改めてKACについて ――お題を与えられて執筆するということ――

    

 今回は「お知らせ」などの告知とは無関係に、自分なりにKACについて思っていること、感じていることを書いてみます。


 まず前々から私は「KACイベントが大好き」と言い続けてきましたが、その根っこにあるのは「お題を与えられて即興で書く」というのを楽しんでいるからでしょうね。

 カクヨムに来てから目覚めた楽しみ方であり、これも自主企画のおかげだと思っています。

 例えば三題噺のように「このお題で書いてください」という自主企画もありますし、そうではなく「こんなテーマの作品を募集しています」という自主企画の場合でも、既存の作品ではなくそのテーマに合わせて新規執筆すれば、それも「お題を与えられて書く」というタイプの自主企画と同じ意識で参加できます。

 特にカクヨムに来て1年目は、そうした執筆が面白くて面白くて、たくさん「自主企画参加用に新作執筆」というのをおこなってきました。私は自分のカクヨム投稿作品を以下のようにまとめているのですが、


https://kakuyomu.jp/works/1177354054889276921


 その中の「自主企画のために書き下ろした作品」の項目を見てみると、1年目は30作品、2年目は4作品、3年目は26作品。4年目となる今年度は、まだ途中ですが――とはいえもう2月末なので残りわずか1ヶ月ですが――11作品。3年目に少しまた増えたものの、やはり最も多かったのは1年目ですね。

 私にとってはKACイベントもこの延長上に存在しています。お題に基づいた執筆の一番の醍醐味は、お題からどんな物語を発想するか、ということ。他の方々とは異なるアイデアを思いついて「その発想はなかった」というコメントをいただくのも嬉しいですし、逆に「このテーマだと、そういう発想になりますよね!」みたいに共感していただけるコメントも嬉しい。結局のところ、読者の反応を楽しんでいるのかもしれません。

 読者の反応といえば、特にお題が与えられた自主企画で、一番早く投稿できた場合に「書くのが速いですね」と言われたりするのも、読者の反応を楽しむ部分でしょう。タイムアタック的な楽しみ方とも言えるかもしれません。

 ただしKACイベントになると、私なんて比べものにならないスピードで投稿なさる方々もたくさん現れます。だから「一番早く投稿」は絶対に無理なのですが、それでも「出来る限り早く投稿したい」といつも思いますし、自分なりのペースの中での最速をいつも目指しています。だいたいお題を見てから1時間とか2時間くらいを目安にする感じでしょうか。あくまでも「自分なりのペースの中で」になりますが、これもタイムアタック的な楽しみ方でしょうね。


 他の方々の近況ノートやエッセイなどを見ていくと、例えば「同じ世界観の連作短編にする」みたいに、ぞれぞれ追加ルールを課した上でKACに参加する方々も結構おられるようです。

 大袈裟にいえば、先ほどの私の「自分なりのペースの中でタイムアタック的な」というのも、そんな「追加ルールを課した上でKACに参加」のひとつ。いずれにせよ、KACの公式ルールだけでは飽き足らず勝手にルールを増やしている、みたいな感じになりますが……。

 近況ノートやエッセイなどでは、逆にKACイベントについて「大変だった」「疲れた」みたいな感想も目にします。2日なり3日なりの短いサイクルでお題を次々と消化していくのに苦労した、みたいなニュアンスですね。

 そうした方々は、おそらく「お題を与えられて即興で書く」みたいなことは苦手で、でも苦手であっても好きだから頑張って参加しているのだろう。今まで私は、そのように想像していたのですが……。

 最近ふと別の考えも頭に浮かんできました。もしかしたら苦手とか得意とかではなく、それぞれの「お題」に対する心構えが違うからではないか、と。


 そう考えられるようになったのは、私自身の別の経験から。KACではなく、色々な短編コンテストに応募する際の心構えの変化です。

 少し前にも書いたように、私は元々コンテスト応募に関しては「受賞なんて夢に過ぎない」「一次選考だけでも通過できたら嬉しい」という程度のエンジョイ勢でした。

 今でも基本的にはその姿勢なのですが、なまじ短編コンテストで受賞できるようになってくると「このコンテストは受賞したい!」という気持ちで応募する場合も出てきます。

 あくまでも「短編コンテスト」に限った話であり、しかも全てではありません。「なまじ短編コンテストで受賞できるようになってくると」という理屈から考えたら、一度でも受賞できたコンテストの場合に「このコンテストは以前の回に受賞しているから、今回も受賞を目指す!」となりそうなものですが、そうはならないのが自分でも不思議です。

