KAC2024、3回目お題は「箱」! これは色々と語りたくなる……

   

 今回は一日遅れどころか、もう二日遅れの話題ですね。

 KAC2024の3回目お題が発表されたのは、一昨日のお昼でした。


【3/11 11:59締切】KAC2024 第3回お題「箱」

https://kakuyomu.jp/info/entry/8thanniv_KAC20243


 前回までとは異なり、今回からは運営からの出題。いわば通常営業に戻りました。

 その分、お題の難しさも減ったのかもしれません。「箱」というのは、かなり自由度の高いお題のはずですが……。

 私にとっては、超難問のお題!

 短編をたくさん書いていると、公式企画にせよ自主企画にせよ「お題に応じて新規執筆」系のイベントに参加する際、お題を見て「そのテーマなら以前に書いたことがある」「ついこの間、ちょうどそのテーマで投稿したばかり」みたいな場合もありますよね。今すぐに具体例は挙げられませんが、私も似たような経験があったような気がします。

 今回の「箱」もそれの一種であり、しかも「以前に書いた」というのが「気楽に」ではなく、自分なりに気合を入れて書いた時でした。

 何度か応募している短編コンテストのお題が「箱」だったことがあるのです。それも小説投稿サイトのコンテストではなく、公募みたいな感じのコンテスト。光文社のショートショート公募の第20回募集テーマでした。


 このエッセイでも何度か書いてきたように、私は元々コンテスト応募は「真剣に受賞を狙う」というほどではないエンジョイ勢なのですが、いつのまにか短編コンテストに関してだけは、真剣さが少し増す場合も出てきました。

 例えば光文社のショートショート公募は「受賞作品は書籍収録」というコンテストだったので、その分「受賞したい」の気持ちも大きくなっていたのでしょうね。

 光文社のショートショート公募は、確か全部で6回応募したと思います。最初のうちは普通に「テーマのある短編コンテスト応募は、お題がいただける自主企画などと同じ」くらいに気楽に臨むエンジョイ勢でしたが、2度目の応募で「優秀作(一次選考通過)には選ばれませんでしたが、それぞれに魅力があって印象に残った作品」という枠に入って短い講評をいただき、4度目の応募で一次選考も通過できた辺りから、どうやら心構えも少し変わったようです。何度も途中選考のあるコンテストではないので、一次選考通過イコール最終候補に残ったということ。それより上は受賞しかないですし、逆にいえば「あと一歩で受賞できたのに!」と悔しい気持ちにもなるのが、そのコンテストの「一次選考通過」でした。

 まあ実際には「あと一歩」といっても、その「一歩」が大変。それこそ大きな壁なのでしょうが……。とりあえず、4度目の応募に続いて5度目の応募でも、一次選考だけは通過できて最終的に落選。その「5度目の応募」が「箱」テーマの回でした。

 そんなわけで、そのコンテスト応募の際に、私としてはかなり真剣に「箱」テーマで考えたのですよ。最初の頃の「一次選考だけでも通過できたらいいなあ」ではなく、もはや一次選考は通過点、できれば受賞を。そんな気持ちで応募する以上は「他の応募者よりも良い作品を書かなければ!」というプレッシャーもありますし、文章力に自信がない以上はアイデア勝負。かといって、アイデアだけで選者を唸らせるほどの発想力もないし……。

 あれこれ考えると書けなくなって、執筆は締切ギリギリになりましたが、それでも2作品応募できました。最初に「箱」テーマを見た瞬間「箱に入る」と「箱になる」の2つの方向性が頭に浮かんだので、それぞれ1作品ずつです。

 落選後にカクヨムにも掲載しているので、その2作品のURLもついでに記載しています。私なりの渾身の(?)「箱」短編です。既に投稿済みだったので今回のKACには参加できませんが、同じ「箱」テーマの短編なので参考になるかもしれません。


『箱を叩くと子猫が二匹』

https://kakuyomu.jp/works/16817330668703314830


『ある朝起きたら彼女が箱になっていた』

https://kakuyomu.jp/works/16818023212239908875


 いかがでしょうか?

