サポパス開始に関連して ――他サイトと比較する形で――(後編)

   

「前編」の続き……というより、余談のような「後編」です。

 一応は「小説投稿サイトでお金を得る」という件に関わりますが、一般的なものではなく、かなり個人的な話なので。


 2021年12月1日に「ノベリズム」で有料販売が実装された際、それと同時に告知されたのが『契約作品につきまして』というものでした。

 その冒頭部を引用してみますと……。


>現在連載している契約作品について、アクティブ数が弊社の想定する数字を達成することが難しく、ノベリズム自体の運営方針を見直さなければならない状況となっております。

>これまで契約作品においては、数話に一枚4色フルカラーの挿絵を、ノベリズム側から掲出しておりましたが、今後は掲出の継続ができなくなります。


 小説投稿サイトのお知らせで「運営方針を見直す」という言葉が出てくるのは一大事ですね!

 具体的には、挿絵がなくなるという話で、これも大問題です。

 なにしろ契約作品のアピールポイントの一つが、数話に一枚のペースで入るカラー挿絵だったのですから!

 この「カラー挿絵」については、具体例としてイラストそのものを見ていただくのが、一番手っ取り早いと思います。幸い私は、2021年の秋頃「ノベリズム」の方から「既存の挿絵のうち2枚を、SNSやブログなどで宣伝に使って構わない」と言われましたので、2021年10月25日に、カクヨムの近況ノートでも2枚のイラストを掲載していました。


https://kakuyomu.jp/users/haru_karasugawa/news/16816700428378916361


https://kakuyomu.jp/users/haru_karasugawa/news/16816700428378942517


 見ていただけましたでしょうか?

 このようなカラー挿絵が、だいたい6話に1回ずつ入る。それが「ノベリズム」の契約作品だったのです。私の作品の場合、連載1年目は週6更新だったので毎週1枚、2年目は週3更新になったので2週間に1枚のペースでした。

 それが今後は、なくなってしまう!

 お知らせの中には、


>契約作品のイラストをお楽しみにしていただいているユーザーの皆様には大変申し訳なく存じております。


 という文面もありましたが、作者である私自身が、読者の方々以上に楽しみにしているイラストでした。本当に残念な話です。


 ラノベはイラストが大事という言葉がありますが、それを実感する連載でした。

 もしも投稿小説の拾い上げやコンテスト経由の書籍化ならば、まず先に作品があって、そこにイラストをつけていただくのでしょう。でも契約作品は違いますからね。WEB連載を始める段階で、既にキャラデザや表紙絵の用意は終わっています。挿絵が入るエピソードに関しては、WEBに上げる際、一緒にイラストもアップする形です。

 イラストを描いていただく前に、もちろん原稿そのものは担当様やイラストレーター様に渡しています。でも私としては、その原稿を公開する前にイラストを見られるので、イラストに合わせて文章を修正することも可能。イラストと一緒に作っていく、という気持ちで執筆していました。

 特に、キャラデザに描き添えられた武器やアイテム、あるいは、挿絵ラフと一緒に送られたきた――その挿絵のためにデザインされた――新規スケッチ。そういう小物から「これって、こういう使い方が出来るんじゃないか?」と、後々の展開のために新しいアイデアが浮かぶこともあり、本当にイラストに助けていただきました。

 こういうのは、まさに経験してみないとわからないものですね。ただ一人で文章を書いていただけでは想像できない出来事がいっぱいでした。


 先ほど述べたように、特に連載1年目は週6更新だったので、挿絵は毎週1枚です。

 私が6話分の原稿を担当様に送り、担当様と私とで挿絵の場面を打ち合わせてから、担当様がイラストレーター様に発注。イラストレーター様によるラフ画が担当様を介して送られてきて、それを私が確認の後、イラストレーター様が完成版を描いてくださり、また私のところへ。このサイクルが毎週行われていたわけです。

 結局、私は全部で3人の担当様とお仕事をさせていただきました。挿絵場面に関して担当様から発案になるのか、作者である私からになるのか、その辺りはそれぞれ少しずつ異なりましたが、挿絵場面やその詳細――描かれるキャラの人数、ポーズや表情、構図や背景など――を私と担当様とで打ち合わせて決めるのは、どの担当様の場合も共通でした。

