カクヨム健全化の方向へ!(後編)
私が児童向けの
そもそも私がライトノベルという言葉を初めて聞いたのは、大学生になってからでした。ジュヴナイルと呼ばれる小説ならば、十代の頃それなりに読んだ覚えがありますが、当時「ライトノベル」という呼称はまだなかったはず。
Wikipediaの「ライトノベル」の項目には「80年代後半は『ファンタジー小説』や『ヤングアダルト』に括られていた」とか「一説によれば『ライトノベル』の命名は1990年初め」とか書かれているので、だいたいそんな感じなのでしょうね。
そうすると、私が初めて読んだラノベは、富士見ファンタジア文庫の「スレイヤーズ」シリーズになります。
確か最初の一冊は友人女性の家で読みました。彼女の本棚に小説はほとんど並んでいませんでしたが、彼女は、アニメ版スレイヤーズの主人公を演じていた声優の大ファン。それで原作にも興味を持ったのかもしれません。
ただし彼女は第一巻しか持っておらず、その時はそれだけでしたが……。その後、バイトでやっていた家庭教師の教え子――確か八歳年下――から借りる形で、二巻以降の数冊を読みました。そこからハマって、その続きだけでなく既読の一巻から全て買って読み直したのが、私と「スレイヤーズ」シリーズの出会いでした。
ちょうど当時は、メディアミックスの成功例として「スレイヤーズ」がラノベの代表みたいな感じだったはず。私の場合、上述のような経緯だったので「普段あまり本を読まない大人や、十代の子供でも楽しめるのがライトノベル」という認識になりました。「ああ、今はジュヴナイルをライトノベルと呼ぶようになったのだな」と思ったものです。
誤解されると困るので一応強調しておきますが、別に「子供の読みもの」と言いたいわけではありません。「大人でも童心にかえって楽しめるもの」という感覚です。
とにかく、私にとってのライトノベルはそんな感じなので、エロで釣るようなラノベは「何か違うな?」と思ってしまいます。エロはエロで嫌いではありませんが、そういうのは「童心にかえる」上では邪魔になる、みたいな感覚でしょうか。
まあ「エロはエロで嫌いではありません」と書いたように、絶対的に否定的というわけではないのが、ちょっと複雑なところです。
それこそ十代の頃に読んだジュヴナイルでは、それなりにエロ描写もあって、当時ドキドキしながら興奮していたような記憶もあります。でも、今思えばそれらは「ジュヴナイル」ではなく「ジュヴナイルも書いている作家が大人向けに書いていた新書を、勝手に『ジュヴナイル』と誤解して読んだ」というだけかもしれません。
とりあえず、先ほどの「スレイヤーズ」シリーズを例として考えると、直接的なエロ描写は一切ありませんよね。だから子供でも健全に楽しめる読みものです。
短編シリーズの方には露出度の高い衣装を着た女性キャラもレギュラーで登場しますが、そんなものを見ても大人は興奮しないでしょうし、小さな子供にとっても単なる服の薄い人。興奮するとしたら、それこそ「箸が転んでもおかしい」の男性版で、些細なことでも妄想逞しく興奮してしまう思春期男子くらいでしょうか。
あえて「思春期男子ならば興奮するかもしれない」みたいな言い方をしたのは、その程度のエロならばライトノベルでも許容範囲だと感じているからです。
ここまで読者の立場から考えてきましたが、いざ自分が書いてきたライトノベルを振り返ってみると……。
カクヨムで投稿した異世界ファンタジーでは「エロで釣る」をやった覚えはないのですが、他サイトの挿絵つきラノベの連載で「女性の入浴シーンがちょうど挿絵回に来るよう物語展開を調節した」というのが一回ありました。その時はその場面をカラー挿絵にしていただきましたし、原則として描かれるキャラは二人までのところを、小さな後ろ姿の一人も含めて三人描いていただきました(もちろん局部や胸の先端などはお湯や湯気で隠れていました)。