 例えば「エブリスタ」で毎月2回行われている短編コンテスト。昨年1月に一度だけ受賞できたコンテストですが、だからといって「また受賞を!」と肩肘張らずに、毎回気楽に応募しています。与えられたお題に応じて「一応お題に合致するっぽい作品が書けた!」というだけで満足して応募してしまう。これが私にとっての『気楽に応募』です。

 対照的に、最近よく応募している短編公募があるのですが――そちらも毎回お題が与えられるけれど開催は年に数回――、そちらは毎回落選を続けているくせに、なぜか「受賞したい!」という気持ちは強い。おそらく「一次選考を2回続けて通過できたから、次はその上つまり『受賞』を目指したい」という気持ちなのでしょう。そうなると総評に書かれている『真っ先に頭に浮かぶアイディアは、他の方々も思いつくので、まず疑うところから始めましょう』みたいな話を必要以上に意識してしまい、せっかく思いついたアイデアも書き始めることが出来なくなる。結局執筆できなくて応募できなかった、という回もありましたが、それは本末転倒ですよね。とりあえず何かしら応募しておかなければ、受賞どころか一次通過も起こらないのですから。

 最近よく応募する短編コンテストの中には「NOVEL DAYS」の三題噺のコンテストもありますが――これも開催は年に数回――、これはいきなり最終結果発表のタイプで、そもそも受賞は絶対に無理なレベル。なぜ「受賞は絶対に無理」と感じるかというと、結果発表の際に書かれている受賞作品の好評を見ると、かなりレベルの高いものが求められているようだから。具体的には「三題噺」の三題それぞれのお題の使い方です。自主企画などの三題噺では「三題それぞれのお題を組み込んでいればOK」という程度の認識で書いていましたが、コンテストとなると三つのお題それぞれを深く掘り下げる必要が出てくるみたい。そこまで頑張って書こうとしたら大変なので、私自身は「三題それぞれのお題を組み込んで」という程度で、それこそカクヨムの自主企画くらいの気軽さで応募しています。


 当たり前の話ですが、気楽に書いて気楽に応募するだけならば楽しいコンテストも、ある程度真剣になったら執筆も応募もただ楽しいだけでは出来なくなるのですよね。

 ここでKACイベントに話を戻すと、KACイベントはコンテストではありません。一応【レギュラー賞】のように読者評価を競う賞も用意されていますし、また例えば一昨年には「数値指標にかかわらず、担当が最もオススメしたい1作品に5000リワード」という賞もありました。それらをコンテスト的に捉えることも出来るでしょうが、少なくとも私は「単なるイベントだから、コンテスト以上に気楽に参加できる」というスタンスでKACを楽しんできました。

 自主企画に関して「読者のコメントを楽しむ」という部分があったように、KACも読者の反応は楽しみ。コンテストみたいに自分の作品と他人の作品とを比べるのでなく、むしろ自分の作品同士で「この作品は興味深いコメントをいただけた」「あの作品はほとんど反応すらなかった」みたいな比較をする感じでしょうか。

 あくまでも私のスタンスに過ぎませんが、私は「一応お題に合致するっぽい作品が書ければOK」という程度の気楽な意識で、KACに参加してきたわけです。どうせコンテストではないですし、そもそもコンテストですら気楽に執筆・応募することの方が多いくらいですからね。

 しかしカクヨムユーザーの中には、それこそ先ほどのコンテストの例で挙げたように「ただお題を消化するだけでなく、そのお題を深く掘り下げる必要がある」「真っ先に浮かぶアイディアは他のユーザーと被るから捨てるべき」みたいな厳しさでKACに臨んでおられる方々もいるのかもしれない。それならばKACイベントで皆勤するだけで「大変だった」「疲れた」となるのも仕方がない。

 最近ようやく、そんなことを考えるようになりました。


 どんなイベントであれ、そこに臨む姿勢は人それぞれですからね。後になって「しんどかった」と思うくらいならばもっと気楽に参加すればいいのに……とも思いますが、でも厳しくするからこそ大きな充実感が得られるのだろう、というのも理解できます。

 自分には出来ないことだからこそ、そういう厳しい姿勢でKACに参加する方々は凄いなあ、と改めて尊敬の念も湧いてくるのでした。

   

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