8回目お題と9回目お題、どちらも年寄りには難しい?

   

 先週、先々週に引き続いて、水曜日と金曜日の話。KAC2021のお題、8回目と9回目についてです。


 まずは水曜日、8回目のお題は「尊い」でした。

 時期的には「仰げば尊し」でしょうが、「尊し」ではなく「尊い」なので、私が見た瞬間に思ったのは「これって若者言葉ではないか」ということ。

 最近というか少し前からというか、よく見るようになった言葉です。でも本来の意味とは違うニュアンスっぽい使われ方であり、現在「尊い」がどのような意味で使われているのか、私にはよくわかっていませんでした。

 こういうの、時代遅れの年寄りには苦手なのですよね。実年齢もそうですが、精神的には、実年齢以上の年寄りな私です。世情にはついていけない自覚があるからこそ、作品舞台もファンタジーや昭和に逃げがちです。

 よっぽど今回はパスしようかと思いましたが、せっかくここまで皆勤のはずなので、それはもったいない。そこで、良い機会なので「若者言葉としての『尊い』がどのようなニュアンスなのか」を調べてみました。まあ『良い機会なので』なんて大袈裟な言い方をしましたが、実際には、WEB検索するだけで済みますからね。

 どうやら正確には『若者言葉』ではなく、オタク用語だった様子。ならば物語にもオタクを登場させて、私が思っていた本来のニュアンスとオタク用語的なニュアンスの違いを軸にして……。

 こんな物語が出来上がりました。


『友人Kの好きなタイプは』

https://kakuyomu.jp/works/16816452219287720380


 続いて9回目。月曜日や水曜日よりも難しいお題が出るのではないか、と噂されている金曜日です。

 ただし個人的には、少し気持ちに余裕のある金曜日です。「KAC2021 7回目お題、月曜日なのに3つも書いてしまった……」と題したエッセイ記事で告白したように、最近の私は、他サイト連載作品の原稿が木曜日に一区切りつく、というパターンですからね。

 そちらの原稿、毎週毎週「今週こそは、週末あるいは週明けまでに」と思っているのに、結局今週も無理でした。それどころか今週は「1週間分の原稿の後半3話分を木曜日1日で書いて、さらにその日のうちに6話分まとめて推敲して、ようやく終わらせる」という状態でした。この執筆ペースを毎日続けられるのであれば、2日で1週間分の原稿が仕上がるはずなのですが、それが出来ないのが人間というもの。それとも、追い詰められないと出来ない私が怠け者なだけなのでしょうか。

 ともかく、そんな木曜日の翌日である金曜日。気分転換として、長編ではなく短編が書きたい気分です! だからヤル気満々でKAC2021に臨んでいるのですが……。


 9回目のお題は「ソロ〇〇」。

 どうなのでしょう、これ? 先々週の「直観」や先週の「私と読者と仲間たち」と比べれば、難易度は下がっているような気がします。でも8回目の「尊い」と同じで、これまた年寄りには難しいお題だと感じました。

 色々な受け取り方はあるのでしょうが、私が「ソロ〇〇」と聞いて頭に浮かんだのは、ひとりカラオケとか、ひとり焼肉とか。本来は複数で行くべき場所へ一人で行く、という風習です。

 私が若い頃はなかったのですよね、そういうの。例えば一人でボーリングへ行くのは、マイボールやマイグローブを持っているレベルの上手な人だけであり、私も一人ボーリングしたかったのですが「下手の横好きなのに行くのは恥ずかしい」と思って躊躇していました。カラオケも一人で行って好き勝手に歌いたかったのですが、行けませんでした。

 でも今ならば、普通に行ける時代なのでしょうね。私自身が健康な体ではなくなったので、もうそういうのは無理ですが……。今の若者は一人遊びを楽しんでいるのだろう、と想像しています。

 そんな感じで、自分自身の経験を活かした「ソロ〇〇」は無理なので、もう完全に空想に走って、私とは異なる立場の「ソロ〇〇」を想定して書きました。


『そろそろしたいソロデビュー』

https://kakuyomu.jp/works/16816452219322026832


 とりあえず、ひとつは出来た形です。

 でも、せっかくの金曜日。個人的な余裕云々だけでなく、公式的にも「金曜ボーナス回」ですからね。

 もっと書きたい、と思いました。

 ただし上述のように、正攻法では書けそうにないので、少し言葉遊びに走って……。

 例えば「〇〇」の部分を3文字にして最後が「ろ」で終わる形にしたら、全体は5音で、しかも「ろ」で韻を踏むっぽいから、語感が良いのではないか。その方針で頭に浮かんだ言葉が『ソロこんろ』。作品タイトルとしては悪くない気がしましたが、肝心の物語が全く思いつきません。コンロひとつでテキパキ料理する話でしょうか。

