帝都大会。もっと頑張ってよダグラス君。
やーだー!
かえりたーい!
……
とりあえず、ダグラス君を恨むとしよう。
でもまぁ、みんなが勝てば闘う事も無い。
そう…私は置物。飾り物。展示物。空気女。地味女。
現在騎士団枠の補欠選手席に座って、試合の観戦。
他の補欠席は埋まっている。
騎士団推薦チームは人数割れ…だから補欠は居ない…私だけボッチみたいなんだけど……あっボッチか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『男子第一試合!西学校チーム対第一騎士学校チーム!』
『女子第一試合!第二騎士学校チーム対南道場チーム!』
まぁ、出番までボーッとしてよう。
因みに私の学校は西学校。正式にはニートー西学校だね。
男子がんばれー。
トーナメント制だから、一回負けたら終わり。
騎士学校は第三まである。
騎士にならなくても良いけど、騎士学校卒業は箔が付くから多くの人は騎士学校に入る。
魔法系統だと魔法学校。一応魔法学校も出場はしている。魔法大会じゃ無いから直ぐ負けるらしいけど。
道場は、帝国流剣術道場のチーム。東西南北からチームが出る。
まぁ、初等部の試合だから…実力差は無い様に思えるけど、騎士学校と普通の学校じゃ違う。
あっさり男子西学校は負けた。
思い出作りがメインだから、悔しがっている人は居ないね。
騎士団推薦チームは八組目。
………
『女子第三試合!西学校チーム対アース王国チーム!』
おっ、フラムちゃんだ。がんばれー。
あっ、私に手を振ってくれたけど、他の男子が勘違いしているよ。
アース王国は南にある隣国のチーム。
隣国チームは当たり前だけどレベルが高い。
……
……あぁ、駄目だよフラムちゃん…五人抜きなんて…
張り切り過ぎだよ。
お昼眠くなっちゃうよ。
会場も湧いている。
可愛いくて強い子が瞬殺の五人抜きだもんね。
またお友達増えそうだね。
……
『男子第五試合!フーツー王国チーム対北道場チーム!』
フーツー王国チーム。
何回も予選して選抜されたチームだから、強いのは確かだね。
……
……おお、危なげ無く勝ってる。
ジードは五番目なんだね。闘わずにフーツー王国の勝利。
……
『男子第八試合!騎士団推薦チーム対東道場チーム!』
……がんばれー。おっ、頑張ってる。
……大丈夫?ダグラス君以外そんなに強く無いよ?
あぁ、六年生じゃ無いのか。
確かダグラス君って五年生だから……
がんばれー。おっ、勝った勝った。おめでとう。
……
フラムちゃんは…安定して瞬殺している。
相手選手…木剣だから、ケガは少ないけど…心の傷は深そうだね。
姿が消えたと思ったら背中を攻撃されてるんだから。
フラムちゃん…詰まらなさそう。
普段、私かオーガと闘っているから不満だよね。
あの調子じゃ、今回の帝都大会が終わったらもう出ないだろうな…
……
フラムちゃんチームはかなり順調。
騎士団推薦チームも魔法学校に勝って順調。
フーツー王国と騎士団推薦チームは準決勝で当たる。
準々決勝が終わったら休憩らしい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
…もうすぐ休憩。フラムちゃんが注目の的だね。
男子諸君は、休憩になったらフラムちゃんに話し掛けようとスタンバイ。
『では、15分の休憩に入ります』
わーっとフラムちゃんに向かっていく男の子達。
凄い嫌そうな顔のフラムちゃん。
あっ、逃げた。
…ぐるーって回って逃げ回り…
「アレス君、来ちゃった」
「お疲れ様、フラムちゃん」
笑顔のフラムちゃん。私の隣に座り、腕を組む。
…寂しかったから、来るのは大歓迎なんだけど…なんで公衆の面前で腕を組むの?
付き合っているみたいに見えるよ。
ほら、みんな見てる。
私も女の子だよー
あぁ、男子達の憎悪が凄い。嫉妬が凄い。殺意が凄い。
ダグラス君チームも妬みの視線…同じチームだよ。仲良くしよ?
「なんかみんなの目が怖いから、今回の大会で最後にしようかな」
「まぁ、そうだね。私も出ないかな。終わったら特事班の詰所に居るから…敷地の東側にあるよ」
「うん。終わったらデートしようね!」
公衆の面前だから、無理に話し掛けようとする男子は居ないのが救いだ。
なんとか二人の世界を作って男子達を牽制しているけど、時が経つのが遅い。
観客の人達…ヒューヒュー言わないで。恥ずかしい…
…辺りを見渡すと、フーツー王国チームもこっちをチラチラ見ている。
見世物じゃねぇーぞー…んー?
フーツー王国の女子チームの子が、ジードと仲良さげに話している。
距離が近いな…ほうほう、彼女出来たんだね。
良かったね、ジード。
一般的には、10歳から恋人を見つけ始める。
貴族は初等部に入ったら恋人を見つけ始めるから、早くはない。
今思えば、私が振り回していたから、彼女なんて作れなかったよね…婚約者が決まってからも、隙を見て話していたし…
そりゃ、王女が話し掛けて来るなんて困るか。
嫌でも話さなきゃいけないし…すまぬな。気軽に話してくれたから楽しかったんだ。
もう
…でも、私が死んでどう思ったのかな?
