捏造お芝居を観に行きました。

 光の日。


 …そういえば、国を出てから二ヶ月くらいですかね。


 生活の基盤も出来たので、そのまま永住してしまいそうですが…いつかはワタシーイキテタヨーって言う日が来るのかな?


 正直、私の葬式は終わっているので…生存報告をしても、偽者扱いされそうですね。詐欺罪で最悪処刑ですよ…

 私の遺体が消えて、大騒動になったらしいですが…なんかすみません。



 なんでこんな事を思っているかというと…


『王女ー!』

『いやぁぁぁ!』


『貴方が…無事で…良かっ…た…』

『王女!目を閉じては駄目だ!誰か!早く回復を!』


 劇場にて、捏造された皇子と王女わたしのお芝居を見ているからであって…


『最期に…幸せを…感じさせて…』

『王女!最期だなんて!』


 なんだこれ……なに?キスシーンあんの?

 鳥肌が…サブイボが…チキンスキンが…


『愛して…いま…すよ…』

『ああぁぁぁぁぁ!』


 ああぁぁぁぁぁ!は私だよ。

 隣に座っているフラムちゃんは…うん、号泣してるね。

 この純粋な女の子が真実を知ったらどうなるか。



 現実はね…あの皇子さん、茫然として私に声掛けて無いよ。

 手紙の一通すら送って無いからね。

 完全に初対面だったよ。

 最期に喋ったのムルムーだからね。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「お芝居、凄く良かったねー!」

「そうだねー。演技力はかなり高いから、本当の物語みたいだったよ」


 フラムちゃんがお芝居を観たいと言い出しまして、観に来た次第です。

 あのウルウルした瞳で見詰められたら、首を縦に振らない訳にはいかんのですよ。


 まぁ、架空の物語だと思えば特に問題なく観れますね。


 お芝居は、二つある劇場で連日やっています。

 満員御礼ですね。

 待ち時間が凄かった。

 それはもう凄かった。



「アスティちゃん。続編やるらしいよ」

「何をどうやったら続編が出来るんだろうね。王女が生き返るの?」

「さぁ?多分復讐劇じゃない?でも観に行こうね!」


 復讐ねぇ…正直あの黒騎士には感謝しているんですよ。

 お礼を言いたいですね…誰か知りませんが。

 私に自由をくれましたから。


 もう少し強くなったら、フラムちゃんには言おうかな…友達辞めるとか言われたらどうしよ…まだ保留で。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 特事官のお仕事は、会場設営。


 今週末に、初等部門と中等部門の帝都大会がありますし、その次は高等部門が開催です。

 大変なんですよ。

 業者がやる仕事を騎士達が、えっほえっほと頑張ってらっしゃる。


 私は何をしているかと言うと……特事班詰所の受付です。

 ミリアさんは、会場設営の指揮をしているので、私が受付に立つ事になりました。受付のレティちゃんですね。


 ……誰も居ない詰所に一人。



 用も無いのに来る人は多数なので、暇では無いのですが……訓練場って反対側ですよ。ここまで来ないで下さい。


「レティちゃん。今日はステージを組み立てるんだ!終わったら見に来てね!」

「はい、時間があれば行きますね」

「また、来るね!」

「頑張って下さいね」


 いや、用も無いのに来ないで下さい。

 ゆっくり読書させて下さい。



「……」

「……あの、その」


 ダグラス君、何用ですか?


「…ご用件は、何でしょうか」

「お、お、お芝居、観に行きませんか!」

「お芝居というと、皇子と王女のですよね。すみません、昨日観に行ってしまいました」

「あっ、そっ、そうですか……か、彼氏とですか!」

「いえ、女の子とですよ」

「そ、そうですか」


 すまんなダグラス君。

 フラムちゃんとお芝居デートをしたからね。

 別の子と行ってくれ。

 別に私を誘わなくても良いんだよ…詰所にボッチだから、ボッチな生活をしている訳では無いんだ。

 気を使わなくて良いんだよ。


 …君、仕事は?サボりか?


「お時間、大丈夫なんですか?」

「_あっ、ま、また来ます!」


 また怒られるぞー。


 ……ミリアさん、居たんですね。


「アスティちゃん、デートの誘い断ったの?」

「ミリアさん、ニヤニヤしてますね。お芝居は昨日友達と観に行ったんですよ」

「へぇー、私まだ行って無いのよ。どうだった?」

「友達は泣いてましたよ」

「アスティちゃんは泣かなかった?」

「全く」


 はぁーってため息付かないで下さい。

 自分の捏造された話で泣くとか、ちょっと痛いですよ。


「そうそう、風の日に隣国の人達が来るから、女の子の格好で居たら駄目よ」

「なんでですか?」

「アスティちゃん可愛いから、沢山の男の子に言い寄られちゃうわよ?」

「もしそうなったら激しく面倒ですね」


 そうなったら…だけど。

 フラムちゃん大丈夫かな?

 可愛いから言い寄られそうだ。



 帝都大会…どうなるかなぁ。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 週末、闇の日になりました。


 帝都大会初日。


 闘技台は二つ設置してあるので、女子と男子を平行して行う。


 観客席は勿論満席。

 よくもまぁ、こんなに座れるだけの設備を作ったよなぁ…と思うくらい人が座っている。


 初日なんで、午前中には終わる予定。

 まぁ、チームが隣国6チーム、帝国10チーム。

 直ぐ終わるかな。


 本番は二日目の中等部門からだし。

 初等部なんてこんなもん…だと思う。



 私はフーツー王国の闘いまでは、補欠選手用の席で待機。

 補欠選手席はゆったり座れるから素晴らしい。

 女子と男子で分かれているので、フラムちゃんと観戦出来ないのが辛いけど、我慢しよう。




 さぁ、フーツー王国の面子は…あれかな?


 ……ああくそ。


 ……断りゃ良かった。



「…ジード」

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