 同じような路線で『ソロ早漏』。なんだかR15な内容になりそうです。去年は下品な話も平気でKACに出しましたが、なんとなく今年はそんな気分ではないのでパス。「早漏」を変換する際に「候」「早老」も出てきたので『ソロで候』とか『ソロ早老』とかも考えたのですが、これも『ソロこんろ』同様タイトル止まりで、内容まで行きつきませんでした。


 そもそも言葉遊び云々を言うのであれば、最初にお題を見た瞬間にチラッと頭に浮かんだのが『怪傑ソロ』という言葉でした。

 さらに『怪傑』から昔の特撮ヒーロー番組を思い出して、『怪傑ソロ』の口上まで考えてしまいました。「そろっと参上、そろっと解決。人呼んで快傑ソロ!」みたいな感じです。

 異世界ファンタジーの冒険者あるいは変身ヒーローを主人公にして、他の者たちは集団で活躍するのに主人公だけはソロ活動。一人では情報入手にも手間取る分、事件の現場にも遅れてやって来て、他の者たちから「そろそろあいつが来る頃か」と馬鹿にされる……。

 でもこれは、検索したら『快傑ソロ』が使い古された名称だったので、放棄したのです。それに、これだけでは、私自身が納得出来るオチになりませんし。


 特撮ヒーロー番組ではないですが、「ソロ〇〇」を「ひとり〇〇」に置き換えると、他にも思い出すテレビ番組がありました。『将軍〇〇一人旅』みたいな時代劇があったなあ、という曖昧な記憶です。

 検索してみたら、その番組タイトルは『一人旅』ではなく『忍び旅』でしたが、旅する主人公を一人にすれば「ソロ〇〇」になりますよね。ただし時代劇にすると時代考証的にボロが出そうなので、異世界ファンタジーに置き換えて……。

 物語冒頭、酒場あるいは宿屋に駆け込む女性主人公。そこで聞いたのが、領主である伯爵家の令嬢様の一行いっこうがちょうどこの街に滞在している、という話。大名行列みたいな感じです。

 それから何やかんやあって、伯爵令嬢の一行いっこうが事件に巻き込まれます。命を狙われる、的な感じです。伯爵令嬢の一行いっこうには近寄らないまま、同じ街にいる女性主人公が事件を調査。黒幕のところへ乗り込み「余の顔を見忘れたか」パターンで、実は自分が令嬢本人であること、大名行列の中にいる令嬢は魔法で用意した影武者であることを、黒幕と読者に明かします。

 事件解決後、伯爵令嬢の一行いっこうが街を出るのを追うようにして、主人公も街を後にします。一行いっこうには合流せず、気楽な一人旅を続ける形で、目的地に辿り着く直前に影武者と入れ替わればいいや、と思いながら。

 ……というストーリーであれば。勧善懲悪の時代劇のフォーマットにのっとれば良いので、個人的には納得できる起承転結になるはず。これはこれで書きやすそう。

 でもKACイベントとしては、残念ながら、ボツにせざるを得ませんでした。これを4,000文字以内に収める自信、全くありませんから。

 素直に書いたら長めの短編、あるいは想定より長くなる私なので、中編くらいでしょうか。いっそのこと「影武者が調子に乗って、とんでもない行動を連発するせいで、伯爵令嬢の評判が悪くなり、庶民からは悪役扱い」という要素を加えたら、悪役令嬢ものと言い張れるでしょうか。その場合、連作短編的な長編にするのも面白いかもしれません。

 ともかく、これはこれでいつか書いてみたい気はしますが、少なくともKACでは書けないアイデアなのでした。


 ではKACイベントとしては、どうするのか。

 いっそのこと「ソロ」本来の意味に立ち返って、合唱のソロの話をしようか。在米時代にアマチュアの合唱団のコンサートで、テナーソロを歌った経験があります。数分程度ですが、曲の中の一部ではなく一曲丸々テナーソロの曲が演目に含まれていて、観客は確か数百人くらいの規模。練習よりもむしろ本番の方が緊張しなかった、というエピソードなのですが……。

 うまくアレンジして現代ドラマに出来る気がしませんでした。でも、そのままエッセイにするにしても、独立したエッセイではなく連載中の合唱エッセイに入れるべき話でしょうし、そもそもKACイベントにエッセイで参加するのはもったいない気がします。お題から物語を捻り出すのが、こういうイベントの面白さだと感じているので。


 そんなわけで、あれもボツ、これもボツ。

 結局「ソロ〇〇」2作目は、こんな作品になりました。


『ソロ番アルバイト』

https://kakuyomu.jp/works/16816452219324240968


 9回目お題の応募期間は月曜日の午前11:59まで続いていますが、もうこれ以上、私には書けないでしょう。

 そうなると、残るは月曜日の10回目のみ。今年のKACイベントも、残りわずかですね!

   

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