「怪談」について改めて考えてみる

   

 記事タイトルだけ見ると「怪談」限定みたいですが……。

 前回に引き続き、カクヨム夏祭り2023に関する話です。


 昨日「カクヨムからのお知らせ」にて告知もあったように、


【1週間耐久!真夏の創作祭】本日0時より「第3週」がスタート!賞品はトリのクリーナー

https://kakuyomu.jp/info/entry/2023/08/15/120000


 カクヨム夏祭り2023として2つあるイベントのうち、第1弾の方は3週目に突入しました。

 前回のエッセイでも記した通り、私は2週目から参加。前回のエッセイ時点ではまだ4日目でしたが、以下のように、第2週の7日間の最後まで「毎日とりあえず何か投稿」というのを続けることが出来ました。


 8月8日 ご当地怪談『幼女のそろばん』投稿

(8月8日が「そろばんの日」なことから発想、原稿執筆は前日)


 8月9日 ご当地怪談『駐車場にて』投稿

(8月9日が「駐車場の日」なことから発想、原稿執筆は前日)


 8月10日 ご当地怪談『駅前の案内所にて紹介された温泉宿は』投稿

(8月10日が「宿の日」なことから発想、原稿執筆は8月10日当日)


 8月11日 本エッセイ『カクヨムを使い始めて思うこと』更新


 8月12日 ご当地怪談『緑色のレインコートの女の子』投稿

(8月12日が「配布の日」なことから発想、原稿執筆は8月12日当日)


 8月13日 短編『白いポメラニアンの女』投稿

(元々は8月10日投稿の「ご当地怪談」用に「帽子の日」から考えたが「ご当地」要素も入らず「怪談」としても成立しなかった物語、原稿執筆は8月13日当日)


 8月14日 短編『せっかくのプール開きの日に』および『雨降れば悪夢も終わる』投稿

(他サイトには投稿済みだがカクヨム未投稿だった作品の転載)



 せっかくなので第3週も参加したくなり、まずは8月15日に投稿したのが『鯛おとこ』。8月15日が「刺身の日」なことにちなんで、8月14日のうちに書いておいた「ご当地怪談」です。

 カクヨム夏祭り2023第2弾「ご当地怪談」企画に関しては、これで無事5作品目となりました。「参加賞」だけでなく「怪談マスター賞」の方の抽選対象となる条件も満たしたわけです。

 改めて、その5作品を並べてみると……。


『幼女のそろばん』

https://kakuyomu.jp/works/16817330661590049973


『駐車場にて』

https://kakuyomu.jp/works/16817330661634388410


『駅前の案内所にて紹介された温泉宿は』

https://kakuyomu.jp/works/16817330661734868158


『緑色のレインコートの女の子』

https://kakuyomu.jp/works/16817330661830414927


『鯛おとこ』

https://kakuyomu.jp/works/16817330661958038866


 それぞれの「ご当地」は、兵庫県、群馬県、兵庫県、東京都、愛媛県。

 私自身が慣れ親しんだ地域は、出身地である東京の池袋近辺と、20代の青春時代を過ごした京都市内なので、今回の5作品には含まれていません。

 一応4作品目の『緑色のレインコートの女の子』は東京都内で、私自身が中高6年かよった学校の最寄駅を舞台にしているものの、あえて駅名は明記しませんでした。周辺の地理なども描写せず曖昧なままにしているので、あまり「ご当地」色は強くありません。

 だから今回、あまり「ご当地小説を書きました」という気分にならないのですが……。

 ちょうど「講釈師、見てきたような嘘を言い」と同じで、素人作家も含めて小説家というものは、たとえ全く行ったことのない場所でも、まるで慣れ親しんだ場所みたいに書く場合がありますよね。

 私も以前に、インターネットのストリートビュー機能を利用して、そんな感じの短編を書いたことがあります。第1回と第2回の「角川武蔵野文学賞」に応募した時です。第2回の方はダメでしたが第1回の方は中間選考に通過したので、このストリートビュー機能の利用という手法は「特定の地域を舞台にした『ご当地小説』執筆の上では有用だろう」と、ある程度の手応えは感じています。

 そんなわけで今回の「ご当地怪談」でも、まず1作品目の『幼女のそろばん』執筆の際は、ストリートビューのお世話になりました。おかげさまで、全く行ったことのない場所にもかかわらず、見てきたような嘘を書けた気がします。

 ただしストリートビューを参考にしながら書くのは時間がかかるし、それはそれで大変なので……。

 結局、2作品目以降は大きく作風も変更。「ご当地」色の薄い作品ばかりになってしまいました。

 上述の「私自身が慣れ親しんだ地域は、今回の5作品に含まれていない」「あまり『ご当地小説を書きました』という気分にならない」というのもあって、少し不完全燃焼な気分です。今度は京都市内あるいは池袋近辺を舞台にして、あと1作品か2作品くらいは「ご当地怪談」を投稿してみたいですね。