 そもそも、正確に6話ずつではないにしろ、だいたい6話に1枚イラストを入れる以上「おそらくこのエピソードに挿絵が入るだろう」というのは、もう執筆段階で想像が容易です。というより、だんだん慣れてくると、執筆段階で挿絵場面を用意する書き方になっていきました。


 私の作品は、変身ヒーローである主人公の他に、4人の女性キャラ――イメージカラーは桃色ピンク黄色イエロー青色ブルー緑色グリーン――がレギュラーです。ハーレムものとは違うので主人公の相手役ではなく、あくまでも作品のヒロインとしての複数ヒロインです。

 これらのキャラの中から、なるべく偏らないように、また、それ以前の挿絵とは構図や表情などが被らないように、色々と気をつけながら、原則として1人か2人を描いていただく形でした。つまり、そうなるように執筆段階で挿絵場面を作中に挟み込む、ということです。

 長い連載ですが、だいたい十数万文字ごとに一つの事件が解決して、一つの章が終わります。それぞれの章でメインヒロインを一人ずつ想定、ただし例外として最初の章は主人公がメイン、途中にも主人公メインの章を置く、という構成です。

 それを踏まえて、各章のイラストに描かれたキャラは、以下のようになっていました。


(第1章 メインは主人公)

 挿絵1枚目 黄色イエローヒロイン(少し小さく桃色ピンクヒロインも)

 挿絵2枚目 青色ブルーヒロイン

 挿絵3枚目 緑色グリーンヒロイン

 挿絵4枚目 桃色ピンクヒロイン(おまけで敵キャラも)

 挿絵5枚目 青色ブルーヒロイン


(第2章 メインヒロインは桃色ピンク

 挿絵6枚目 桃色ピンクヒロイン

 挿絵7枚目 黄色イエローヒロイン

 挿絵8枚目 桃色ピンクヒロイン

 挿絵9枚目 緑色グリーンヒロイン(小さく主人公も)

 挿絵10枚目 桃色ピンクヒロインと主人公

 挿絵11枚目 桃色ピンクヒロイン

 挿絵12枚目 主人公の変身バージョン


(第3章 メインヒロインは黄色イエロー

 挿絵13枚目 黄色イエローヒロイン

 挿絵14枚目 緑色グリーンヒロイン

 挿絵15枚目 黄色イエローヒロイン(おまけでモブキャラも)

 挿絵16枚目 桃色ピンクヒロインと青色ブルーヒロイン(近況ノート掲載イラスト1枚目)

 挿絵17枚目 主人公

 挿絵18枚目 青色ブルーヒロインと緑色グリーンヒロイン

 挿絵19枚目 桃色ピンクヒロインと緑色グリーンヒロイン

 挿絵20枚目 黄色イエローヒロイン

 挿絵21枚目 黄色イエローヒロイン


(第4章 メインヒロインは緑色グリーン

 挿絵22枚目 青色ブルーヒロインと主人公

 挿絵23枚目 緑色グリーンヒロイン(近況ノート掲載イラスト2枚目)

 挿絵24枚目 緑色グリーンヒロインと主人公

 挿絵25枚目 青色ブルーヒロインと黄色イエローヒロイン

 挿絵26枚目 桃色ピンクヒロイン

 挿絵27枚目 主人公の変身バージョン


(第5章 メインヒロインは青色ブルー

 挿絵28枚目 緑色グリーンヒロイン

 挿絵29枚目 桃色ピンクヒロインと青色ブルーヒロイン

 挿絵30枚目 主人公

 挿絵31枚目 青色ブルーヒロイン

 挿絵32枚目 桃色ピンクヒロインと黄色イエローヒロイン

 挿絵33枚目 黄色イエローヒロインと主人公


(第6章 メインは主人公)

 挿絵34枚目 桃色ピンクヒロイン

 挿絵35枚目 主人公の変身バージョンと敵

 挿絵36枚目 主人公

 挿絵37枚目 黄色イエローヒロイン

 挿絵38枚目 青色ブルーヒロイン

 挿絵39枚目 黄色イエローヒロイン

 挿絵40枚目 桃色ピンクヒロイン

 挿絵41枚目 緑色グリーンヒロイン

 挿絵42枚目 主人公の変身バージョン

 挿絵43枚目 桃色ピンクヒロインと黄色イエローヒロイン


(第7章 メインヒロインは黄色イエロー

 挿絵44枚目 黄色イエローヒロイン

 挿絵45枚目 青色ブルーヒロイン

 挿絵46枚目 桃色ピンクヒロインと緑色グリーンヒロイン(後ろ姿で小さく青色ブルーヒロインも)

