第2話 桜花一片に願いを

 どうしてか分からないけれど、そこに近づくにつれて息が苦しくなった。苦しくて苦しくて何度もやめようかと思った。だけどどうしてそんなに苦しくなるのか知りたかった。どうしてこんな気持ちになるのか知りたかった。どうしてあの花びらが気になるのか知りたかった。もがきながら体を全身使いながら進んでいく。突然だった。全身に激痛が走る。これは、もう進めない。どうしてなのかなぜ行ってはいけないのか、体が拒否しているようだった。心も折れてしまいそうになる。私はもがきながら自分を励ますように歌を歌った。それはもう悲鳴のようだっただろうけど。


 いつか聞いたことがある。お姉さまの話、ヒトは命が短いから、決して近づいてはいけないよ。だけどまた命がめぐる。そういうふうにできている。300年以上生きるワタシ達とは違うのよ。




 〇〇〇〇〇〇




 お花見に行こう。桜の花びらが咲いている。キレイ。地元の人もそうでないひとも私のように海外の人もいる。なんてね、海の向こうにも人がたくさんいるところがある。桜を見てる、お酒やお団子を楽しんでる人もいる。お花見だけどお祭りのように出店もたくさん出てる。


 突然ここにきた私にみんな優しかった。寝床もスカートもくれた。イベントにも出してくれて、居場所もある。話せないのにコトバも教えてくれた。実は帰りたいと思ったことは何度もある。だけどこの花びらが溢れる景色を見てから、私の中の何かが変わった気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る