やってきました。フーツー王国。
リアちゃんは、気持ちを落ち着かせるのを待っていてくれた。
「じゃあ行きましょうか。魔物を倒すんです?」
「うん。闘うアスきゅんを映像に残さないと!」
なんですかそれ? 映像を記録出来る魔導具? いや、恥ずかしいです。…泣きそうな顔をしないで。…仕方ない。
…オーガを発見。
スタスタと近付いて…
「――首狩り」
スパンッ――オーガの首が飛ぶ。
…こんなんで良いです?
もっとちょうだい?
Bランク、ストロングオーガを発見。
駆け足で近付いて…
「――乱れ桜」
ザザザザ!――
ストロングオーガを細切れに。
こんな感じ?
次は魔法?
Aランク、デスグランドオーガを発見。
ライトを複数飛ばして魔力を練る。
「――ソルレーザー・ラン!」
キイィィン!――
デスグランドオーガを光の柱で吹き飛ばした。
どうです? 可愛い?
ありがとうございます。
「…アスきゅん」
「なんです?」
「ディアスは今でも元気?」
「……ええ。まぁ…元気ですよ」
……リアちゃんってたまにクリティカルヒットを私に当てて来る。
何? 普通に返事しちゃったけど…爺やと知り合いなの?
…秘密? もう、秘密を抱えるリアちゃんは可愛いですね。
「ディアスには、お仕置きをするとして…アスきゅんは、奥義使える?」
「無元流の…ですよね。教わる前に、出て行ったので…使えません」
「じゃあ、やってあげる」
そう言って、リアちゃんが何処からか剣を取り出す。
…綺麗な剣ですね。透明でキラキラして…お高いんでしょう?
…少し待っていると、ドタドタと黒い人影。
Aランク、デスグランドオーガが走ってきた。
…ワクワクする。
無元流の奥義を見られるなんて。
リアちゃんが剣に魔力を込めると白く輝き出した。
ライトソードかな?
軽い足取りで、デスグランドオーガに向かい…
「見てて――光華一閃…」
高速で走り抜け、光を纏う刃を振り抜く。
遅れて光の刃が多数出現した。
デスグランドオーガの正面に突き刺さる無数の刃。
「――逆光の太刀…」
後ろから正面に駆け抜け、
返す刃で同じ軌跡を生む。
更に後方から光の刃が突き刺さり、
正面から、後方からと光の刃が交差。
光の華の様に輝いている。
「――奥義・閃華」
ボボボボ!――光の刃が次々と爆発。
光の華が散り、デスグランドオーガは粉々に吹き飛んだ。
光の花びらがキラキラと舞い降り、リアちゃんの元へと降り注ぐ。
綺麗だなぁ…天使みたい…
……いやいやいやいや。
これを剣技と言って良いの?
かなり魔法寄りだよね…
リアちゃん、どや顔も可愛いですね。
でもちょっとこれは難易度高いです。
もっと簡単なの無いです?
リアちゃんがウーンと考え、何か閃いた様子。
また見ててと言いながら、魔物が来るのを待つ。
…またデスグランドオーガ。多いな。
距離はまだ離れているけど…
「――縮地」
え? 速い…一歩進んだだけに見えたのに。
オーガも驚いている。
「――断罪滅殺」
バシュン――
えっ、オーガが消えた…いや、この黒い水溜まり…うわ…
見えなかったんですけど。
ちょっと…リアちゃん…強すぎですよ…
「アスきゅん。頑張って」
「…いや、見えなかったんですけど」
「見えないくらい速く…だよ」
それが解らないから言っているんですけど。
何? 千里の道も一歩から?
まだ身体が出来ていないから無理かも? …なるほど。
「奥義はまだ私には早いかもしれません。あの、無元流って元々魔法ありきの剣技なんですか?」
「そうだよ。ディアスは魔法の素質が無かったから、アスきゅんには魔法剣の基礎を教えられなかったのね」
「……」
色々と突っ込み所が凄いけど…
爺やが城に勤めてから三十年以上…もしかしてその前に会っていた? いや、そしたらこの若々しい姿はなんだ。
…あれ? 色々すっとばすけれど、リアちゃんに転移で王国まで送って貰えたら話が早い?
「あの、リアちゃん…」
「良いよ」
「…まだ本題を言っていませんよ」
「アスきゅんの頼みなら何でもござれ」
…なんでそんなに良くしてくれるんですか?
…秘密? なんか目が泳いでますね…
何を隠しているんですか?
…リアちゃんの瞳を凝視する。
吸い込まれそうな瞳…綺麗だなぁ…どんどん近付いてしまう。
……ん? 目の中に…魔方陣? …気のせいか。
…あの、リアちゃん…チューする訳じゃ無いよ。
チューしたいんです? 旦那さんとして下さいよ。
今出張中だから良い? その発言はどうなんです?
