『死にゆく者への祈り( ジャック・ヒギンズ、ハヤカワ文庫、敬称略)』という小説がある。
その小説の冒頭で、主人公はあるギャングの依頼で実行した殺しの現場をカトリックの司祭に見られてしまった。
秘密を封じるために、主人公はあえてその司祭の教会に行き、懺悔という形で司祭に自分の殺人を告白する。告白の秘密は絶対だから、司祭は殺人現場を目の当たりにしながらそれを誰にも打ち明けることもできない状態に陥ってしまった。ちなみにその司祭は自分の上司にあたる司教に抱えている秘密を告白するということでどうにか精神のバランスを保つことができた。
さて、本作ではただ秘密を喋ることができないというだけでなく、一時的に相談者の気持ちが楽になるのは認めるにしても根本的な解決には至っていないという無力感が 一番重大な 要因として挙げられている。
本作の主人公もまた赦免を求めて懺悔するべき時が来ているのかもしれない。