 私としては『ある朝起きたら彼女が箱になっていた』の方が気に入っているし、作風も明るいからそちらが評価されやすいのではないかと思ったのですが、短編公募で一次通過できたのは『箱を叩くと子猫が二匹』の方でした。

 ちなみに一次選考発表時点の総評では『全体としては、学校や家庭、職場などを「箱」に喩える作品が多かった印象です。そして、そこからいかに脱出しようかという展開が目立ちました』と書かれていたので、私の『最初に「箱」テーマを見た瞬間「箱に入る」と「箱になる」の2つの方向性が頭に浮かんだ』というのは、その時点で少し変わった発想だったのかもしれません。

 少し話が逸れますが、そもそも「箱」というテーマに関しては、以前に凄く面白い作品を見たことがあるので「それに影響されないように。それに似ないように」というバイアスがかかっていたのかもしれません。その「以前に凄く面白い作品を見た」というのは、小説ではなく映像作品。もう作品タイトルも覚えていないのですが、ホラーのショートフィルムで、内容としては「捨て犬や捨て猫を拾ってくる感じで、生きた段ボール箱を拾ってくる。ところがその箱は人間をエサにする生き物で……」という話。

 当時は小説執筆という趣味もなく、GyaOやニコ生などの公式無料放送で、そういうホラー映画をたくさん見ていました。その中で強く印象に残った話だったので、それほど強く「面白い!」と感じたのでしょうね。

 あくまでも個人的なツボに入っただけかもしれませんが、いざ自分が話を作る側に回ってみると「あれより面白いのは自分には絶対作れない!」みたいに思うものもあり、もしも「箱」テーマで自分の発想にバイアスがかかっていたとしたら、そのせいだったのかもしれません。


 光文社ショートショート公募の話に戻せば、「箱」回の次となる6度目の応募では、一次通過も出来ませんでした。

 あらためて自分が一次通過できた「箱」の回の講評を読み直すと、例えば私の作品には『丁寧な語り口で気持ちよく読めますが、少年がなぜ段ボールに入ってみたのかなど、いくつか強引な展開が気になりました』という指摘がありましたし、他の方々の作品に対しても厳しいコメントばかり。本当に「一次通過」の評価なのか、一次通過でこれならば落選作品は選考委員から見てもっと酷いのか、と考えさせられるほどでした。

 そんな中で目立っていたのが『個性的でありながら誰にでも届く巧さがあります』『出来は断トツですが、読んでいてつらい話なので、次回はユーモアも感じさせる作品をお願いしたいです』と書かれていた作品。作者のお名前にも見覚えがあるので、過去に何度も受賞なされている常連であり、それだけ上手な書き手なのでしょうね。「誰にでも届く巧さ」「出来は断トツ」と書かれていた通り、この「箱」回でも受賞しておられました。

 ちなみに「作者のお名前にも見覚えがある」と書きましたが、他の一次通過者の名前を見ても、過去の回で受賞しておられる方々や他の短編コンテストで受賞しておられる方々など「見覚えがあるお名前」はいくつも含まれていたようです。例えばちょうど「箱」回で「一次通過したけれど最終的には落選」という作品がつい最近、他の小説投稿サイトの短編コンテストで受賞しておられました。光文社ショートショート公募は公募なので受賞しない限り作品そのものは掲載されず、講評だけしか見られないのですが、作者名、作品タイトルに加えて講評から推測できる内容もあれば、他で見た時に「これはあの時の作品だな」と判断するのは簡単ですからね。


