2023年6月

短歌って難しい ――短歌コンテストの話――

   

 今更ですが、今月1日に始まった「第1回カクヨム短歌・俳句コンテスト」についてです。

 既に6月も下旬であり、本当に「今更」ですね。応募期間もちょうど半分が過ぎたところですし。

 そもそもこのコンテストに関しては、開催告知が出た4月下旬と選考委員インタビューが掲載された5月半ばの2回、このエッセイでも話題にしています。既に書くべき話もなさそうなものですが、いざコンテストが始まってみると新たな発見があるものでした。


 まずは、独特の応募方式について。

 わざわざ開催告知の時点でも、


>通常のコンテストにはない投稿ルールも設けておりますので、必ず応募要項をお確かめください。


 と記載されていたように、例えば「一首/一句部門」では特別ルール『エピソードタイトルに、応募したい短歌/俳句を記入してください』が用意されています。

『投稿作品の本文には、自由に作品のイメージ等について記載することが可能ですが、その内容については、選考対象外となります』とも明記されているので、おそらくコンテストでは作品本文をいちいち開くのでなく、目次のエピソードタイトルだけ眺めて審査するのでしょうね。

 それに関しては応募要項を読んだ時点で把握したつもりでしたが……。

 実際に始まってみるまで理解できていなかったのが、この部分でした。


>キャッチコピーには、ぜひ自信のある一首/一句をご記載ください。


 コンテストが始まって特に最初の1週間は「応募作品を見る」のページもランダム表示。そこで応募作品を見ていくと、当たり前ですがキャッチコピーが目立つのですよね。いつもの小説投稿でも「キャッチコピーが目立つ」は同じはずですが、短歌や俳句のように一首あるいは一句そのものを色付きでキャッチコピーとして表示できるとなると、その「目立つ」度合いは思った以上でした。

 ザーッと眺めていくと、その中にいくつか、強く惹きつけられるキャッチコピーが目に飛び込んできます。特に「一首/一句部門」ではそれが応募している短歌や俳句そのものなわけで、なるほど『キャッチコピーには、ぜひ自信のある一首/一句をご記載ください』と推奨されるのも当然だ、と実感させられました。


 そんな感じでコンテストの「応募作品を見る」からもいくつかの作品を拝見させていただきましたが、それとは別に自主企画経由で読んでいった応募作品もあります。

 コンテストの応募期間スタートと同時に、こんな自主企画を開催してみたからです。


 初めての短歌

https://kakuyomu.jp/user_events/16817330658163538293


 せっかく自主企画を開催する以上は、企画主として、参加作品を出来る限り読みたいものです。だから私が自主企画を立てる際、長編よりも文字数的に読みやすい短編を募集する場合が多く、今回も「短歌ならばわずか31音だから短編よりさらに読みやすいはず」と甘く見ていたのですが……。

 これが大きな間違いだった!

 わずか31音、しかもその中に漢字も含まれるので文字数にしたら30文字以下。それなのに1,000文字や2,000文字の短編小説よりも読むのに時間がかかる……と感じる場合もあるほどでした。

 文字数が少ないからこそ、ひとつひとつの言葉それぞれに意味や想いが凝縮されているのでしょうね。もちろんそれらがスーッと頭に入ってくる短歌もありましたが、凝縮され過ぎているせいか目には入るけれど頭に入ってこない場合も結構ありました。これもいわゆる「目が滑る」という現象の一種でしょうか。

 そんな中、見た瞬間にパッと景色が浮かんできたり、歌の内容に深く共感させられたりする短歌もある。ならば短歌というものは想像していた以上に難しくて奥深いものなのだろう、と思いました。

 もちろん、私が「わかりやすい」「伝わりやすい」と感じた短歌はあくまでも私がそう感じたというだけ。WEB小説でも「面白い」の個人差は大きいように、短歌に対する感じ方も人それぞれです。特に今回のコンテストでは、日頃から短歌に慣れ親しんでいる方々ばかりでなく、私みたいな完全な門外漢もたくさん参加しておられるはず。その分いっそう感じ方も千差万別になるでしょうし、それぞれの立場で応募作品を楽しめるコンテストになっているのでしょうね。


 以上は「ヨム」側からの「短歌って難しい」でしたが、もちろん「カク」側からも「短歌って難しい」と感じさせられる部分が出てきます。

 やはり一番大きいのは、五七五七七で収めないといけない点でしょうか。五音や七音に区切りを合わせようとするならば、それぞれ適切な音数の語句がパッと頭に浮かばないといけないのですよね。もちろん「音数」だけでなく、言葉そのもののニュアンスやイメージも「適切」にした上で。

 そのためには、頭の中に日頃からたくさんの言葉をストックしておいて、それらを瞬時に引き出せるようにしておく必要がありそうです。今回いくつか短歌を投稿してみて、自分の語彙力の乏しさをつくづく痛感させられました。

 とはいえ、適切な言葉の選択は短歌に限らず、小説執筆においても同様のはず。特に私の場合、以前にこのエッセイで書いたように「できれば小説作品でも五音や七音で区切れる部分を増やして文章にリズム感を出したい」というのが個人的な理想ですからね。もちろんあくまでも「理想」に過ぎず、現時点では全くできていないどころか、その意識すら忘れてしまうレベルですが……。短歌コンテストでいくつか短歌を作ってみることが、少しはその練習に繋がるかもしれない。改めて、そんなことを感じています。

   

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