一年目・後半

「どうせ読んでもらえない」と決めつけずに、本当かどうか試してみよう ――カクヨムコンについて・その2――

   

 あと一ヶ月半で、カクヨムコンの応募期間が始まりますね。

 その時期になったら、カクヨムの雰囲気も変わるのでしょうか?



 中間総括その3の中で、『「第5回カクヨムWeb小説コンテスト」ではなく、いくつかの短編を「カクヨムWeb小説短編賞2019」の方に応募するだけ』という方針を記した私でしたが……。

 あの後、少し考えが変わりました。

 

 まず、カクヨムコンに関するエッセイをいくつか拝見する中で、読者選考期間中の評価の増加をデータ化した話や「★一桁でも中間選考を通過した例が結構ある」というのを目にして。

「それならば、一応、応募してみようかな?」という気持ちが出てきたのでした。

 もちろん、読者選考期間だけで『★10』を得るというのも、私には高いハードルです。それでも「とりあえず参加してみて、期間中の★の増え方をチェックして『とても★10には届きそうにない』となってから、ギリギリで参加を取りやめるのもアリかな」と、少し前向きになったのです。

「このエッセイのおかげです! ありがとうございました!」と書き込んだほどだったのですが……。


 その後。

 感想返信で「あくまでも過去の話であり、応募要項は毎年少しずつ変わるので、事情は違うはず」というお言葉をいただきました。私も気にしていた(中間総括その3でも引用した)ように『読者選考によるランキング上位作品と編集部からピックアップされた作品が』という記述がカクヨムコンにはない、という点です(今確認してみたら、第4回や第3回の応募要項でも『編集部によるピックアップ』は書かれていなかったようですが)。

 また、同じ感想返信の中で「とりあえず10万文字を書き切ること」というアドバイスもいただき、その時点で、私は大きな誤解に気づきました。


 あちらこちらで見られる、「カクヨムコンに参加しようかな、どうしようかな」という方々。あくまでも「これから書く作品」や「今書いている作品」に関する話だったのですね!

 私の場合、わざわざカクヨムコン向けに新作を書くつもりはなく、手持ちの『10万文字以上』で参加するかどうか、という話でした。

 もちろん、中間総括その3で記したように、『読者選考期間中の読者による評価が、ランキングに反映されます』というシステムである以上、「既に完結している作品は、埋もれてしまって、読者選考期間中に読まれる可能性も、評価される可能性も低い」というのはわかっています。わかった上で「それでも少しくらいは」と考えていたのです。

「ああ、やはり『完結済』では、出すだけ無駄なのだろうな」

 と、最初のように消極的な気持ちになったところで。

 ふと、前向きだった一瞬に自分の考えていた『期間中の★の増え方をチェック』というのが、改めて心に引っ掛かりました(『読者選考期間中の評価の増加をデータ化した話』が強く印象に残っていたせいもあるのでしょう)。

 これ、読者選考を通る通らないとは別に、興味ある点ではないでしょうか。つまり「既に完結している作品は、埋もれてしまって、読者選考期間中に読まれる可能性も、評価される可能性も低い」という想定が、事実なのかどうか、という点です。


 カクヨムというサイト全体が、カクヨムコンに向けて盛り上がるのであれば。

 たとえ『読まれにくい』完結済作品であっても、ただ「カクヨムコンに応募している」というだけで読んでくださる方々もいるのではないか。

 その場合「読者選考を突破して審査員に読んでもらえる」は叶わないとしても、「カクヨムコンに応募しなければ得られなかったはずの読者を得られた」という結果に繋がるわけです。

 そのような読者の存在、普通は判別できないわけですが……。

 そこで『期間中の★の増え方をチェック』です。


 現在考えているのは、次のような方法です。

 まず、応募開始一ヶ月前(10月29日)に★の数などをチェック。

 続いて、応募開始日(11月29日)と応募開始一ヶ月後(12月29日)にもチェック。

 この三点での★の数を比べれば「開始直前一ヶ月と開始直後一ヶ月で、★の増え方にどれくらい差があるか」がわかるわけです。


 例えば、10月29日に★10だったものが11月29日に★15、12月29日に★20になった場合。

 応募しようがしまいが、一ヶ月で★は5個増えるということです。

 あるいは、10月29日に★10だったものが11月29日に★15、12月29日に★25になった場合。

 応募直前一ヶ月の増加が★5、応募直後一ヶ月の増加が★10ですから「応募したことで倍増!」と思えるわけです。

 ただし、後者のケースであっても「実は応募していなくても★増加は10だった」という可能性は残ります。「カクヨムコンに応募したせいで増えたのではなく、そもそもカクヨムコンの時期はサイトが活発になって、全体的に★は増えやすくなる」という可能性です。

 その可能性を考慮するならば、陰性対照ネガティブ・コントロールが必要でしょう。ちょうど、ウイルスの研究で感染の影響を調べる際に、生理食塩水を接種したサンプルを用意するのと同じ話です。

 今回の場合「同じく完結済の長編で、カクヨムコンには応募しないもの」というのを用意したら(同様にして前後一ヶ月の★増加を比較したら)、「サイトが活発になったために増えた★」というのがわかるので、それが陰性対照ネガティブ・コントロールになるでしょうね。


