裏庭の木陰にあった。
ジョンの墓は、実家の裏庭の木陰にあった。
季節は夏だ。
夏の日陰には、蚊がぶーん、ぶーんと唸っている。
「ジョン、おかえり。お隣さんは大切にしてくれたんか? 最期は苦しいなかったか? ……よう懐いてくれとったのに、薄情な飼い主でごめんなあ……」
和佳子は墓前で手を合わせて、ジョンが好きだったアブラゼミを墓標に供えてやる。ジョンは夏になると、庭の柿の木にとまったアブラゼミを追いかけて遊んでいた。
ついうっかりとアブラゼミを食べさせたことがあるのは、親には内緒だった。
和佳子はもう一度だけ手を合わせて、ジョンの墓から立ち去った。
アブラゼミが五月蠅いくらいに鳴いている。
蝉時雨の季節に、ジョンはいなくなった。
了
あとがき
和佳子が考えていたこと、ジョンが考えていたこと。
たぶん、賛否両論非難もあるだろう欠陥だらけの内容です。読む人によって感じるものが違うのではないかと思います。
人間視点で読むと和佳子にむかつくかもだし、犬視点で読むとジョンが切ないのかも。生き物を飼うというのは簡単ではないですね。
ファンタジーであれば、不思議とリードなしであっても糞処理がなくても許される……つくづくファンタジーはファンタジーなんだなあと感じます。
ここまで読んでくれた人、ありがとうございました。
和佳子とジョン ないに。 @naini
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