いわゆるサービスシーンというやつだと思いますが、書き手側になるとこれがOKなのは別にダブルスタンダードではなく、これも「その程度の裸を見ても大人は興奮しないし、小さな子供から見てもお風呂で裸なのは当然(お母さんやお父さんと一緒にお風呂に入るようなもの)。これで興奮するのは思春期の……」みたいな感覚なのでしょう。
なんだか上手く説明できた気もしませんが、私の中での線引きや基準は、そんな感じになっています。
しかし……。
最近はかなり直接的なエロ描写のあるラノベも存在するのですよね。そういう噂はよく聞きますし、実際に私が戦闘描写や成長展開などを気に入っているライトノベルのシリーズでも「本番行為さえなければいい」と言わんばかりに、エロ描写がバンバン出てくるものがあります。「戦闘描写や成長展開などを気に入っている」ので一度目は普通に読みますが、再読の際にはエロ場面だけ飛ばして読むほどです。
そう、たった今「再読の際にはエロ場面だけ飛ばして読む」と書いて改めて実感しましたが、やっぱり私は、ラノベの中のエロ展開は好きではないのですね。
WEB小説も多くはいわゆるラノベだと思いますし、作品内容をあらすじ的にまとめた長文タイトルも多いはず。エロで釣るラノベならばタイトルの時点でそれが露骨に表されるでしょうし、長文タイトル以外にキャッチコピーというものもあります。
そういうのが好きではない私にとって「投稿作品のタイトル、キャッチコピー、あらすじ等で過度に性的な表現を使うことはお控えください」という今回の方向性は、個人的に好ましく感じられるのでした。
……と、個人的な感性の話だけして終わっても面白くないので。
今回のお知らせに対する他の方々の反応を知りたくて「近況ノート新着記事」一覧を見ていくと、今回のお知らせに関する言及が早速いくつかありました。
どの程度で「過激に性的」なのか、そこが具体的にわからないと言葉狩りに繋がる恐れがある、と懸念しておられる
例えば「巨乳」とか「襲われる」という言葉。これは変えた方がいいだろうか、みたいな話です。
巨乳という言葉は大きな胸を示すだけで、性的なニュアンス以外でも使われるはず。「襲われる」も性的な「襲われる」以外に「戦争で敵軍に襲われる」とか「(異世界ファンタジーで)騎士や冒険者がモンスターに襲われる」という使い方もあります。
だから大丈夫だろう、みたいな話でしたが……。
それぞれ単独では問題ないとしても、これが『巨乳の幼馴染に毎晩襲われます!』みたいなタイトルになったら、もうそういう意味が真っ先に思い浮かびますよね。
それぞれ単独でもアウトにされるのであればそれこそ言葉狩りですが「前後の文脈も含めたらアウト」というのをアウトにするのは、言葉狩りではなく真っ当な適用例だと思います。そうやって是非が判断されて、カクヨムがどんどん健全化されていくと良いですね!
……と他人事みたいに考えてしまいましたが、そもそも私の投稿作品は大丈夫なのでしょうか。前編の最初の方で「私自身R15作品も投稿していますし」と書いたように、ラノベっぽくない作品ではエロもありますし、タイトル詐欺ならぬキャッチコピー詐欺でそれっぽい言葉を含めたものもあったはず。
例えば今パッと頭に浮かぶだけでも『セックスと髪と黒いゴム』とか『「私をおかずにしても構わないから」と彼女は言った』とか。
前者の「ゴム」は髪留めのゴムなんですけど「セックス」と並べば違う方が想定されますよね。それこそ「前後の文脈も含めたらアウト」でしょうか。
後者の「おかず」もそれ単独ならば一般用語なのに「私をおかずに」とした途端、違う意味になってしまう。
少なくとも、この辺りのキャッチコピーは変えておいた方がいいかもしれませんね。
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