ひめさまぁ…また妄想ですかぁ?
「ひめさまぁ…ひめさまぁ…」
抱き締められながら、あと針に刺されながらムルムーと話を進めないと、日が暮れるな…
「ムルムー、私はもう王女じゃないの。死んじゃったから」
「嘘です…今ここに居るじゃないですかぁ…ひめさまぁ…」
「いや、アレスティア王女は死んで…今ここにいるのは、アスティっていうただの女の子なの」
「何言っているんですか?また妄想ですか?」
理解してくれ。頼むから。
誰か援護してくれー。おっ、爺やよろしく!
「侍女ムルムー・ロレンタ」
「……」
おい、無視すんなよ。上司だろ。
爺やの顔が引きつっているじゃないか。
「ムルムー、爺やの話を聞いてあげて?」
「……嫌です」
わがまま言わないの。
もう侍女を辞めたから、話す義理は無い?
爺やの事、嫌いだったの?笑い方がキモい?まぁそうだけどさぁ…
「ちゃんと話聞かないと、日が暮れて私は帰るよ」
「__ディアス室長、何です?」
「…アレスティア王女が亡くなられた事実は変わらない。そこに居るのは…平民の女の子だ」
「お城に行って報告すれば良いじゃないですか?」
「それは出来ない」
「なんで?」
「戦争が起きる」
「……?」
ムルムーは首を傾げる。
王女が戻ったら皆嬉しいに決まっているじゃん!という顔だけど…爺やが根気よく説明していく。
リアちゃんから事情を聞いたんだね。
なら爺やも味方か…少し安心。
……
やっとムルムーが話を飲み込んだみたい。
そうそう。私はただの女の子ですよ。
何?呼び方?ティアたんは駄目。アスティでよろしく。
ティアたむは駄目。アスティでよろしく。
ティアきゅんも駄目。
そもそもティアは王女の愛称だから駄目。
ティアたんってずっと呼びたかったの?…じゃあ二人の時にね。それ以外はアスティでよろしく。
「という事で、私はムルムーを雇いに来たの」
「_はい!…あっ、でも…私こう見えてご令嬢なんですよ」
まぁ…そうだよね。ロレンタ子爵家の長女だから、平民に雇われるなんて難しいか。
んー…表向きはリアちゃんの元で働くのは?良い?
…ヒルなんとかさん直属の部下なら、今すぐでも連れて行ける?すげぇな。
「じゃあディアス、解っているわね」
「はっ!お任せ下さい!」
爺やが各方面に、ムルムー・ロレンタはヒルなんとかさん直属の部下として雇われるという書状を出すみたい。
婚約者にも出すって…えっ?ムルムー婚約者居たの?
「居ましたよ。私は意外とモテモテでしたし」
「そうだよね。ムルムー可愛いし王女専属侍女だしモテるか。…どんな人?」
「ヤクス侯爵家のリグライ君です。同級生ですね」
淡々と答えているけど…別に好きでもないから良い?…そうですか。
「じゃあまた今度迎えに来るね」
「__えー!連れて行ってくれないんでぃすかぁ!?」
「受け入れ準備もあるし、泊まる所無いよ?」
「ひめさまのお家は!?」
「私は部屋を借りてるから、家主に聞いてみないと駄目なの」
「じゃあ『パンパン』の二階に泊まる?部屋空いてるわよ?」
えっ?私も泊まりたい!可愛い店員さん達とイチャ…げふん、仲良くなれそうだし!
争いが起きるから駄目?なんでさ!
…リアちゃんと睨み合っても仕方無いので、ムルムーには準備をしてもらう。
私は地味眼鏡を装着。
エルマーさんを呼んで、ムルムーがヒルなんとかさんの部下になる事を説明。ムルムーが元気になった事の方を喜んでいたのが印象的だった。
ロレンタ子爵家を出て、王城へ。
一応帰るよーと言わないと面倒だからね。
外交官の人が、王族との会食をセッティングしてくれたけど、私の精神が持たないのでお断り。
やたら引き留められたけど、リアちゃん美人だからね。
縁談に持ち込もうとしているのかな?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『パンパン』の二階。
リアちゃんの部屋に、私、リアちゃん、ムルムーが転移してきた。
「リアちゃん、本当にありがとうございました」
「良いの。
私はずっと誘拐や暗殺の危機があったらしい。
急な体調不良もそのせいかと納得。
最後の最後で、皇子の身代わりに殺されちゃったという事か。
因みに、リアちゃん曰く黒騎士はアース王国の者らしい。
私との婚約を破棄させる為に、皇子を少し傷付けてフーツー王国の信用を落とすつもりが、誤って王女を殺してしまった。
実行犯は心を病んでいそうだというけれど、殺すつもりの無かった王女を殺してしまったから、確かにそうだとは思う。
結果オーライって事で。
…でも私が見た映像は…まぁ…良いか。
「じゃあムルムー、今日はここに泊まってね」
「いやー!ひめさまと居るー!」
「わがまま言わないの。それに、『お姉ちゃん』になって貰うんだから、『ひめさま』は封印」
「…お姉ちゃん…ふへへ」
とりあえず私の現状を説明していく。
アスティ、アレス、レティを使い分けている事や、職場や行動パターン。
「よろしくね。お姉ちゃん」
「…ひめさまぁ」
「…アスティでよろしく。敬語も駄目」
「…アスティたん。わ、分かったよ」
ムルムーには、私の姉になって貰う。
雇っているとは公言出来ないから。
そういえば給料どうしよっか。侍女の時は?一ヶ月で白金貨二枚?貰いすぎじゃない?私の給料…金貨二枚ちょいだよ?
まぁ魔物を倒せば余裕だけどね。
「アスティたんに養って貰えるなんて…幸せ」
「ムルムーは働かないの?」
「……」
「働かないの?」
「…身の回りのお世話はする」
「…ムルムーとお揃いの可愛い制服着たいなぁ…」
「ふっ、働きたい気分になってきた」
…姉妹って言っても全く似ていないんだよなぁ。
ムルムー、人懐っこい顔だから…化粧で寄せるの?化粧した顔は見た事無いけど…リアちゃんも手伝う?
あと、髪の毛の色も違うし。
私は銀色、ムルムーは白っぽい金色。それは有りか。
一応店長に聞いてみようかな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あら、良いわよん?使っていない部屋あるし」
「あっ、ありがとうございます!でも良いんですか?」
「良いのよん。最近彼氏の家に泊まっているから、あまり家には居ないのよね。むしろ誰かが居てくれた方が助かるわ!
じゃあ物置の部屋空けるわね!」
店長は快諾してくれた。
そういえば最近、家に一人だったな。そういう事か。
…彼氏ってどんな人です?
受けも攻めも出来るイケメンエリート?
…逸材ですね。
「そうそう、アスティちゃんが良く行くお店…『パンケーキのお店パンパン』ってあるでしょ?」
「あっ、はい。どうかしました?」
「従業員が多くなり過ぎたからって、うちの店にも従業員を派遣して貰える事になったのよ」
「へぇー、交流あったんですね。私は大歓迎ですよ!店長の仕事も楽になりそうですし」
「ふふっ、そうなのよ」
可愛い店員さんに囲まれる…なんて素晴らしい。
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