大学生になった和佳子は、




 大学生になった和佳子は、親の金で大学の近くにアパートを借りて独り暮らしを始めた。

 授業のない昼下がりだ。本を読みながら、ゆったりとくつろいでいた。

 机の上に置いてあったスマートホンの振動音がして、和佳子は電話に出る。

「はい、和佳子です」

「和佳子かえ? ばあちゃんよ」

「あ、ばあちゃん。どしたん?」

「うん…………あのな、ジョンが死んだんやって」

「ほうなんや。ジョンは長生きしたなあ。たぶん、老衰ってことなんやろうなあ」

「もう年やったからなあ。隣の人が言うには、寝とう思とったら死んどったらしいわ。前の晩は元気だったのにって、隣の坊主がわんわん泣いとってなあ」

「頭の良い犬だったなあ」

「ほうやな」

「連絡ありがとう」

「うん、それだけや。ジョンの墓はうちの裏庭になる予定やけん、また尋ねたって」

「うん、わかった。そうする」

 和佳子は、通話を切る。

 スマートホンを机に置いて呟いた。

「死んだかー……」

 関わりがあるような、ないようなジョンを思い出して、和佳子は首を傾げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る