だと思ってくれている。

 ムルムーはロバートさん、レジンさん、クロムさんに挨拶。

 …クロムさん、デレデレしてんな。ムルムーの営業スマイルは完璧だからね、仕方無いね。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 …割りと早く予定が終わってしまった。

 特事班を出て、『パンケーキのお店パンパン』へ。


 裏口から入り、執事服に着替えてカウンターへ。

 もう私の着替えるコーナーが設置してあったのは目を瞑ろう。

 ムルムーはリアちゃんと一緒に並んでカウンターに座っている。


「リアちゃん、お化粧教えて下さい」

「良いわよ。化粧品もこの世…帝都には無い品だからあげるね」

「ありがとうございます!…あの、あと…無元流も教えて欲しくて…」

「…どうしよっかなぁ」


 悪戯な笑みを浮かべて、リアちゃんは舌舐めずりをしている。

 身体で払ってくれるなら良い?ムルムーを好きにして良いですよ。


 えっ?…って顔しないでよ。お世話になったんだからリアちゃんの補佐ぐらいしたら?私も一緒じゃなきゃ嫌?私はムルムー養わなきゃいけないから忙しいんだよ?


「アスきゅんも一緒が良いなぁ」

「アスティちゃんと一緒が良いなぁ」

「……」

「アスきゅん居ないと寂しいもん」

「アスティちゃんともう離れたく無いもん」

「……」

「リアさん…奥の手…」

「…アスきゅん知ってる?おっぱい大きくなる方法…」

「ふっ、仕方無いですね。そこまで言うなら行きましょう」



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「テレポート」


 という事でやって来ました。


 未開の地。


 ここ何処ですか?最果て?



「じゃあ、新作パンケーキの為に…材料集め、手伝って」


『ギャァオオオオオ!』

「「……」」


 何か強そうな魔物の咆哮が聞こえましたけど…本当に材料あるんです?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る