 挿絵47枚目 黄色イエローヒロイン

 挿絵48枚目 主人公

 挿絵49枚目 黄色イエローヒロイン


(第8章 メインヒロインは緑色グリーン

 挿絵50枚目 青色ブルーヒロインと緑色グリーンヒロイン

 挿絵51枚目 緑色グリーンヒロインと主人公


 実は、こうしてまとめたのは初めてなのですが(笑)、具体的に見ていくと、上述の『なるべく偏らないように』というのが伝わるでしょうか?

 もちろん、完全に順番で回すのは無理なので、あくまでも『なるべく』です。特に各章のメインヒロインは、あえて重点的に挿絵場面を用意していました。

 まだ第8章の序盤の段階で挿絵は終わってしまいましたが、原稿執筆の時点ではそれを知らず、幻となった挿絵52枚目は、黄色イエローヒロインと桃色ピンクヒロインの組み合わせを考えていました。これまでも同じ挿絵に何度か収まっているコンビなので、以前とは大きく違うイラストになるような場面を用意したのですが……。

 打ち合わせ段階で終わりになってしまい、非常に残念です。該当エピソードを更新する際「本当は、ここにイラストが入るはずだった」と考えてしまい、胸にぽっかり穴が空いたような、あるいは幻肢痛のような、そんな感覚を抱いたのを覚えています。

 その6話後でも、もう挿絵のために場面を用意する必要はないのに「順番としては、今度は青色ブルーヒロイン。挿絵にするとしたら、ここかな?」などと、ついついイラストを想像しながら執筆していたくらいです。


 結局イラスト付きの連載は1年と少しだけでしたが、このように、とても貴重な経験をさせていただきました。私の執筆活動において、おそらく二度と体験できない出来事でしょうね。

 先ほどの「ノベリズム」告知に話を戻しますと、その最後には、


>そして、以上の状況に伴い、一部の作品については、12/15(水)のメンテナンス以降全話無料公開することになります。


 という文章もありました。

 有料作品の無料化。単純に読者を増やすことだけを考えれば、確かに無料にしていただいた方が良いのでしょうが……。とりあえず私の作品は、今まで通りにしてもらっています。

 まあ有料といっても「ノベリズム」の場合、スマホアプリを使えば契約作品の有料パートも、ある程度は無料で読めますからね。アプリにログインするだけで1日20ポイント、さらに広告動画の視聴で20ポイントもらえるのが1日3回。合計で毎日80ポイント、つまり80円相当の作品までは無料で読めるシステムです。

 だいたい1エピソード十数円程度で販売されているので、80ポイントあればそれだけで5話くらいは読めます。毎日のように更新されている作品を5つくらいは追いかけても大丈夫、ということですね。

 実際には、12月の制度変更に伴い、契約作品の更新頻度はかなり下がっているようです。『毎日のように更新されている作品』なんて、もう存在していないと思います。週3更新の私の作品でも、更新頻度は高い方でしょう。


 元々「ノベリズム」は、契約作品を特色として押し出していたサイトだったはず。カクヨムロイヤルティプログラムで表示されるようなWEB広告だったり、秋葉原の駅構内のサイネージ広告だったり、深夜アニメのテレビCMだったり、宣伝にも力を入れていたようです。特にWEB広告に関しては「私の作品も表示された!」というのを、以前にこのエッセイでも報告しましたね。

 でも「宣伝に力を入れる」ということは、それだけお金がかかるということ。それに見合う売り上げが得られなければ、色々と続けられなくなるわけです。

 ……と、他人事の口調で淡々と書ける話ではないのですけどね。そのような「売り上げが悪い」作品を連載してきた作家としては、責任の一端も感じております。


 そんなわけで『他サイト』の一つの例だった「ノベリズム」は、大きな方向転換を余儀なくされました。でもその結果「ユーザー主導で自由に投稿作品を販売できるようになった」というのは、ある意味、小説投稿サイト全般の流れには乗っているのでしょう。

「後編」は個人的な経験が主となり、記事タイトルからは大きく話が逸れてしまいましたが……。一応、元々の話題に戻ってこられたような気がするので、今回の話は、これで終わりにしたいと思います。

   

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