 しかし。

 残念ながら、「同じく完結済の長編で、カクヨムコンには応募しないもの」というのを用意できるほど、私は手持ちの作品数が多くありません。

 そもそも、こういう実験をするのであれば、一つの作品を一つのサンプルにするのは危険です。動物実験におけるマウスの個体差、みたいな話です。

 以前、仕事で動物実験をしていた頃、確か1グループ最低5匹は使ったような記憶があります。それを真似するならば、「完結済でカクヨムコンに応募するもの」「しないもの」、それぞれのグループで数作品ずつ用意したいところです。

 でも私が完結させた10万文字以上の作品は、全部で五つ。1グループを形成するギリギリの数ですね。

 そうなると「完結済でカクヨムコンに応募するもの」グループしか用意できません。少し条件が違ってしまって、厳密な対照コントロールにはならないのですが、「カクヨムコンに応募しない作品」全体(連載中とか短編とか)を、陰性対照ネガティブ・コントロールとして扱おうと考えています。


 なお、ここまで★の話をしてしまいましたが、厳密に「読まれたかどうか」ならば、★ではなくてPVなのでしょうね。ですから、同じようにPVの増加に関しても調べようと考えています。


 また、こうした計画の中で、一つ心配な点があります。

 応募規定にある『但し、同じ作品を複数回(複数の部門への重複応募を含みます)応募することはできません』という一文です。

 これは「第4回以前のカクヨムコンに応募した作品は、第5回には応募できない」という解釈でよろしいのでしょうか。

 それとも「一度でもカクヨムで何かのコンテストに応募した作品は、もう応募できない」ということなのでしょうか。

 もしも後者のシステムの場合、応募できるのは『5作品』の中で二つだけになってしまうのですが……。その場合、個体差が大きくて信頼性の乏しいデータになりそうですが、逆に「残り三つをきちんとした陰性対照ネガティブ・コントロールとして使える」という利点は出てくるでしょう。



 以上、なんだか実験の話をしているみたいで、しかも「序論」「材料と方法」に相当する部分のみですから、かなりわかりにくかったと思います。私の考えていることがどれだけ皆様に伝わるのか、ちょっと心配です。

 まあ、こんな感じで「読者選考を通過することを目指す」ではなく、「とにかく一人でも多くの方々に読んでもらいたいから」という方に絞って、カクヨムコンには応募するつもりです。

 完結済で普通ならば★もPVも増えそうにない作品が「カクヨムコンに出しただけで読者が増えたりするのか」を確認するために参加してみる、ということです。これって「カクヨムコンに参加する」というより「カクヨムコンを利用してみる」という感じにも思えて、少し悪い気もするのですが、そこは気にし過ぎなのでしょう。「お祭りだからこういう楽しみ方もアリ」ということで、ご容赦ください。


 ただし、以前に記した「カクヨムより『小説家になろう』の方が、コンテストには応募しやすい」という考えは変わっていません。だから今回、データ取りが終わったら、あちらのコンテストを重視して(二重応募を気にして)、ギリギリで参加を取り下げる可能性も大きいです。

 その「小説家になろう」の方のコンテスト。

 中間総括その3において『おそらく、こちらのカクヨムコンに相当?』と書きましたが、これについても(カクヨムコンに対する参加姿勢が変わったように)、少し考えが変わりました。

 そこで、次回。


「まだ想像でしか知らないカクヨムコンと、一度だけ経験した同時期の他サイトの大きなコンテストとを比較してみる」


 というようなタイトルで、それについて書いてみたいと思います。





 ……と、これで今回は締め括るつもりでしたが。

 大事なことを一つ、書き忘れていました。

 たとえカクヨムコンに応募するとしても、今まで通り自主企画には積極的に参加する、ということです。


 自主企画の『同じイベントに参加している人からの作品への評価はランキングに反映されません』という一文は、おそらくコンテストの読者ランキングにも有効なのですよね?

 だとしたら、真面目に読者選考突破を目指してコンテストに応募するならば、自主企画に参加したら不利ということになりますね。せっかく評価してくださる読者が現れても、その人が同じ自主企画に参加していたら無効票となってしまうわけですから。

 しかし私の場合は、データ取りがメインです。直前一ヶ月の★やPVの増加にせよ、カクヨムコンに応募しない作品(陰性対照ネガティブ・コントロール)の増加分にせよ、自主企画に参加した上での計測です。ならばカクヨムコン参加直後一ヶ月における増加分も、同じ条件で――自主企画に参加した上で――カウントしないと、比較できるデータにならないでしょう。

 あるいは。

 もしも応募直前の一ヶ月から、カクヨムコンに応募しない作品も含めて自主企画参加を停止したら、それはそれで、きちんと『同じ条件』のデータが得られるはずですが……。データ取りだけのために、わざわざ大好きな自主企画を控えるつもりはありません。

 そもそも「本当に読んでもらえないのかどうか知りたい」というための試行なのですから、その先にあるのは「どうしたら作品を読んでもらえるのか」という強い気持ち。ならば、自主企画を避けて読まれる機会そのものを減らしたら、本末転倒ですからね。


 でも、こうやってコンテストと自主企画の関係を改めて考えてみると、小さな疑問が生まれます。

 コンテストガチ勢の皆様は、少なくともカクヨムでコンテストに応募する作品に関しては、読者選考期間中は自主企画に参加しないようにしておられるのでしょうか?

 ならば、カクヨムコンに向けて盛り上がる = みんなが自主企画を避ける = 自主企画が閑散とする……。そんな図式も成り立つのではないか、と少し心配です。

 おそらく杞憂に終わるのだろう、とは思いますけど。

   

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る