 そんな「ご当地」小説云々とは別に、一応は「ご当地怪談」として5作品も同じジャンルの作品を書いているうちに、改めて「怪談」についても考えるようになりました。

 大袈裟にいうならば「怪談」についての理解が深まりました……みたいな感じでしょうか。実際のところは「今更ようやく気づいたのか」程度の話かもしれませんが。


 まず、前回のエッセイで記した「私は怖い話を書くのが苦手」「特に『ばけもの・幽霊などの話』限定で人怖ひとこわホラーを封じられたら、いっそう大変」という話。だから今回の企画は私には苦手な部類のはずと思っていました。

 実際に今回いくつか「ご当地怪談」を書いていく中で、最初のうちは「ばけもの・幽霊などの話」という点にこだわったせいで、どうしても似たようなオチになってしまい、それが自分でも嫌だったのですが……。

 ある時ふと気がつきました。「『ばけもの・幽霊などの話』限定」だからといって「人怖ひとこわホラーを封じられる」と考えるのは早計ではないか、と。「ばけもの・幽霊など」を登場させた上で「そいつらよりも、生きた人間の方がもっと怖い」という話にすればいいわけですから!

 そのパターンならば「実は幽霊でした」でいったんオチたように見せかけてから、最後に「でも生きた人間の方がもっと怖い」という形で、さらにもう一捻り出来るわけです。


 それに、そもそも「怪談」という言葉に「こわい」とか「おそろしい」といった文字は含まれていません。私が勝手に「恐怖譚」と同じイメージで捉えていただけで、怪談の「怪」は「恐」でも「怖」でもない。「怪しい」なのですよね。

 もしも本当に「怪しい話」というだけならば「怖い話を書くのが苦手」でも大丈夫。「怪しいけれど怖くない、むしろほのぼのした怪しさ」でも良いではないか。そう割り切って考えたら、少し気分が楽になりました。

 また、こうして「怪談」の漢字2文字に着目すると、後ろの「談」にも特別な意味を見出したくなります。

 実際にはどうだか知りませんが、少なくとも私は「談」という漢字から個人的に、「物語そのもの」というよりも「物語を語る」というニュアンスを感じるのです。

 ほら、怪談といえば語り手がいる場合が多いではないですか。例えば有名なところでは稲川淳二氏とか。

 もちろん「これは私が経験した話で……」みたいなパターンで、語り手自身が怪談の登場人物になる場合もあるけれど、むしろ「これは私が聞いた話で……」みたいに「語られる『怪談』の物語の中に『語り手』自身は登場人物として登場しない」という場合の方が多い気がしませんか?

 前者ならばwebラノベにありがちな「主人公イコール語り手」の一人称小説ですが、後者ならば実質的には三人称ですよね。

 ただし最初に「これは私が聞いた話で……」みたいな断り書きがある以上、物語のメインとなる『怪談』には登場しないとしても、語り手である『私』と、聞き手(読者)である『あなた』の存在も意識されることになる。まあ「存在も意識される」といっても、特に大きな存在感はないからこそ「語り手」や「聞き手」なわけですから、『私』も『あなた』も作中メインの『怪談』の中にまでは出しゃばってこられないでしょうが……。作中メインの『怪談』を「語り手」が語り始める前や語り終わった後の場面で、それぞれの立場を利用することは出来そうですね!

 そんなことを意識し始めたのが、4作品目の『緑色のレインコートの女の子』と5作品目の『鯛おとこ』でした。まあ「はっきり意識して書いた」というのではなく「書いているうちにぼんやりと意識し始めた」という程度かもしれませんが。

 先ほどの「作中のメインとなる『怪談』の登場人物とは別に、語り手である『私』と、聞き手(読者)である『あなた』の存在も意識される」「『語り手』が語り始める前や語り終わった後の場面で、それぞれの立場を利用できる」という書き方は抽象的でわかりにくいとしても、これら2作品を読んでいただければ具体的に伝わるのではないでしょうか。



 このように、今回の「ご当地怪談」企画のおかげで、執筆に関する見方が少しだけ広がったような気がします。まあ今後「怪談」そのものを書く機会は少ないかもしれませんが、ホラーだったりあるいは別ジャンルの短編を書く場合でも活かせるはず。

 最初の方で「あと1作品か2作品くらいは」と書いたように、とりあえず「ご当地怪談」企画終了までまだ1週間以上残っているのですから、できればもっと書いてみたいですね。同じようなジャンルの作品を書き続けることで、また何か新しい発見もあるかもしれません。

 こんな感じで、思った以上に楽しめているカクヨム夏祭り2023。本当にありがたいイベントです!

   

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