ふた口め

草群 鶏

第1話

 ぽっ、とかすかな音をたてて蕾がひらく。

 その色を唇でついばみ舌で転がしている俺に、彼は拗ねたように問うた。

「それで腹の足しになるものか」

「たべてみる?」

 結構だ、と言いかけたその口に舌を滑らせ、そのまま押し込む。

 彼は目を白黒させながら飲み込んだ。

「…少し、にがいな」

「そう?」

「だが、不思議とあまい」

 彼はここを死に場所と定め、生気を喰らう俺をそばに置いた。

 奇妙な同居生活は穏やかな死に向かっていくはずだった。

 それがいつしか、俺は花の色を喰らうことを覚え、草茫々だった庭も今では花を絶やすことがない。

「これはくせになるな」

「そうだろ」

 ほら、と差し出した二口目に、彼はそっと顔を寄せた。

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ふた口め 草群 鶏 @emily0420

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