 また話が少し逸れましたが……。

 光文社ショートショート公募、6度目の応募で一次通過も出来なかった時。

 上記のような前の回の講評を思い出して「次はもっと対策を練ろう」と決意したのでした。

 以前のエッセイでも書いた通り、私は本来、自分が応募したコンテストの受賞作品を読むことに抵抗があるタイプ。「自分が応募したコンテスト」という時点で純粋な読者としては楽しめないですし、自分の力量不足は棚に置いて、悔しいとか羨ましいとか感じてしまいます。

 しかし光文社のショートショート公募に関しては、これではいけないと思いました。毎回ではないものの、せっかく一次通過できるようになったわけですし、一次通過できて落選した時の「悔しい」も感じたのですから、その上の「受賞」を目指したいという気持ちで……。

 特に先ほどの「誰にでも届く巧さ」「出来は断トツ」と言われている作品です。「読んでいてつらい話なので、次回は」という講評なのにそれでも受賞しておられるのは、それほど「断トツ」だから選ばざるを得ない、という作品だったのでしょう。

 この作者の受賞作品を、過去の回の受賞作品も含めて、色々と読んで研究してみよう。次回の募集テーマが発表されたら、それを念頭に入れた上で「研究」すれば、発想の段階から好影響が出るかも……。

 そんな決意をしたのですが。

 残念ながら、いくら待っても「次回の募集テーマ」が発表されません。どうやら光文社のショートショート公募は、もう募集をやめてしまったようです。本当に残念です。


 ……と、長くなりましたが。

 このように、私としてはかなり気合を入れて書いていたコンテストの中で、テーマが「箱」の回があったわけです。

 だから個人的には「もう『箱』に関しては考え尽くした」という感さえありました。

 そんな「箱」が、今回のKACのお題!

 これは大変です。

 でも毎年KACは、皆勤だけは続けているので、できれば今年もなんとかしたい。せっかくなので、改めて「箱」について考えてみると……。

 ふと思い出したのが、以前に「不幸の箱」みたいなタイトルでホラーを書こうとしたこと。不幸の手紙の「箱」バージョンで、箱の展開図が送られてくる話です。

 あくまでも「書こうとした」だけで結局やめてしまったのですが、確かその後、その『不幸の手紙の「箱」バージョン』の「箱」を「犬」に変えた作品を書いたはず。

 自分自身の作品リストをチェックしてみると、短編『不幸の子犬』は2019年10月の作品。そちらの【生まれた経緯】欄に「前々から頭の中にあったホラー短編のボツ案と合体」という記述もあったので、2019年秋よりも前に、確かに不幸の手紙の「箱」バージョンを考えていたようです。

 もうどんな話を考えていたのか、自分でも覚えていません。上述の『不幸の子犬』みたいな展開だったのでしょうか。

 いずれにせよ、覚えていないのであれば新鮮な気持ちで書けるはず。『不幸の手紙の「箱」バージョンで、箱の展開図が送られてくる』という冒頭部分だけ拾ってきて、改めてその後の展開を考えて……。

 一昨日の午後3時頃に投稿できたのが、こんな作品でした。


『不幸の小箱』

https://kakuyomu.jp/works/16818093073309423891


 これで一応、KAC皆勤のための毎回参加は続いたわけです。

 しかし1回目も2回目も2作品ずつ書いているので、せっかくなので今回ももうひとつ出しておきたい。

 あんなに「もう『箱』に関しては考え尽くした」と思っていたくせに、ちょっと欲張りですね。それでも、先ほどの『不幸の小箱』みたいに、以前の没案を利用するパターンもあるわけで……。

 頭に浮かんできたのが、没案というより、これから書きたいと思っていた作品。まあ「書きたい」だけで実際には書けずに終わりそうだったので、その意味では既に没案の一種みたいなものですね。