「…やっぱりチューしてくれないと、頼み聞かない」
「…仕方ないですね」
チューしたけれど、こんな美人とチュー出来るなんて役得だ。これをおかずに素パンを十枚は食べられるよ。
「今度はアスにゃんでチューだから。で? 転移でどこに行きたいの?」
「フーツー王国の王都なんですけど…リアちゃんも着いて来て欲しいなって…」
王女なのはどうせバレているので、私の元専属侍女を雇いたいという話をする。
爺やに言えば大丈夫だと思うけど…私は顔出しダメだから、この場合…リアちゃんにおんぶに抱っこ状態だね。
「良いよ。ディアスには会いに行く予定だったし」
「あ、ありがとうございます!」
リアちゃんはあっさり了承。
優しいね。下心を見なければ。
リアちゃんの谷間に挟まれながら、転移でリアちゃんの部屋に戻る。便利だね。
リアちゃんが『じゃーじ』を脱ぎ、仕立ての良い服に着替えていく。良い身体してるなぁ…何歳なんです?
え? 秘密? 今…覚えて無いって言いましたよね。聞こえていましたよ。
「アスきゅんは、これに着替えて」
「あぁ、執事服ですか…」
最近着なれた執事服。地味眼鏡をセット。地味執事の完成。
リアちゃんは…どこのお姫様ですか?っていうくらい完璧。
薄いピンク色の髪と、同じ色のドレス。
既婚者だから、ちゃんと肌は隠しているけど…
その美しい二の腕をたむたむしたいです。
か、帰ったら良い? ぜ、是非!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
という事でやって来ました。
懐かしのフーツー王国。
といっても三ヶ月くらいなんで、久しぶりな感じは無いけれど。
「なんか緊張しますね」
「緊張? 実家なのに?」
「いやぁ…私には居場所…ほとんどありませんでしたから」
「…アスきゅん。大丈夫よ。私が居るから。ちゃんとディアスはボコボコにするから」
「リアちゃん…ありがとうございます。でも真剣な顔でお尻触らないで」
今、私とリアちゃんは、かなり豪華な馬車に乗っている。
…城の馬車より豪華だ…凄い…
パカパカ馬が豪華な馬車を牽いているけれど、この馬…馬車と一緒に出しましたよね? ゴーレム? えー…
あっさり城門に到着。
以前私が追い返された場所。
…あれ? 確認無しで通された。
なんで? 身元確認いらないの? 特別? 凄いですね。
城の駐車場に到着。
私が先に降りて、リアちゃんに手を差し出してエスコート。
一応私はリアちゃんの従者役なので…リアちゃんはご満悦な表情。
リアちゃんが降りると、メイド達が一斉に現れ、左右に並びメイドロードが出来上がる。
壮観だ…私の時は無かったよ。城の裏口で出入りしていたからね。
メイドロードの先には、外交官の偉い人。
名前なんだっけ?
まぁいいか。
リアちゃんが先頭を歩き、私はその後ろをトコトコ歩く。
「よ、ようこそおいで下さいました。ヒルデガルド・ルイヴィヒ様…」
「ええ、急に悪いわね。ディアボロス・アタラクシアに会いに来たのだけれど…居るかしら?」
「はっ! ただいま呼びます故、客間にてお待ち下さい…」
…リアちゃん…名前かすりもしてないじゃん。
え? 偽名なの? 本名は? ……教えてよー。
じゃあリアちゃんはお偉いさんなんです?
大口の出資者? なるほど。
客間に通され、リアちゃんは優雅に座り、私はリアちゃんの後ろに立つ。
王女じゃない扱いは新鮮だね。
何気に客間に入るの初めてだなぁ…私に来客なんて来なかったし。
まぁ、モテモテだったから牽制し合って誰も来ないか…
「アスきゅんは戻る気無いの?」
「最近までは戻ろうかと思っていましたが、今は全く無いです。私は争いの元らしいので」
「世界一可愛いもんね。先祖返りまでしてるし、戻ったら内乱どころか戦争が起きるもんね」
今なんて? 先祖返り? 凄い気になるんですけど…
教えてー。今度? 絶対ですよ!
リアちゃんと雑談していると、客間の扉が開く。
メイドさんと共に、執事服に身を包んだ、白髪におひげが似合うおじいちゃん…爺やがやって来た。
凄く緊張しているけど、こんな爺や初めて見たな。
「お久しぶりでございます。奥方様」
「久しぶりね。で? 私に言う事は?」
「申し訳ありませんでした…お詫びに…私の首を落とし下さい」
その場に跪き、頭を下げて謝る爺やに困惑する。
どういう事ですか?
リアちゃんは腕を組んでその様子を見据えている。
困惑するメイドさんと私。
目が合った。
どういう事って目をされても…私も解りませんよ?
リアちゃん…黙ってないで説明して下さいよぉ…
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