私は自慢の娘だったのかなぁ…

 

 ミーレイちゃんは、あの後家まで手を繋いで送ってあげた。


 告白はされたけど、付き合うとかはしない。

 良家のお嬢様だから、門限があるし、誰かと付き合う事は難しい。


 …最近気付いたけど、私は男でも女でも恋愛対象になるかもしれない。

 バイセクシャルという奴なのかな。

 原因は薄い本の影響が強いと思うけど。


 とりあえずはまぁ…今まで通りという事で。


 でも、心の距離は縮まったかな。


 ググッとね。


 …その内お部屋に招待しよう。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 次の日、土の日は国語の講義。


 六年二組の教室へ。


「ようアレス、今日もヤバいくらい地味だな」

「やぁティーダ君、そんなに褒めても何もあげないよ」


 今週から、リアちゃんがくれたニュー地味眼鏡を着用している。


 これはかなり凄い。

 オンオフが出来るから、眼鏡を掛けたまま女子にもなれる。

 しかも掛けずに持っているだけで男!っていう雰囲気も作れるし、解析無効。

 かなり頑丈だし、他にも色々機能が付いている。

 おいくらなんでしょう?

 絶対高級品だね。

 本当にリアちゃんは何者なんでしょうか。


 クラスの話題にはフラムちゃんの名前が出る。

 そりゃ、皇女の剣術指南役に抜擢されたからだけど、フラムちゃんが少し遠くに行ってしまった気がする。


 先生が連絡事項を伝えている。

 相変わらずラジャーナでは無茶をする新人が居るみたい。困ったもんだ。

 後は、もうすぐテストがある事と、その後に学園祭がある事かな。



 私は、学園祭に出ない。

 仕事なんで。

 …いや、だって、私が学校に来る前に役割とか決まっていたし、ボッチの学園祭とか苦痛以外の何物でもない。

 フラムちゃんは色々忙しいから一緒に回れないし、ミーレイちゃんは一組の活動があるから一緒に回れないし……詰んだっしょ。


 学活が終わり、国語の講義室へ。



「おはようミーレイちゃん」

「おはよう。アレス君」


 今日も美人可愛いミーレイちゃんが隣に座る。

 ご機嫌だね。

 ちょっと近いよ。駄目だよ今は男子なんだから。

 ほら、前の男子達が睨んでくる。

 …私は女の子だよー。


「おはよう、アレス君」

「おはようフラムちゃん。昨日は大丈夫だった?」

「うん!皇女様達とお友達になれたの!」


 凄いね。達だって。一日で何人友達増えたの?10人?…いやぁ…凄いね…ほんと。

 良かったね、フラムちゃん。忙しくなるけど、将来安泰だよ。


 ふと、フラムちゃんが何かに気付く様にミーレイちゃんを見る。


 じーっと見詰め合う二人。何かアイコンタクトをしている…あの、私も混ぜて欲しいな。


 そして、二人は立ち上がり……抱き締め合った。

 …あの…何か友情が芽生えたの?私も混ぜてよ……



 講義が終わって、フラムちゃんは寂しそうにお城に向かっていった。

 お城の訓練場で皇女さん達に剣術指南。教えるのは帝国流剣術なので、無元流は教えない。


 またね、明日会えるからね。



「ミーレイちゃん、またねー」

「まっ、待って!」

「ん?どうしたの?」

「一緒に帰ろ?」

「ナナリーちゃんは?」

「ナナリーは彼氏と帰るから、私は一人なの」


 ほうほう。ミーレイちゃんは一人とな。

 じゃあ帰ろう。

 男子諸君。すまぬな。

 ミーレイちゃんは私が好きなのだよ。


 …まぁ、男子達と張り合っても仕方無いんだけどね。


「ちょっと校門で待っててね」

「うん!」


 ミーレイちゃんには先に行ってもらう。

 死角で地味眼鏡を外して、校門へ。


「お待たせ」

「ふふっ、嬉しいな」


 なんか凄いざわざわしている。

 ミーレイちゃんに彼氏が出来たって騒いでいる女子達…一組の女子達かな?

 男子達から絶望が漏れている。まぁ、美人可愛いし良家のお嬢様だからモテるか…


 いや、彼氏じゃないし。

 …ミーレイちゃん、手を繋いじゃ駄目だよ。

 …幸せそうに笑うから手を離せないじゃないか。


「ミーレイちゃんってモテるんだね。告白とか結構されるの?」

「うん。まぁ、されるよ。でもアスティちゃんの方が凄そう…」

「私は全然だよ。男子からまともな告白なんてされた事無いし」


 ミーレイちゃんは驚いているけど、特に男子からは無い。

 あぁ…お花屋さんで邪魔してくる男子は論外。

 バランとか、あれは告白じゃなくてナンパだし。


 なので、男子からの告白はありません。

 女子にはモテるから、今はそれで充分。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「いらっしゃいませー!はい!こちらです!お友達はカウンターへどうぞ!」