 他サイトの「お宝」テーマの短編コンテスト応募用に考えていたもので、シンデレラのおとぎ話を下敷きにした異世界ファンタジー。ただし「異世界」なので我々の世界と同じ「シンデレラ」である必要はないし、むしろ同じだったら不自然。だから「シンデレラみたいな物語だけど、最終的に王子様はシンデレラを発見できなかった」というおとぎ話が存在する、という設定にして、主人公の女盗賊が王宮に忍び込んで見つけたお宝はガラスの靴だった。おとぎ話と思っていたシンデレラ(仮名)は過去の実話で、そこの王族こそがおとぎばなしの王子様の子孫。盗みに入った現場を現在の王子に見つかってしまうけれど、実は彼女はシンデレラ(仮名)の子孫で、彼女をつかまえた王子と恋に落ちて……。

 そんな物語を書きたかったのですが、ネックになるのは「恋に落ちて」の部分でしょうか。そもそも短編コンテストといっても、応募文字数の下限が5,000文字なので私が勝手に「短編コンテスト」と思っているだけで、文字数上限はなく、過去の受賞作を見ても10万文字以上の長編がいくつもあるようです。「2万文字までで審査」という規定もあるので、できればそれくらいの文字数が最適なのでしょうね。2万文字といえば、カクヨムも含めて色々な小説投稿サイトで「短編」「中編」の区切りが2万文字ですから、かなり長めの短編で応募するべきコンテストです。

 1,000文字や2,000文字の掌編コンテストならば、恋に落ちる過程をアッサリ書いても許されるかもしれませんが、1万文字や2万文字ともなれば、その部分こそがメイン。二人がどうして惹かれ合うのか、納得のいく展開が必要で……。

 その辺りが思い付かないまま、そちらのコンテストは締め切り間近。もう間に合いそうもなく、没案になりそうなところでした。


 しかしコンテストでなくもっと気楽に書けそうなKACならば、このプロットそのまま使えるかもしれない……と考えたわけです。お宝というものは普通、宝箱すなわち「箱」に入っていますからね。テーマの「箱」は、そこでクリアーできます。

 とはいえ「細部を煮詰めようとして考えつかないから」みたいな状態で書いたら、大雑把で適当な作品になりそう。そんな作品を書く意味が、はたして本当にあるのか? あとで自分の投稿作品一覧を見た時に恥ずかしくなるような出来にしかならないのではないか?

 そんな気持ちで、一晩は躊躇しましたが……。

 結局は、先ほども書いた「1回目も2回目も2作品ずつ書いているので、せっかくなので今回ももうひとつ」の方を優先させてしまいました。

 昨日一日かけて書いたのが、こちらの作品です。


『箱の中身は透明な靴』

https://kakuyomu.jp/works/16818093073356592934


 やっぱりかなり粗くて、小説というよりあらすじっぽい文章が多いですね。書き始めた時は「ササッと書いて、ササッと投稿」と思ったのですが、実際は「一日かけて」みたいになってしまいました。

 文字数としても約6,000文字。粗い書き方の割には、思ったよりも長くなりました。まあ元々が2万文字を目指して考えていたプロットなので、これくらいの長さになるのは当然なのかもしれません。

 その意味では、この作品こそ1万文字以上にするチャンス。今年新設の【長編への道のり賞】を狙うのであれば、この作品を使うしかなかった気がしますが、結局は中途半端な長さで終わらせてしまいました。

 やはり私には【長編への道のり賞】は無理でしょうね。公式ルールとは別に、KAC参加には「1話完結で」という個人的なこだわりがあり、そうなると【長編への道のり賞】のためには即興で1万文字を書く必要がある。でも、私もそこまでの速筆ではないですからね。


 この「個人的なこだわり」云々は、前回ラストに書いていた


> ただし「ヨム」側に回ると、実は今年は少し「以前ほどは楽しめなくなった?」と考えさせられる部分もある


>そちらに関しては次回以降で


 とも関わるのですが、今回は「箱」関連で色々とあり、かなり長くなりましたから……。

 やはりそちらは次回以降で。


 このように、3回目お題も私なりに楽しめたKAC2024。

 皆様はいかがだったでしょうか?

 まだまだ今年のKACは続きますし、次回以降も楽しみですね!

   

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