第二話 キミノヒトミ
***
「それで、この棟が食堂とかの共同施設」
「分かった」
『アヤ・ピースキル。よろしく』
彼は必要最低限の挨拶だけをした。そのあと隊長は俺を指名し、今に至る。
つまり、この基地の案内係として起用されたわけだが。
「隊長に大体案内された。もう分かる」
といった具合で把握してしまっていたのだ。
「ならもう案内しなくていいんじゃ・・・」
「いや、もう少しじっくり見たい。お願いする」
「あそう・・・」
彼は不思議な雰囲気を漂わせていた。この世界の者ではないような、怪しいほどの瞳。
「次はどこだ、ケール」
「あ、ああ」
***
「隊長に言われた?寮の部屋とか」
「ああ。言われた。23-B」
「そうか・・・って、それ俺の隣だろ?」
「そうなのか?なら安心だな。仲間が隣で」
「なか、ま」
「何だケール、何かおかしいか?」
「いいや。何でもない」
「ケール」
「・・・・アヤ?」
真っすぐ見据えた瞳に、ケールが映っているように思えた。メロに負けないくらいの大きな目で、奥に光る何かが、ケールを包み込むように。
「何でもない。案内してくれてありがとう」
「ああ・・・」
そのまま、部屋の鍵を開けて入っていった。さて、一体どうしたことか。ひとまず空いた小腹を満たそうと、食堂へと踵を返した。
***
「おっ、ケール。新人どうだった?」
食堂に行ったら、たった2人。メロとマロウがこの基地の名物、「コロッケスティック」をぱりぱりと食していた。
「なんか怖そうでしたね」
メロの第一印象。やはり意外だった。大人しい感じだったのだが。
「そう?俺は興味深いね。なんだか不思議だった」
「ああ。それは僕も思ったよ」
「なんていうか、宇宙人、だね」
「うっ、宇宙人!?」
うっかりコロッケスティックを落としそうになるメロ。その様子をからかうように、マロウが笑った。
「例えだよ、例え。でも隊長が見込んだだけあるかもね」
「スカウトか?あいつも?」
「うん。でもあの人、相当の変人だからね」
まあ、その変人にスカウトされたうちの一人が言うのだから説得力はある。にしても、メロといいマロウといい、この隊も曲者が多い。
例外、それはコンラのことである。
最初入隊してきた時はそこまでではなかったが、段々と尖ってきた青年だ。思春期をいうやつか。でも隊長はそれが必要と、俺たちに話をした。いつの日か、俺もコンラもあの爺さんに丸め込まれていた。
コンラはメロ、マロウと同じ被災者で、家族を殺されて、天涯孤独になった。初めて言われた時は戸惑ったし、だからああもひねくれてしまったのかと納得していしまった。
そういう複雑な事情が絡んでいる連中は、この隊の他にもいる。そんな、残忍な世界なのだ。
『よく、生きてくれた』
隊長はよく、この言葉を言う。
〈ビィーーーーッ!!!!〉
「!?」
「何だ!?」
突如、和やかな食堂に似つかぬ警報がけたたましく鳴った。
「メロ、マロウ!!」
「すぐ行こう!!」
「はっ、はい!」
そうだ、アヤにも・・・!!
2人を先に行かせ、寮の棟へと向かおうとした瞬間、ぐらりと天井が揺れた。
「!!」
襲撃だ。敵機襲来。早く、自分の機に。
本能的に悟り、今までの経験をフルに思い出しながらアヤの無事を祈った。
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