第9話

序章 第八幕

四条は屋根から屋根へと飛び移り、大きな城壁を軽々と飛び越えて、村へと駆ける。

村が魔力強化無しでも確認出来る程近くに近づいてくと、四条の方に走り寄る人影が2つ。1つは追われている村人ともう1つは武器を持った人間だった。

追われているのは少女だ。後ろを見ずに一生懸命に走るが、現実はどうしようもなく、少女は追いつかれ武器を振るわれる、はずだった。

「邪魔だよ、お前」

その言葉と共に武器を持った男は、自ら走ってきた道を戻るように吹き飛んだ。

言うまでも無く、男は四条の雷を纏った脚によって蹴り飛ばされていた。

少女の前に屈むと四条は優しく、少女に話しかける。

「怪我してない?もう大丈夫だから」

少女は四条を視界に入れると

「あ、あぁ!冒険者様!どうかどうか村を村をっ!」

少女は泣くのを我慢しながらも懇願する。

四条はそんな少女を安心させる様に言葉を選んで話す。

「大丈夫、救える人は全て救ってみせる。だから此処でじっとしてるんだよ?約束」

そう言うと四条は立ち上がり、村に向け駆け出す。

『言を力に、宿れ雷装・雷牙!』

脚の時と同様四条の両腕に雷が纏わりつき、鉤爪の様な装甲が出来上がる。

四条は村の中に入ると目につく所から、村人を救い出す。自身の雷装を使い、武器を持つ人間を打ちのめしていく。同時に救った村人達に少女の居た方へと、逃げる様に指示を出す。

そうして村の中心へとたどり着く。

「あぁなんだテメェ?」

そこにはこの村を守護していたであろう衛兵が捨てられていた。衛兵はどう考えても嬲り殺された後が見て取れる。四肢が無いもの、皮が無く肉のみのもの。そして今まさに絶望しその命を終わらせてしまう無力な村人達。

四条は無言で武器を持つ男達を雷装を使い、切り裂き、切り飛ばし、村人達を背にして立つ。

「もう大丈夫。だから少し待ってて。この悪夢を終わらせるから」

「終わらせるだぁ?確かにテメェは強いが、コイツに勝てるかぁ!?」

他の男達よりも屈強な男は懐から魔石を取り出して地面に叩き落とすと、そこから鉄で出来たゴーレムが一体現れる。

が四条は気にする事もなく、屈強な男に問いかける。

「どうしてなんだ?どうしてお前らみたいな連中は平気で人を殺せる?」

すると屈強な男は笑いながら答える。

「ははっ!!楽しいからなぁ!それによぉ!殺せば金が手に入るってもんだ。つうかよぉ自分の身一つ守れねぇ奴が悪りぃんだよ」

「そうか、、、お前らはいつもそうだな」

四条はそう言うとゴーレムに向け走り出す。

ゴーレムは四条を撃退する為に右腕を振り上げるが、圧倒的なまでに四条が速くゴーレムの懐へと潜り込む。

「消し飛べ」

掌底をゴーレムの腹へと当て言霊を唱えると

『雷牙・撃滅!!』

ゴーレムは腹を中心として跡形も残さずに弾け飛ぶ。

「は?なに、が」

「お前らはもう喋るな」

男達は現状を理解する事無く、切られ二度と動く事は無い。

四条は自身が救った村人達を見た後、1人空を見上げる。そこには数十分前と変わらない星空が広がっていた。

「はぁ、最悪の気分だよ本当に」

四条は目を閉じて、溜息を一つついた後、村人達を見据える。

「多分もう少ししたら兵士がやってくると思うから、もう大丈夫だよ」

「あ、貴方様は一体」

村人の1人が言う。

「俺か?俺は……通りすがりの冒険者だよ。貴方達を救えて本当に良かった。そしてすみませんでした。少しでも早く気付けていたならば、被害は最小限に抑えられたのに」

そう言って四条は頭を下げた。それを見た村人達は四条に頭を上げてもらう為に言葉を尽くす。

「そう言ってもらえると、少し気分が軽くなるよ。この村にはもうあいつらは居ないよ。だからもう行くね」

そう言って四条は去ろうとする。村人はそれを見て四条に名前を訪ねる。

「名前は、、、すみません」

四条は名前を言う事なく去っていく。


四条が王城へと変える為に走っていると、あの村へと馬を使い駆ける一団が見えた。

「騎士達かな?」

一団を横目で確認した後、四条は立ち止まって空を見上げる。そこには変わらずに満天星空が輝いていた。

「この世界に来てからあの夢ばかりか。と言っても転移の時一度、ついさっきので二度目、、、そして現実でも似たような事、か」

四条は息を大きく吸い込んで、吐き出した。

「じいさん。俺が成したい事この世界でもあったよ。とは言っても先ずは手の届く範囲を確実に護らないとな」

四条は真っ直ぐ帰るべき場所を見つめた後、3人の顔を頭の中に思い浮かべる。

そうして四条はまた走り出した。

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勇者と魔術師以下略の物語 @genmai125

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