1‐2
「お終い。」
幼稚園に通っていたある日にこんな紙芝居を聴かされた。私はあのときよく聞かず半分寝ていたというのに何故今更思い出すのだろう。不思議だ。明らかに続きがあるように終わったのに続きはないそうだ。このとき私以外の幼稚園児は皆「続きは?」「続き教えて!」と大騒ぎしていたのを覚えている。
———・・・
「えっと、こんにちは。」
「誰?」
目が覚めると右手を見やると同い年ぐらいの男の子が椅子に座っていた。挨拶を挨拶であ交わせばいいものの、冷たく「誰?」と返してしまったことは謝ろう。でも、本当に誰なの?
「えっと、この病院の医者の息子です。」
一瞬、病院が何のことかわからなかった。でも、周りが白で統一されているのを見て理解した。ここは家でない。
「どうして私は病院にいるの?あれ、そういえば私て、誰だっけ?」
そして、自分の記憶がすっぽり抜けていることも知った。
「頭を強く打ち付けたと聴きましたので記憶喪失になってしまったのでしょう。ご家族に今連絡しますね。」
「名前。」
「ん?あぁ、あなたの名前は
「あー、そうなんだ。じゃなくてあんたの名前よ。」
「俺?」
男の子は一瞬目を見開いた。自分のことを訊かれたとは微塵も思っていなかったらしい。でも、すぐに表情が柔ら無くなって教えてくれた。
「俺は
「そう。」
平一と言うやつは答えるとスタスタと扉を開けて出て行こうとする。が、私は自分の名前をよく聞いていなかったので、
「平一、私の名前なんだっけ?」
と訊くと、平一はぷはっと笑った。
「何よ。」
「何でもない。小林真理乃だよ。俺とは同い年だから仲良くしてくれ。」
「そう。教えてくれてありがとう。」
浦上平一は同い年と言ったけど、自分よりはるかに大人びていてそうは見えない。なんだか子どもっぽい自分が恥ずかしくなった。
「あれ...自分の名前なんだっけ?」
これは記憶喪失が進行しているのではなく元からだということは本人は知る由もない。
「へー、自分の顔、てこんな感じなんだ。」
鏡を見てまじまじと自分の顔を呑気に見ている。マリノは記憶を失くしたという事の重大さを理解していないのである。
「先生、マリノの記憶は戻るんですか?」
自分の母親だと言う女性は焦った顔をして先生に訊いた。
「彼女の場合、重度の記憶喪失ではないためゆっくりと回復するでしょう。でも、完全に戻るには2年かかります。その間、文字の読み書きや学校の授業の内容は覚えているみたいなので4月から学校に通うことは可能ですのでそこらへんはご安心ください。」
母親はほっとした顔をして私を抱きしめた。この暖かさはなんとなく体が知っている。この人が自分のお母さんで問題ないようだ。
「先生、平一いないの?」
「もううちの息子と仲良くなったんですか?今日は塾へ行っていていませんよ。夕方帰ってくるので、退院するのは明日にして少し話しますか?」
「ううん。今日は帰るよ。ここは居心地が悪い。」
「そうですか。家に帰ってゆっくりお休みください。」
私はコクリと頷いて母親に車に乗せられ「年上には敬語使いなさい。」と怒られた。
———・・・
マリンは水を扱いリンダと戦った。その水を扱う為には水の力が詰まった雫のペンダントを所持していなくてはならなかった。マリンとリンダは相打ちで死んだ。なら、ペンダントは何処へ行ったのか。それは誰も知らない。アルノーの国民は必死に探したが、誰も見つけることができなかったのだ。例外を除いては...。
この惑星にはマリン王国から南西に位置する火の国、ルナーツ王国があった。そこで水の雫のペンダントを見つけたのは階級の低い農民、ペアルドであった。畑を耕していたらたまたま土の中から見つけ出したのだという。だが、階級の低い農民。ましてや何の能力もないペアルドは国民のほぼ全員が探しているなど到底知る由もないので首を傾げてまじまじと見るだけだった。
「なんだこれは。」
ペアルドが手にした瞬間、ペンダント共にこの惑星から去ることになった。水の力は強力だ。その力でこの男は一瞬にして地球へ訪れてしまったという。そのペアルドは地球に訪れた途端にペンダントにはじけ飛ばされアルノーに戻る術を失くしてしまった。それからどうしたかって?
「探したよ。自分の生まれ故郷に帰るために必死になって探した。でも見つからなかったんだ。」
「それじゃあ、俺が一生懸命探しておじいちゃんをアルノーに返してあげるよ!」
「ありがとう。流石私の孫だ。」
この祖父と孫に交わされた約束は果されることなく、祖父のペアルドは命を地球で引き取ったという。その後、孫は必死に探したが見つからずこの想いをまたその孫に預けて亡くなったという。それからというもの、ペンダントは誰にも見つかられないまま色んな場所を旅したという。そのペンダントは本来の持ち主をずっと探している。そして、時は流れた。ペンダントは本来の持ち主に見つけられただろうか。それともペアルドの子孫へ渡ったのか。答えは後程。
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