 ミーレイちゃんとパンパンに来店。

 私は連行され、ミーレイちゃんはカウンター席へ。


 リアちゃんにあれよこれよされ、執事服を着てカウンターに立った。


「ミーレイちゃん、何にする?」

「……ぁぅ」

「じゃあフルーツパンケーキセットにしよ」


 バックヤードへ行き、注文を待っていたレーナちゃんのリクエスト。耳元でささやく。


「レーナ、フルーツパンケーキセットだ。俺の為に…美味しく作ってくれ」

「__キャー!喜んでぇ!」


 なんなんだろうね。このリクエスト。

 いや、解るよ。私もこういうの好きだから解るんだけどさぁ。

 結構刺激が強いから、恥ずかしいんだよ。



「頼んできたよー」

「…アスティちゃん。裏で何してたの?」

「何って店員さんに注文しただけだよ」

「……その注文…私にもやってみて」


 えっ、それは恥ずかしいんだけど…

 刺激が強いかもよ?良い?お客さん居るから声出さないでね。


 …届かないから、ミーレイちゃんに身を乗り出してもらう。

 そうそう。ちょっと我慢してね。


「ミーレイ、フルーツパンケーキセットだ。俺の為に…美味しく作ってくれ」

「___っ!」


 ミーレイちゃんが顔を抑えて悶絶している。

 だから言ったじゃん。

 水飲む?


「……アスティちゃん…それ、毎回やってるの?」

「毎回というか、リクエストにお応えする形だから日によって違うと思うよ」

「他には?」

「やって欲しいの?」

「もちろん!」

「……恥ずかしいから、今度私の部屋に来る?そこでなら良いよ」

「ぜ、是非!」


 よし、美人可愛いミーレイちゃんを部屋に連れ込める。

 お泊まりって出来る?身元がしっかりしてれば?大丈夫。過去はアレだけど、身元はしっかりしているよ。

 明日暇だったらお花屋さんに来る?フラムちゃんも居るよ。


 何?浮気?違うよ。誰とも付き合っていないし。

 ナニもしないよ。多分。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 次の日。

 お花屋さんの仕事。


 フラムちゃんと共に開店準備。


 えっ……今日はお泊まり出来ないの?

 午後からお出掛け…じゃあ今日はお昼までだね…

 皇女?違う?パパママとお出掛け…なら仕方無い。

 商業都市ライネにある、フラムパパの実家に行くらしい。


「ごめんね、アスティちゃん」

「ううん。報告大事だもんね!」


 皇女さんの剣術指南役になった事を、親戚に自慢するんだね。

 そりゃ、皇女さんと関われるなんて、自慢の娘だよなぁ…



 私は自慢の娘だったのかなぁ…


 ……と思ってみたけど…それは無いな。


 帝国のご機嫌取りの道具だった訳だし。

 あっ、ちゃんと裏付けも取れていますよ。


 王妃は愛の無い結婚。

 それぞれ本命の相手も居た。

 兄と私を生んだら、役目は果たしたとそちらの方に行ったみたいだし。

 抱っこされた事もなければ、手を繋いだ事すら無い。


 別に、私はそれを悲観する事は無い。

 王族なんてそんなもの。

 血を繋ぐ事が大事だから。


 それにお姫様の生活なんて、物語で書いてある華々しい感じじゃない。

 見栄と陰謀が渦巻くなんとやら。

 私は早々に離脱出来て幸せです。



 とまぁ、そんな事を考えながらフラムちゃんと接客中。


「いらっしゃいませー」

「フラムちゃん!帝都大会おめでとう!」

「あっ、ありがとうございます」

「孫がフラムちゃんのファンなのよ!良かったら話してあげてね!」

「は、はぁ」


 いつものおばちゃんがフラムちゃんに絡んでる。

 フラムちゃん嫌そうだな。

 お客さんの頼みとか断りずらいよね。

 孫って確か同世代の男子…そりゃ嫌か。



「いらっしゃいませー…あっ、ミーレイちゃん」

「……かわ…いい」

「ミーレイちゃん?」


 美人可愛いミーレイちゃんが来店。

 ふふっ、今日は…ゆるふわコーデなのです。

 まぁ…ふんわりした格好をしてます。

 ふんわりです。お揃いです。


「あっ、ごめん。凄く可愛いから…フラムちゃんも、可愛いね」

「ありがとう。ミーレイちゃんも似合うと思うよ」

「そうね。似合いそう。ミーレイちゃんも私みたいに、闇の日だけ働いてみる?」

「闇の日だけかぁ…」

「働いた後はねぇ、お泊まり会してるんだ!」


 お泊まり…初耳…そう呟いたミーレイちゃんの目が見開き、フラムちゃんを見る。

 フラムちゃんがそっと目を逸らした。

 ……また目で会話してる。混ぜてよー。


 …フラムちゃんとミーレイちゃん…二人で居る時はどんな会話してるんだろう。


「…今日も?」

「今日はフラムちゃんがお出掛けするから、私一人なんだ。……ミーレイちゃん。今日…泊まりに来る?」

「__行きますとも!」


 お、おぅ……ちょっと家まで確認してくるとの事。

 あっ、店長が何か紙をくれた。

 ミーレイちゃん、これ店長から。

 ……これを見せればお泊まりの確率上がるってどんな紙だろ?



 まぁ、何はともあれ…ミーレイちゃんが泊まりに来るかもしれない。

 やったぜ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る