桜花一片に願いを

新吉

第1話 花びらいっぱいに願いを

 もっと近くであの花を見たい。私の願いは実はそれだけ。どうしてもここからでは見えなくて、私の体ではそれが叶わなくて、楽しそうな歌声や音楽、話し声が聞こえるだけ。薄桃色にもえる山と舞い落ちてくる花びらがとてもキレイ。




 サクラとワタシ




 外の世界は危険がいっぱい。誰にも姿を見せてはいけない、話してはいけない。だからいつもここから見上げていた。


 こっちの世界とあちらの世界をつなぐ境目はない。私が行きたいあの場所は、この道を進んでいける。見上げて首が疲れるほどの高さにあって、どうやらそこまで登るのは大変そうだ。私にはできない。


 でもそう遠くないところにいっぽんだけあの花の木がある。なぜだかその木はいつも寂しそうで、見上げる向こうのとは何かが違かった。私は勇気を出して少しずつその木に近づいていった。今考えるとなんて馬鹿なんだろうと思う。だけど私はきっとサクラに恋をしていた。



 いっぱいの花びらが本当にキレイだった。

 いっぴんずつ美味しいご飯が出た。

 いっぷんだけですごい花びらが降った。

 いっぺんでいいから来てみたかった。

 いっぽんの桜の木が残った。


 はらはら舞い落ちる花びら。

 ひらひらスカートはお気に入り。

 ふらふら酔っ払いが歩く。

 へらへらしないでよね。

 ほらほらもうすぐ満開になるよ。


 いばしょはないのかもしれない。

 いびきがうるさいけど大丈夫?

 いぶされるのは嫌だなあ。

 いべんとに参加してみる?

 いばってないよ、そんなんじゃない。

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