…聞くのってタブーだよね。
自国の王女が死んで…ねぇねぇ、どんな気持ち?って聞かれるの…うん、嫌われるわ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『再開します。選手の皆様は、所定の位置にお戻り下さい』
「またねー」
「行ってらっしゃーい」
休憩が終わり、試合が再開する。
…何?ダグラス君。来いって?あぁ、次は私も居なきゃ駄目なのか。
ダグラス君チームの元へ。
視線が痛い。
「…アレス、あの人と付き合っているのか?」
「…そうだね」
「くっ、羨ましい…」
みんな泣くなよ…
付き合っていると答えないと、フラムちゃんに言い寄る人が居そうだから仕方無いんだ。
フラムちゃん、手を振っちゃ駄目だよ。ヘイトがドバドバ溜まっていくよ。もう仲間割れ寸前だよ。
……
『準決勝!フーツー王国チーム対騎士団推薦チーム!』
轟く歓声の中、舞台の近くまで行く。
私は五番目。
出番が来ない事を祈り、みんなの闘いを見る。
『始め!』
……一番目、あっさりやられたな。
……二番目、ちょっ…負けんな。
……三番目、おい、頑張れよ。
三人抜き…残るはダグラス君と私。
「ダグラス君、五人抜きよろしく」
「いや、無茶言うなよ…もう体力無いんだよ」
まぁ五年生だから、六年生に比べたら差はあるか。
少し諦めムード。
ダグラス君の一戦目。
…上手く躱して突き技。おっ、やるじゃん。
二戦目。
…もう体力無いじゃん。がんばれー。
『ダグラスくーん!頑張ってー!』『負けるなー!』
ほら、友達も応援してるよ。
でも押されてるなぁ……
『五人抜きしたらレティちゃんがデートしてくれるぞー!』
誰や今の!…レジンさん…何言ってんの?
「うおぉぉぉ!でぇぇとおぉぉ!」
…あっ、ダグラス君が雄叫びを上げている。
…おー、勝った勝った。
「次ぃ!」
張り切ってんなぁ…そんなにデートしたいの?
三戦目。
「でぇぇぇとおぉぉぉ!」
…おー、あっさり勝った。
まぁ、本当に五人抜きしたらデートしてあげよう。
四戦目。
「でぇぇぇ__ぐえっ!」
…あっ、負けた。残念。デートは無しだね。
『五番、前へ!』
「はーい」
出番が来た。
嫌だなぁ…
一番軽い木剣を持って舞台に上がる。
四番目の選手と対峙。
私を鼻で笑いながら見下してくる。
「よろしくお願いします」
「はっ、随分地味な奴だな」
『始め!』
四番目が距離を詰めて剣を振り下ろしてくる。
寸前で躱して、首の前にそっと剣を置いた。
「…地味な攻撃だよ?」
「__っ!ざけんな!」
四番目は私の剣を弾いて後ろに飛ぶ。
剣を構えて力を溜めている。武技かな?
「うぉぉ!ヘビースラッシュ!」
力の籠った一撃。
その一撃は空を斬る。
「どこだ!_っ!」
私は既に後ろに回り込んで、そっと首に剣を当てる。
「…まだやる?」
「…くっ、参った」
……あれ?しーんとしているけど…勝ったよね?
審判さーん。
『しょ、勝者五番!フーツー王国チーム五番は前へ!』
良かった。反則でもしたかと思ったよ。
四番目は肩を落として舞台を降りた。
いきなり見下した態度を取るからいけないんだよ。
…五番手。ジードが舞台に上がって来た。
久しぶりー。って言えないけど…心の中で思っておこう。
最後に見てから二ヶ月くらいだから、そんなに変わらないな。
茶色の髪に落ち着いた表情。
ジードの夢は、騎士の中で最高峰の称号…聖騎士になる事。
聖騎士…多大な功績を得るか、複数の国から推薦されないと、教会から聖騎士と認定されない狭き門。
聖騎士は騎士を目指すなら誰もが目指す称号だけど、ありきたりな夢なんて思わない。
ジードにとって、大事な夢だから。
聖騎士になったらどうするかは教えてくれなかったけど…こうやって国の選抜になっているのを見ると、夢の為に頑張っているんだなーと思う。
元同級生としては嬉しいよ。
陰ながら応援してるよー。
「…君は、強いんだな」
「ふふっ、ありがと。ねぇ、聞いて良い?」
「ああ、良いぞ」
「君の夢はなんだい?」
「…」
…あれ?答えてくれないの?
ジードの夢は、王女としての応援はもう出来ないけど、アスティとして応援したいんだよ。
言ってくれないと、応援出来ないじゃないか。
「夢は…無い」
「…は?」
何…言っているの?
夢は…無い?
「……本当に…無いの?」
「ああ、無い」
……ほう。
……ほうほう。
「…ふふっ…そう…」
「……」
私に…嘘吐いていたの?
ずっと、応援していたのに…
なんだろう……すげぇ腹立つ…
『始め!』
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